2001年4月30日(月)「トラフィック」

TRAFFIC・2000・米・2時28分

日本語字幕翻訳:岡田壮平/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル・dts・SDDS

メキシコ、ティファナ近く、ハビエール・ロドリゲス刑事(ベニチオ・デル・トロ)は相棒のマノーロ・サンチェス刑事(ヤコブ・バーガス)と麻薬を追って組織の運び屋を逮捕しようとしていた。ところがそこへ連邦警察のサラサール将軍(トーマス・ミリアン)が現れて、犯人を連れて行ってしまう。そのころ、アメリカでも最高裁判事のロバート・ハドソン・ウェークフィールド(マイケル・ダグラス)が麻薬対策本部長に命じられ、活動を開始しようとしていた。しかし、彼は自分の娘キャロラインが麻薬におぼれているとは夢にも思わなかった。

70点

1つ前へ一覧へ次へ
 重い。ゾッとすると同時に、打ちのめされて落ち込んでしまう。おそらく、アメリカとメキシコにおける麻薬の現実はこの通りなのだろう。

 官憲は腐敗し、家族は崩壊し、当の麻薬組織自体が衝突しつぶしあい、新陳代謝する。麻薬に限ったことではないが、麻薬がそれをより象徴していると。

 それらはそう簡単に解決できることではない。だから、この映画にも解決はない。始まって、途中があって、終わるだけ。安直な答えも、慰めも、理由も、希望さえもがない。決して絶望ではないのだけれど。

 描かれるのは、いわば群像で、メキシコの警官と捜査現場、アメリカの捜査当局とその家族、アメリカの警官と捜査現場、麻薬販売組織のボスの家族。それらがアメリカというか世界の現状を浮き彫りにしていく。

 うーん、だからといって映画がおもしろいかは別の話。巨悪が暴かれるわけでも、麻薬の恐ろしさが描かれるわけでもない。まして、解決がなく、カタルシスもないのだから。

 ドキュメンタリー・タッチを強調したかったのだろうが、スティーブン・ソダーバーク監督お得意の手持ち撮影が多く、疲れる。しかも見る方に緊張を強いる内容だ。まして上映時間が2時間28分などという長尺、疲れない方がどうかしている。

 たしかにアカデミー賞を受賞したベニチオ・デル・トロはすばらしい演技かもしれない。しかし、出演者みんなが同じくらいいいと思うし、彼だけが特別の印象はなかった。役柄がいいということはあったかもしれないが。ひょっとしてそれだけじゃないの、などと勘ぐりたくもなる。

 公開3日目の初回、アカデミー賞作品だから混むだろうと用心して60分前にいったら、拍子抜けの0人。あれ? 45分前になってようやくオヤジが5人。こんなに早く来ることなかったなあ。

 30分前になって片側の入り口に20人くらいの行列。もう一方に10人くらいいるだろうか。女性はオバサンも含めて2〜3人。ほとんどオヤジばかりだ。こういうネタだからしようがないのだろうが。

 9席×7列プラス最前列7席×1列の70席が指定だが、初回のみ全席自由。最終的には改装して870席となった座席の3.5割ほどしか埋まらなかった。

 それにしても、改装してイスは新しくなったが、良くなったとはいえない。まずカップ・ホルダー付きのイスは、同じ松竹系列の東劇のものと同一らしいが、どうも硬い。2時間半で尻が痛くなった。そして、床の傾斜を変えずにイスだけ入れ替えたものだから、いままで全席の人の頭など気にならなかったのに、じゃまになるようになってしまった。このイスは、東劇のように床がフラットでスクリーンが高めの劇場向きなのだ。それを強めの傾斜があってスクリーンを見下ろす形式の劇場に使ったものだから……。やれやれ、これからは場所を考えて座らなければならない。

 付け足すと、劇場の壁も、トイレの壁もとてもチープになった。トイレは全体がとてもチープだ。仮設トイレのよう。うーん、改装してここは悪くなったと言わなければならないようだ。


1つ前へ一覧へ次へ