2001年1月27日(土)「クリムゾン・リバー 深紅の衝撃」

LES RIVIERES POURPRES・2000・仏・1時間46分

日本語字幕翻訳:松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ)/dts・ドルビーデジタル


フランス、アルプスの麓にある田舎町のゲルノンで、大学司書の男性の変死体が発見された。両手首を切断された上で切り口を焼かれ、両眼をくりぬかれた上で、全裸で胎児の姿勢にされ縛られていたのだ。同じ頃、そこから200km離れたもう1つの田舎町サルザックで1982年に死んだ少女の墓が暴かれた。捜査に当たったピエール・ニエマン刑事(ジャン・レノ)とマックス・ケルケリアン(ヴァンサン・カッセル)はやがて2つの事件が関係していることに気付き、協力して事件の解決に当たるが……。

75点

1つ前へ一覧へ次へ
 恐ろしくも美しく、スケールの大きい国際派感覚のフランス映画。アクションも満載。最後まで一気にみせてくれる。

 原作はフランスで40万部以上のヒットとなったというジャン=クリストフ・グランジェの同名小説。原題は英語でいうと「パープル・リバー」つまり「紫の河」なのだが、なぜか邦題は「クリムゾン・リバー(深紅の河)」。どうしてわざわざ英語に置き換えるのだろう。といってもストーリーから今回はその意味が納得できるものけど。

 この映画を一言でいうとすれば、「バーチカル・リミット」+「羊たちの沈黙」というところか。山岳地帯を舞台に猟奇殺人事件が発生するのだから。不安を煽る音楽とも相まって、何か起きそうで怖い。ハリウッド映画とは違ったヨーロッパ的なちょっとウエットな因縁めいた恐怖。

 なんといってもジャン・レノがいい。そして脇だが日本車のCMで車を刀で切っていた「ドーベルマン」や「ジャンヌ・ダルク」のヴァンサン・カッセルがいい。小さなエピソードを重ねていく構成と物語のプロットもいいのだが、つまるところこの映画の魅力とは二人の魅力と、美しいアルプスの風景だろう。

 監督のマチュー・カソヴィッツは1967年生まれというから34歳という若手。監督よりは役者の方が有名で、日本公開されたものというとリュック・ベッソン監督の「フィフス・エレメント(The Fifth Element・1997・仏/米)」や「聖なる嘘つき(Jakob the Liar・1999・仏/ハンガリー/米)」などに出演しているらしい。うーん、でも顔が思い浮かばない……。

 劇中ハミ出し刑事のヴァンサン・カッセルが、日本のテレビ・ゲーム、セガの「バーチャファイター」の音声に載せてスキンヘッドのネオ・ナチと殴り合うところには笑った。ちゃんと最後は「ゲーム・オーバー」だもんなあ。まるでダンスのような格闘。うまい。

 ほんのちょっとしか出てこないが、事件の鍵を握る謎の修道女に1970年代にフランスとアメリカを中心に活躍した女優、ドミニン・サンダが扮している。ほとんど逆光で顔が見えず、ラストにわずかに光が当たっても特殊メイクで恐ろしい表情だし、よく出たなあと感心。

 先輩役のジャン・レノがちょっと古いイタリアのベレッタM92ピストルを使い、新米のヴァンサン・カッセルが新しいオーストリアのグロック・ショーティ(G26?)を使う。キャラクターを反映しているようで興味深い。しかもヴァンサン・カッセルは普段ツール・ナイフを携帯していて、部屋に侵入するのにそれを使う。この辺もいまの若者ということになるのだろう。

 次の言葉がなぜか心に残る。



【ただいま執筆中。少々お待ちください】


 公開初日の初回は朝9時30分から。東京は昨日の深夜から降り出した雪が積もりとても寒かったので、建物の外で並ばされるのはごめんこうむりたいということで、30分前に着くように家を出た。着いたときにはさすがに開場していて、場内には20人くらいの人が。きっとあの雪の中、並んでいた人達だろう。根性あるなあ。

 男女比は4:6で女性の方が多く、35歳くらいで分けた老若比はほぼ半々。入場プレゼントがあって、10分くらいの長さのDMに使われる廉価版ビデオをもらった。内容はジャン・レノとヴァンサン・カッセルの来日インタビューの模様と、劇場版予告編。ちょっと得した気分。

 15分ほど前から若い観客が増えだして、どんどん座席が埋まっていった。初日初回は18席×4列ある指定席も自由だからお得。最終的に9割以上が埋まってしまった。7割は若い人達。ただ、小学生くらいの子供を連れたお母さんも来ていたが、こういう猟奇殺人の映画を、あんなに幼い内から見せるのはいかがなものか。ボクは賛成できないが……。

 


1つ前へ一覧へ次へ