2001年7月7日(土)「レクイエム・フォー・ドリーム」

REQUIEM 4 A DERAM・2000・米・1時42分

日本語字幕翻訳:寺尾次郎/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル

〈アメリカR指定、日本R-15指定〉

麻薬中毒の息子ハリー(ジャレッド・レト)に手を焼く母親のサリー(エレン・バーステイン)は、テレビのクイズ番組への出演が決まったことから、亡き夫のお気に入りだった赤いドレスを着て出場するため、ダイエットを開始する。ハリーは相棒のタイロン(マーロン・ウェイアンズ)と恋人のマリオン(ジェニファー・コネリー)とともに、ヤクを売りさばいて夢を実現しようとしていた。そのころ、ダイエットがうまくいかないサリーは、友人の薦めで絶対に成功するという医者のところに行って、怪しげな薬を処方してもらう。

78点

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 怖い。気持ち悪い。メッセージは間違いなく心の奥まで届いたが、映画を見て良かったかというと、答えに迷う。オールスターみないな配役だけど、七夕の日には適していなかったかも。落ち込んでいるときに見るのは絶対におすすめできない。

 英語タイトルにあるように、4人の夢に対する鎮魂歌〈レクイエム〉がこの映画。つまり、手段を誤った夢は葬られることになると。ハッキリ言って、大悲劇。見ているのが辛い。正視に耐えないシーンも随所にある。麻薬は簡単に人を滅ぼしてしまうのだということを、リアルに赤裸々に映像で見せつける。日本よりもっと深刻なアメリカでは、ショックも大きかっただろう。効果は絶大だったはずだ。

 ちょっと冗談で覚醒剤を試してみようかな、などと思っている人には、まちがいなく抑止効果があったと思う。夏に始まって冬に終わるジャンキーの末路は、想像もできないほど悲惨だ。

 美形女優のジェニファー・コネリーが、アンダー・ヘアを晒してまで(胸は晒してないが、だいたい西洋の人は胸は隠しても下は隠さない傾向があるそうで)、まさに体当たり演技。ジャンキーの末路を実にリアルに演じている。ただの美形でないことを、こうまでして証明したかったのかと、ちょっと引くほどの入れ込み演技。お見逸れしました。すごい。

 すごいのは彼女ばかりでなく、母を演じたエレン・バーステインがまたまたすごいわけで……。もはや幽霊のような段階まで演じている。ここまで自分をさらけ出すというのは、半端なことではないと思う。単に全裸になることより恥ずかしいことなのではないかと思う。しかも女優なのだし。

 エレン・バーステインというと、日本ではほとんど「エクソシスト(The Exorcist・1973・米)」のお母さん役で有名だと思うけれど、当時すでに40歳で、1932年生まれの彼女は今ほぼ70歳。それをノーメークでストレートに、というかメイクで髪をまばらにして逆立て、目を落ちくぼませ、頬をこけさせ……。きれいな人なのに、まるで別人に見えるほど。

 息子を演じるジャレッド・レトは、「ルール(Urban Legend・1998・米)」で注目された二枚目。ちょっと優男タイプだったのが、本作ではそれを逆手にとって麻薬から逃れられない優柔不断さがよく出ている。彼もここまでの汚れ役をやらなくても、他にいくらでも仕事はあったろうに。

 マーロン・ウェイアンズは、「最終絶叫計画(Scary Movie・2000・米)」の監督の弟で、同作の脚本も書き、オバカな役で出演している脳天気な雰囲気の役者。それがこんなにシリアスな演技をしているというギャップに驚かされた。さすがは役者。

 監督は「π(π・1997・米)」を作ったダーレン・アロノフスキー。$6万(約720万円)で作ったという超低予算の「π」が注目されたことから、本作を撮らせてもらえることになったらしい。

 公開初日の初回、内容からして一般受けしないだろうと40分前くらいに着くように行ったら、すでに20人以上の行列が。ほとんどは20代の男性で、女性は若い人のみで3人ほど。あとオヤジが少々。意外だった。こういう内容こそオヤジが多いかと思ったのに。

 25〜30分ほど前に開場。最終的に指定席なしの221席の7割ほどが埋まった。初日プレゼントがあり、飲む健康プロテインをもらった。

 冒頭、ヘリが後方から飛んでくるドルビー・デジタルのデモあり。


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