2001年4月14日(土)「スターリングラード」

ENEMY AT THE GATE・2001・米/独/英/アイルランド・2時間12分

日本語字幕翻訳:戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル・dts

第二次世界大戦中頃のソ連領内。ドイツ軍はソ連領土に深く侵攻し、当時の指導者であったスターリンの名を冠した都市「スターリングラード(現ボルゴグラード)」を包囲していた。1942年9月20日、25歳の青年ヴァシリ・ザイツェフ(ジュード・ロウ)は補充兵としてスターリングラードに連れて行かれた。そしてやがて彼はスナイパー部隊へと配属され、類い希な射撃の才能によって国民的な英雄へと祭り上げられていった。これを快く思わないドイツ軍は、名狙撃手、ケーニッヒ少佐(エド・ハリス)をザイツェフを倒すために投入する。

76点

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 驚くべき映像。重厚な感さえある広大な廃墟たる戦場。ソ連の国民的な英雄のエピソードを描くために、ここまでの大舞台を用意するとは、まさにこれぞ映画。

 冒頭15分の、ボルガ河渡河とそれに続くスターリングラード市街戦は観客をあたかも戦場に放り込んだかのような、恐怖感とリアルさに溢れている。それは確かに、広告の謳い文句にあるように「プライベート・ライアン(Saving Private Ryan・1998・米)」のようだ。ハイ・スピード・シャッターは使っていないが、モノトーンで、人体弾着がハリウッド式のはじけるのとは違って、火薬を使わずに肉片が飛ぶ感じが似ている。だから怖い。ただ、渡河中のボート近くの弾着による水柱はどうもデジタル臭くて怖くなかったが。

 ここで、兵士たちは訳も分からず集められ、列車に押し込まれ、戦場に連れて行かれたというふうに描かれているが、たぶんこれが真実に近いのではないだろうか。しかも武器である小銃は2人に1挺で、これで完全装備で待ちかまえるドイツ軍に突撃させられる。こんなことが許されるんだろうか。そして、強烈な迎撃にあって後退すると、今度は自軍の司令官たちから敵前逃亡だとしてその場で「銃殺」される。進むも地獄、下がるも地獄。

 そして息詰まるスナイパー同士の対決。物陰に隠れ、周囲の物と同化し存在を消してしまう。そして敵の行動を読み、敵を待ち伏せる。そんなプロ同士が戦うと、最初に動いた方が負けになる。この静かな、そして息詰まる決闘。

 もう一つ面白いのは、この決闘が片やろくに字も読めない農民出身のスナイパーで平の一兵士、片や貴族出身の超エリート・スナイパーで少佐という、鮮やかな階級対決にもなっていること。これはこの映画のために作ったことではなくて、実際にそうだったのだというのだから驚く。

 ヴァシリ・ザイツェフが使ったのは、ソ連軍の標準的な小銃モシン・ナガンM1891ライフルをマイナー・チェンジしたM1891/30スナイパー。これにPU3.5倍スコープをとりつけたもの。

 一方ライバルとなるドイツ軍のエリート、クーニッヒ少佐はモーゼルKar98kのスナイパー。スコープは有名なツァイスのレンズを使ったグシュトフ・ヴェルケのZfシリーズではなく、4〜6倍という高倍率らしい大型のもの。一見ズーム・タイプのようだが、ズーム・レンズが発明されたのは1959年のことだというから、そんな単純なミスはしていないだろう。ちゃんとソ連軍の兵士にはPPsh41やナガン・リボルバー、トカレフ・オートマチックなどを使わせているのだから、このへんでいい加減なことはやっていないと思うのだが。エリートを象徴するために大型スコープを使いたかったのだろう。

 そういう時代考証という点では、一番驚いたのは3号戦車L型のオリジナルに見える戦車が2両も(CG?)出てきたり、ハノマーグ兵員輸送車とかホルヒらしい軍用車両も登場するのには驚いた。3号戦車って本物? それともかぶせもの?


【ただいま執筆中。少々お待ちください】



 公開初日の初回。60分前に着いたらすでに30人ほどの行列ができていた。ほとんどは30歳以上という感じで、オバサンが5〜6人。WW2ものはやはり年寄り向きなのか。

 混乱を避けてか、45分前に開場した。これは素直に嬉しい。この時点で100人ほどになっていただろう。初回は全席自由で、16席×4列の指定席にも座ることができた。

 時間と共に若い人と女性も増えだして、最終的に2〜3割が20代くらいの若い男性、4割ほどが20代の若い女性という結果に。654席の7.5割ほどが埋まった。

 それにしても、配給会社の人間らしい12人ほどの一団が出入り口付近に並んで立っていたが、非常に気になる。もっと言えば邪魔。どうしてこんなにぞろぞろやってきて、壁際に一列に並ぶんだろ。何かの調査だとしても、1人でいいじゃないか。まったく……。写真を撮るヤツがいなかっただけまだマシか。


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