2001年2月12日(月)「ホテル・スプレンディッド」

HOTEL SPLENDIDE・2000・英・1時間38分

日本語字幕翻訳:菊地浩司/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル


イギリス本土から離れた孤島にある治療宿泊をメインにした一族経営のホテル「華麗」。そこには精神的、肉体的トラブルを抱えた10人ほどの人が長期逗留し、毎日規則正しい変化のない生活を送っていた。そんなある日、本土から以前副シェフだったという女性キャス(トニ・コレット)がやってきたことから、変化のなかったホテルの変化が起き始める。

68点

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 バッド・テイスト。後味が悪い。誇張した人物や設定は、本気なのか冗談なのか。料理が物語の展開に大きな鍵を握るというのに、おいしそうに見えない、キタナイ……。

 カリカチュア――誇張――されているのは、この状況(舞台)設定と漫画的なキャラクター設定で、最初はこの物語が冗談なのか真剣なのか、イギリス人独特のウエットなシニカル・ギャグなのか、わからない。それが次第にシリアスになっていき、母の代から続く欺瞞に溢れた利益優先の「陰謀」が明らかにされていく。ある種オカルトで、ホラーでもある。一応ラブ・ストーリーの要素もある。

 独特の汚れた美術とライティング、その雰囲気はアメリカ人監督テリー・ギリアムのイギリス映画「未来世紀ブラジル(Brazil・1985・英)」に通じるものがある。暖色系というのかセピア系というのか、悪く言えば泥と錆の色。さらに言うとウ○コの色……。だって、実際、出てくるんだから……。つまりスプレンディッド(華麗)は反語と言うことか。

 「シックス・センス(The Sixth Sense・1999・米)」できれいなお母さん役を演じていたトニ・コレットが、敏腕副シェフとして登場する。赤毛のショート・カットにすると、まったく感じが違うんだなあ。役柄もちょっと男っぽいし。あのちょっと悲しげなお母さんにホレていたのに、全く印象が違うんだから……。やすが役者。ホントの彼女はどっちに近いんでしょ。両胸を晒して体当たり演技です。

 規則最優先の典型的イギリス人の長男を演じるのは、「ブラス!(Brassed Off・1996・英)」のステファン・トプキンソン。鬼気迫る悪役でなかなかいい。印象に残る。

 お父さんを演じたのは「未来世紀ブラジル」や「レ・ミゼラブル(Les Miserables・1998・独/英/米)」のおじいさん俳優ピーター・ヴォーハン78歳。この人もまたいい味出してます。

 とにかく個性的な人間ばかりを集めたこの映画、結局まともなヤツは一人もいないというところが恐ろしいのだ。ある意味フリークス・ショー。そういうホテルもあるか、と。

 公開2日目、初回、40分前に着いたら銀座の劇場前には長蛇の列! えっ失敗か……と思ったらそれは「リトル・ダンサー(Billy Elliot・2000・英)」の列で、本作の劇場はそのビルの3階。13人ほどの列だった。男女比は半々。年齢的には20代後半から中年がほとんど。オバサンのグループが目立った(どこでも目立つけど)。若い人は4〜5人というところ。

 最終的に広めの182席(カップホルダーつきで、ハイバック)の5.5割ほどが埋まった。スクリーンが高めなので、いいイスとも相まってこの劇場は非常にスクリーンが見やすい。

 前売り券にはホテルのキー型キー・ホルダーが付いていて、1コ1コ違うナンバーが打たれていた。これを公開初日に抽選して、イギリス・オリジナル・ポスターや、監督のサインなどが当たるという仕掛け。ついつい前売り券を買っちゃいました。


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