2001年7月15日(日)「ダンジョン&ドラゴン」

Dungeons & Dragons・2000・米・1時48分

日本語字幕翻訳:林 完治/シネスコ・サイズ(レンズ)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
〈アメリカPG-13指定〉

昔々、あるところにイズメールという国があった。ここは魔法を使う貴族階級のメイジと、平民とに分けられ、若い女王サヴィーナ(ゾーラ・バーチ)が統治していた。しかしこの国の覇権を狙う宰相プロフィオン(ジェレミー・アイアンズ)は、最強のレッド・ドラゴンを支配するため、伝説の杖、サブリールを手に入れようとするが……。

70点

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 アメリカで非常に評価が低かったというので、覚悟して見に行ったが、そんなに悪くはなかったと思う。ただ、アメリカで1974年頃大ヒットしたテーブル・トーク・ゲームの「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ(長いのでD&Dと略される)」の映画化ということであり、思い入れのある人たちががっかりしたのだろう。10年以上映画化に執念を燃やしたというD&Dマニアのコートニー・ソロモン監督(制作会社オーナーで、これが監督デビュー作)が手がけたというのに。

 「D&D」はその後テレビ・ゲーム化され、進化した「AD&D」となって、「ウィザードリー」や「ウルティマ」、「ドラゴン・クエスト」「ファイナル・ファンタジー」といった傑作RPGに影響を与えていくのだ。その大本であると。

 それを考えなければ、そこそこおもしろい子供向きの映画には仕上がっていると思う。ちょっと暴力表現がきついところもあるものの、メイジ、ドワーフ、シーフ、エルフが出てきて、奇想天外な物語を展開するというのはゲームがそのまま映画になった感じ。見所は200匹のドラゴンが繰り広げる大空中戦だ。

 ただ、ゲームと違ってレベル・アップしていくのは主人公だけで、他は最初に登場したまま。これはつまらない。先頭のたびに武器が良くなるとか、資金を手にするとか、何かアップして欲しかった。

 それと、迷路。タイトルに迷宮(ダンジョン)と入っているんだから、単なる仕掛けのある通路ではなくて、入り組んだ通路が同じような分岐路を形成して、究極の迷宮を見せて欲しかった。めまいを感じるほどの、デジャブかと思うような、映画らしい迷宮を。でないと「ギャラクシー・クエスト」でパロられた意味のない仕掛け付き通路というのと変わらない。しかも上からみんなが見ているわけで、見てたら誰でもコースを覚えられるだろ、という突っ込みの1つや2つは軽く入るというオソマツさ。観客をなめてないか。たとえ子供向けの映画だとしても。

 脚本のトッパー・リリエンとキャロル・カートライトのコンビは「パール・ハーバー(Pearl Habor・2001・米)」も手がけたとあったが、「パール……」は最終的なクレジットではTVで数本ドラマを手がけたというキャリアのランドール・ウォレス1人になっていて、2人の名前はない。おそらく制作の初期段階でちょっと手がけただけなのだろう。

 女王役の「アメリカン・ビューティ(American Beauty・1999・米)」で娘を演じたのソーラ・バーチばかり前面に出されているが、好印象を残すのはむしろ見習いメイジを演じたゾー・マクラーレン。そして確かにジェレミー・アイアンズもいい演技をしているが、それより目立っていたスキン・ヘッドのブルース・ペインが良かった。ウェズリー・スナイプスの「パッセンジャー57(Passenger 57・1992・米)」などで悪役を演じ続けている人。

 公開2日目の初回、45分前に着いたら新宿の劇場にはおじいさんが1人だけ。あれれ。30分前になったらジジ、ババ、オヤジ、若い男性の4人。おやおや。25分前に開場したときは、どうにか20人くらいになっていたけど。

 新宿は古い劇場なので、デジタルには対応しておらず、音響設備もそれなり。全体にこもった感じで、サラウンドも不明瞭。いかにも鳴っているという音で、突然ボリュームが変わったり、音を聴くとか音響を楽しむというのにはまったく向かない。ただセリフだけ はなぜか聞き取りやすかった。

 最終的に、指定席のない360席のほぼ4.5割が埋まった。アメリカでの評判が良くなかったので、もっと閑散としているかと思ったら、意外に人気があるらしい。年齢層的には6:4でやや若い人たちが多く、女性はたったの5人。老若比は半々だった。子供が1人もいないところが、いろんなことを象徴しているのではないだろうか。


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