2001年3月4日(日)「バガー・ヴァンスの伝説」

THE LEGEND OF BAGGER VANCE・2000・米・2時間6分

日本語字幕翻訳:戸田奈津子/ビスタ・サイズ/dts・ドルビーデジタル・SDDS


1928年アメリカ、ジョージア州サバンナ。町の伝説的英雄であったプロゴルファーのラナルフ・ジュナ(マット・デイモン)は、第一次世界大戦に出征して友人を失い、すっかり人が変わって返ってきた。酒に溺れ、かつての恋人とも会うことが無くなり、荒んだ生活を送っていた。そんなある日、大恐慌で財産を失いつつあった町一番の資産家の娘アデールは、父の遺産であるゴルフ場で、賞金$1万を掛けて3人のプロがエキシビジョン・マッチを行って起死回生を図ろうとトップ・クラスのゴルフ・プレーヤーを招待する。そしてもう一人、サバンナの町を代表してジュナに出場を依頼するが……。

78点

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 すごい、ゴルフってこんなにおもしろいスポーツなんだ。ボクはやったことがないのだが、こういう風に説明されればきっと好きになっていただろう。そして、キャリーさんがただクラブを運ぶのではなくて、コースのデータを頭に入れた人間データベースの役目や、選手が悩んでいるときにプレーのアドバイスをしたりする、いわばプレーヤーのパートナーなのだということを初めて知った。

 どうもボクのイメージでは、オバサンがアルバイトでやっている単なるゴルフ・クラブ運び、ときどきコースが何ヤードあるか教える程度の簡単なものだと思っていた。日本とアメリカでは、そしてプロとアマチュアでは違うのかもしれないが、映画の中でバガー・ヴァンスのこんなセリフがある「普通(キャディは)1万ドルの賞金で10%もらう。しかし私は5ドルでいい」。そんなに重要な職業なんだ。

 映画の中でキャディとなったウィル・スミス演じるバガー・ヴァンスは、コースを下見し、距離を歩数で測り、地面の起伏、芝の方向などを克明に調べ上げてゆく。

 この映画には、驚かされるセリフがたくさん散りばめられている。ウンチクもあれば、人生訓もある。それらは実際の人生で役に立ちそうな示唆に満ちたもので、たびたびハッとすることがあった。少しお説教臭い感じがしないでもないが、堅苦しさや偉ぶったところはなく、しかも物語に溶け込んでいる。

 「1杯の酒で1,000個の脳細胞が死ぬ。最初に悲しみを感じる細胞が死ぬ。でも記憶の細胞はなかなか死なない」過去に縛られている主人公が、自分に憧れる少年にこう飲酒の言い訳とも、グチともつかないことを言う。

 「ゴルフは、他のスポーツとは違って、自分で自分にペナルティを課するゲームだ」「グリップをしっかりしろ。人生も一緒だ」「勝負をするんじゃない。ただプレイするんだ」……などなど、たくさんの人生のヒントが。

 穏やかな、ちょっとウソくさい存在のウィル・スミスがなかなかいいが、ジュナに憧れているハーディ少年(J・マイケル・モンクリーフ)がなかなか良かった。まるでアラン・ラッド主演の西部劇「シェーン(Shane・1953・米)」の子役、ジョイ少年を演じたブランド・デ・ワイルドのような雰囲気。レッドフォード監督はそれを狙ったのかもしれない。なんと本作がデビューらしい。

 ジュナが集中すると次第に回りの風景が消えていくのは、ケビン・コスナーの野球映画「ラブ・オブ・ザ・ゲーム(For Love of the Name・1999・米)」で使用済み(さらに元がある気もするが、デジタルを使っている点ではオリジナルかも)。レッドフォード監督ともあろう人がそっくり真似してしまうとは、ちょっと信じられないほどだった。まっ、映画界はパクり、パクられが普通らしいけど。

 老人のゴルファー役で、未だ現役の役者、ジャック・レモンが登場。30年ぶりに作られた続編コメディ「おかしな二人2(The Odd Couple II・1998・米)」でも元気な姿を見せていたが、すでに75歳。なんとかくしゃくとしていることか。そして、こんな歳になっても、一人で気ままにのんびりと楽しめるのがゴルフだと。本当ににほんでもこんな感じのスポーツなら、ボクもやってみたいが……。

 公開2日目の初回、用心して早めの55分前に行ったら、誰もいない。45分前になってようやく5人。あいにくの雨の空模様で、人出が悪かったのか。30分前に開場した時点で30人くらい。そのうち女性は5〜6人。ほとんどは20代後半以上。

 初回は全席自由で、素直に嬉しい。なんでも指定席料金が安くなったとさかんにアピールしていた。平日なら2,000円ポッキリだそうな。通常料金は2500円だという。ふーん。

 それにしても、定員入れ替え制なのに、上映が始まってから場内に入ってくるヤツが絶えないのはなぜだろう。ドアを開けると上映中の画面に灯りが入ったり、ひとつも良いことがない。

 最終的に648席の1/4強ほどが埋まっただけ。うわー、人気ねぇ。


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