2001年1月27日(土)「アヴァロン Avalon」

2000・バンダイビジュアル/メディアファクトリー/電通/日本ヘラルド映画・1時間46分

ビスタ・サイズ/dts・ドルビーデジタル


近未来。特殊装置を使ってヴァーチャル空間でリアルな戦闘ゲームを楽しむことが流行していた。その得点は現金と換えることができたため、いわゆるプロが存在した。アッシュ(マウゴジャータ・フォレムニャック)はかつてはグループに属していたが、現在はソロでゲームに参加し、最高レベルのクラスAプレーヤーとして名を馳せていた。そんなある日、かつてのグループのリーダーだったマーフィー(イエジ・グデイゴ)が、隠しステージであるさらに上のSAクラスにアクセスすることに成功したものの、廃人同様になり現実世界にもどってこれなくなったというウワサを耳にする。

72点

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 なんという映像美。セピア調で描かれる寓話的殺戮のゲーム・フィールドよりむしろ主人公の暮らす現実世界の方が、まるで高名な画家が描いた絵画のようだ。そして、おそらくこれこそがまぎれもない押井ワールド。

 現代を象徴するようなゲームをテーマとしながら、これはひょっとして大いなる実験映画なのかも。というのも、映画がもともと作り物でありながら、どれが作り物(ヴァーチャル)で、どれが本物(リアル)かという問題を描こうとしているからだ。劇中こんなセリフがある「世界とは思いこみだ。だったら今のこの世界をリアルと信じてどこが悪い」。ゲームの中に入り込んでいる元リーダーのマーフィーのセリフ。

 そして全編オール・ポーランド・ロケ。セリフもポーランド語。2年前、ポーランドへ出発する前の押井監督は、第5回G&Aビデオ・コンテスト本選会終了後の打ち上げの時「すべてポーランドで撮影し、ポーランドのスタッフを使って、はたして自分の映画が撮れるのか」とおっしゃっていた。

 そしておそらくは実写映像を使ってアニメ(非現実)のような映像を作るという実験というか挑戦。少なくとも3つの点でこの作品は押井監督にとってチャレンジだったのだろう。

 そのいずれもが成功しているのではないだろうか。ただ、ストーリー的には難解で、見終わった後、そうだったのかというスッキリした解決は得られない。つまり、答えは、現実とは何なのかと。こう問いかけることがこの映画の目的だったのかもしれない。

 プレーヤーが現実世界にもどってきても、昼か夜かもわからずセピア調は変わらない。どうも合成食料が一般的らしく、本物の野菜や肉やパンなどは高いお金を払わないと買えないらしい。そして本物の食べ物だけが鮮やかなカラーで描かれる。ということは、主人公の暮らす世界も虚構なのか……。

 冒頭登場する戦車はたぶんT-72とZSU-57-2(?)。しかも対空自走砲は射撃までして見せて、バラバラとでかい空薬莢をまき散らす。すげえ〜。こりゃびっくりだ。ここを撮るところがまた押井監督なわけで。ヘリはMi-24ハインドの実物とおそらく3D-CGで描かれたダブル・ローター・タイプ。たしかコンセプト・モデルだったと思うのだが、これをCGで作って飛ばすとは。


【ただいま執筆中。少々お待ちください】



 公開2週目の初回、15分前に着いたら当然開場していて、20人ほどの人。あれっ、意外に少ないなあ。あれだけ話題になっているというのに。初日を避けて正解だったみたい。最終的には360席の銀座の劇場は3.5割ほどの埋まり具合。

 老若比は2:8で圧倒的に若者が多い。しかも男女比が8:2で男ばっかという感じ。たぶん押井アニメ・ファンだろう。

 それにしても、新しい劇場や内装をリニューアルした劇場は、場内の非常口ランプが上映中消えるのでとてもいい。まったく気にならない。この劇場は指定席もないし、座席も良くなったので、ほとんどストレスがない。やっぱりこれからは見る劇場をちゃんと選ばなくては。1,800円は決して安い額ではないのだから。

 ♪アヴァローン〜というあの曲が耳について、家に帰ってからも頭の中でなっていた。


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