2001年1月28日(日)「BROTHER」

2000・オフィス北野/レコーデッド・ピクチャー・カンパニー(英)・1時間54分

ビスタ・サイズ/dts・ドルビーデジタル


ヤクザの幹部、山本は組同士の抗争から日本を離れ、弟のいるL.A.に行くことにする。そして行きがかりから、地元マフィアの一員の麻薬のディーラーを殺害してしまう。やがて上部組織から殺し屋が送り込まれてくるが……。

70点

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 うーん、暴力満載。まさにこれはヤクザ映画。1回目を見終わって出てくる人たちの目が、ほとんどみんな三角になっていた。うーむ……。この影響が怖い。

 ボクは見終わって、何か胸に詰まっているような不快さがしばらく残っていた。聞いたところでは、暴力の不快さを観客に感じさせたかった、という北野監督のコメントがあったとか。

 しかし、そう感じなかった人達もいるようで、こんな場当たり的で酷い人生を、近くの席にいた若い男性の観客はわざわざ口に出して「カッコイイ」と言った。北野監督はそういうふうに描きたかったのではないと思うが、そう感じられてもしようがない部分は確かにあった。若者にそう感じさせてしまうのがボクには怖かった。これって少年犯罪のパターン? 刹那的でもいいから、好きなように生きたい。それで代償を支払わなければならないなら、喜んで自分の命も差し出してやる、そういう妙なねじれた諦観。だから事件を起こした後でも反省の言葉もない……。

 もし、主人公の山本というヤクザが望まないのにこういう状況にハマっていったと描きたいんだったとしたら、主役の演技と演出に問題があったかもしれない。今の無軌道な若者にそう感じさせないとするには、山本が普段はまともなのに、いったん切れると手がつけられなくなる。しかも簡単に切れて、いつも後でそれを後悔する男という設定の方がボクは良かった気がする。

 組の解散を機に足を洗おうとアメリカへ渡ったのに、ここでもキレてしまってマフィアとの抗争に巻き込まれてしまう。弟と密かに暮らすつもりが、その弟までも殺す羽目になってしまう。ハッと我に返ったときの後悔、懺悔そういうものが描かれていたら、ラストはもっと悲しかったに違いない。涙が出たかもしれない。しかし、北野監督は半分は淡々と、あと半分は怒声とで、それを描いていく。あまりに現実感がなく、ヤクザという特殊な世界の話と客観的に見てしまう。

 もし、キレたことを後悔し悩んでいるヤクザであったなら別世界の話ではなく、これは多くの人にとって共感できる問題になり、決して「カッコイイ」なんて言葉はでなかったのではないだろうか。ラスト、自ら死地へ赴くのも、修理代だとか言って大金をマスターに渡すのも、当然の報い。このラストだとカッコ良すぎる。避けたくても避けられない死というのと、やりたいことをやったそのオトシマエというのとでは、後に残る感情がまったく違う……。おっと、国際的な監督に何てことを言っているんでしょ。


【ただいま執筆中。少々お待ちください】



 公開初日の2回目、20分前に着いたらすでに人がロビーからあふれて、劇場の外に行列ができていた。おお、スゴイ人気。みんな内容をわかっているんだろうか。ヴァイオレンスなのに。世界の北野監督のこれがカリスマか。前の回が終わって入場したら、もう前の方にしか席が空いていない。5分前で305席の座席の95%が埋まってしまった。うーむ、おそるべし。この劇場がこんなにいっぱいなのは初めて見た。

 2回目だからなのか若者が多い。老若比はなんと8:2。ほとんど高校・大学生という感じ。初回は女性が少なかったようだが、2回目の男女比は6:4というところ。みんなにカッコいいと思ったかどうか聞いて回りたかった。うーん、後味悪し。


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