2001年3月3日(土)「ユリョン」

PHANTOM THE SUBMARINE・1999・韓・1時間43分

日本語字幕翻訳:根本理恵/ビスタ・サイズ(1:1.66)/ドルビーデジタル


1999年6月8日、韓国軍と米軍の共同軍事演習で、チャン・ポゴ潜水艦の艦長が錯乱、ミサイルを発射しようとしたため、副長のイ・チャンスク(チョン・ウソン)はやむおえず艦長を射殺する。しかし、それによって軍法会議に掛けられ、上官殺害の罪で銃殺が宣告された。銃殺は実行され、確かに銃弾は彼を直撃したが、目を覚ましたとき彼はベッドの上だった。
彼がいたのは、全員が存在を消され、お互いを番号で呼び合う“幽霊部隊”。やがて彼らは密かに建造した原子力潜水艦“幽霊〈ユリョン〉”で出港する。行き先は日本。はたして艦長の考えとは……。

70点

1つ前へ一覧へ次へ
 やはり韓国では現在も日本は「敵」なのだ。1969年生まれの31歳の若い監督が作った、現代の話であっても、やはり日本は「敵」なのだ。どんな小さなケンカでも、ちゃんと謝罪しないと心を開いて友人にはなれないという当たり前のこと。これがなかったということだろう。あえてわかりにくく言えば、過去を清算していないということ。

 ただ、過去の韓国作品とちょっとだけ違うのは、それを止めようとする人間がいて、それが孤立無援でも、主人公だということ。しかも韓国の国民的アイドルがそれを演じ、「いかなる大義名分があろうとも、(日本と同じ)過ちを犯すな」と叫ぶこと。韓国と日本が友人づきあいできる日はまだまだ遠いようだ。

 ストーリー的に特に驚くべき所は感じられないが、仮想の潜水艦の外観はCGやミニチュアで描かれ、これが「U571」なみに説得力があるのには驚かされた。日本の技術をぬいて、アメリカに迫ろうかというレベルだろう。ただし、魚雷から出る気泡はスケールが合わず、あたかも小さなものから出た大きなあぶくのようでいただけないが、あとは色調といい、スケール、パースといい申し分ないと思う。日本のSFX技術とセンスはすでに抜かれつつあるかもしれない。インターネットだって日本を越してしまったし。

 ただし、銃は残念だった。最初は実銃ベースのステージ・ガンかとも思ったが、いつも撃つときはカメラのフーレムの外。まさか……と思ってみていたら、マガジン底部にマルイ穴が……これはガスの注入バルブ? ってことはオモチャのガス・ガン?! なるほどね。納得。

 韓国では最近になって実銃ベースのステージ・ガンが認められたという。「シュリ(Shuri・1999・韓)」では、一部ハリウッドから持ってきた実銃ベースのステージ・ガンが使われた。その他は本作同様、日本製のトイ・ガンだったらしいが。

 それでも、どちらの映画も実銃ベースのステージ・ガンだと思ってみていたのだから、その扱い方、撮り方で、プラスチックのオモチャも本物に見えるということだ。日本の映画とはこの辺が決定的に違う。邦画の場合、実銃ベースのステージ・ガンを使って海外で撮影していてもオモチャに見えることがあるのだからトホホである。

 公開初日の初回、40分前に着いたのに誰も並んでいない。アレ? インターネットでは「シュリ」に感激した人達が、絶対見に行くとか盛り上がっていたのに。しかも女性たちが。やっぱりインターネットって、バァーチャルなんだなあ、生情報までも。

 30分前になってようやく10人くらいが並んだ。ほとんどはオヤジ。20代と思しき若い人は1人だけ。女性は1人もいない。20分前に開場、最終的には250席に30人くらい。おかげで、前の席の人の頭が邪魔になるこの劇場でも快適に見ることができたが、まったくなんてことでしょ。女性はたった2人で、オヤジと一緒のオバサンだけ。

 2月10日から公開劇場が増え、小綺麗な劇場も加わるので、もう少し人が入るだろう。しかし、見た人の感想もこうして流れるので、はたしてどこまで伸びることやら。

 画面比率を1:1.66としたのは、通常の撮影場面ではわからないが、合成場面やミニチュア場面になると右端に黒い縦帯が出たため。


1つ前へ一覧へ次へ