2001年2月11日(日)「回路」

回路・2000・大映、日本テレビ放送網、博報堂、IMAGICA・1時間58分

ビスタ・サイズ/ドルビーステレオ


ミチ(麻生久美子)が勤めるお店で、若い男性社員が無断欠勤を続けていた。気になったミチは彼の自宅を訪ね、自殺している男性を発見する。そして依頼していた名簿のデータをフロッピーで社に持ち帰ると、奇妙な写真画像が入っていた。

61点

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 うーん、うーん……プロが映画でやってはいけないこと。それは「夢落ち」「大風呂敷を広げるだけ広げて、畳まない」そして「マスターベーション」だと思う。お金を払って、時間を割いて、わざわざ劇場まで足を運んでくれる「お客さん」がいることを決して忘れてはいけないはずだ。

 この映画の場合、それは2番目のケース。「大風呂敷を広げるだけ広げて、畳まない」だ。世界の夢工場たるハリウッドの映画であってもたまにこういうものがあるのだから、しようがないといえばしようがないりだけれど……。久々に金返せ、かな。

 いまやTVでも広告が流れるくらい普及してきたきわめて現代的なインターネットを使いながら、都会における孤独と古典的な幽霊の恐怖を描こうとした……のか。開かずの間とかは極めて古典的モチーフだが、デジタル技術を駆使して恐怖映像をリアルに描いてみせる。

 手すりを乗り越えて投身自殺する女性を1カットでとらえた映像は、本当に驚異的だし、ショッキングで恐ろしい。自殺した壁に黒いすすのようなシミがあって、それが気付かぬ内に生前の人物にすりかわっている……かあ〜、怖い。

 しかし、それがどうしたっていうのだ。1つも理由が説明されず、ただ破滅に向かうだけなら、何の意味もない。その場限り。きっと恐怖というのは突き詰めると、人の恨みとか怒り、悲しみ、無念……なんていうものがあるから怖いのではないだろうか。幽霊という不思議現象は、結局それだけだと不思議なだけであまり怖くない。それがもともとは人だと思うから怖いのだし、恨みとかの感情が怖いのではないだろうか。

 通り魔的犯罪というのも、理由がないから怖いというより、正確には人間が理由もなくそういうことをやるから怖いのではないだろうか。

 それが、この映画のように人間が不在で、一切の理由も説明されないとそれまで怖かったものが何だったんだと、肩すかしを食らわせられた気分になる。まったく「夢落ち」といっしょ。これだったら何でもありでしょ。だったらもっとやりたい放題、支離滅裂めちゃくちゃやっても結果は一緒なんだから、やればよかったのに。理由がありそうなそぶりなんてしないで欲しい。それだけ。あとは言うことがない。

 公開2日目の初回、30分前でロビーには7人。10代のカップルに20代のカップル、そして若い人達。邦画はだいたいこういう傾向だ。「失楽園(1997年・角川書店/東映/エースピクチャーズほか)」だけが例外的にオバサンが多かったけど……。

 20分前に開場したときには15人ほどになっていた。男女比は6:4で男性が多く、そのうちオジサンはたった2人。うーん、恥ずかしい。最終的には45〜50人ほどになったが、この不入りは何故? 悪い前評判が流れたの?

 当初、新宿で見るなら最悪の鑑賞環境の新宿オスカーではなく、250席ある新宿ビレッジ2で見ようと思っていたら、たった62席の新宿文化シネマ3に変更になっていた。よほど不入りだったらしい。しようがなく新宿オスカーへ。入場者が少なかったので、どうにかちゃんとスクリーンが見られた。

 500円のプログラムを買うと、名刺型CD-ROMが付いてきたようだ。ボクは買っていないので確認できていないのだが。

 それにしても、予告編にはもっと気を遣って欲しい。「バーティカル・リミット(Vertical Limit・2000・米)」のようにいいシーンのほとんどを先に見せてしまったり、本作のようにあまりに露出しすぎるともう見たような気になってしまうので、実際に劇場で見たときの驚きがなくなってしまう。「ホワット・ライズ・ビニース(What Lies Beneath・2000・米)」はその両方だったわけで……。


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