2001年7月21日(土)「千と千尋の神隠し」

2001・徳間書店/スタジオジブリ/日本テレビ/電通/ディズニー/東北新社/三菱商事・2時5分

ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル・dts EX

一家三人、自家用車で引っ越しの途中、道を間違えて山の小道を進むと、奇妙な門構えの建物があった。10歳の娘、千尋(ちひろ)は反対するが、父と母はこの向こうへ行ってみようとさっさと入ってしまう。仕方なく後を付いていくと、長いトンネルを抜けたその先には、テーマパークの廃墟のような町が広がっていた。

76点

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 奇想天外な物語。予告編を見て何となく想像していたものとはかなり違っていた。考えも付かなかった展開。妖怪のような、それでいて怖くはない八百万(やおよろず)の神々の世界にあるお湯屋(油屋)を舞台に、人間の娘が迷い込んだことから巻き起こる事件の数々。そしてその世界を成立させる説得力ある素晴らしい絵の数々。

 確かに、宮崎監督自身が言うように、10歳の子供が主人公で、そんな子供達に向けた冒険物語、童話だと感じた。昔、幼い頃に夢中で読んだ冒険談。その感覚を思い出した。

 それにしても、脚本も手掛ける宮崎監督は60歳。もう長編は作れないとおっしゃっているそうだが、よくこんなにも不思議な話を考えつけるものだと思う。本当に奇想天外。まったく先が読めない。見終わった後に、あれは「ナウシカ」だとか、「ラピュタ」だとか、いろいろ分析はできると思うが、見ているときにはまったくどうなるのかわからなかった。すごいなあ。創造力のかたまりなんだろうなあ。才能のある人は違うと。

 宮崎監督がずっと描き続けている人間と自然というテーマも入っているし、少女が主人公というのも変わらない。もちろん飛翔シーンも用意されている。しかし、いつもとちょと違うのは、メッセージ性が今までのものほど強くなく、さらりと描かれていることと、意外に盛り上がりというか、スケールというか、大きくなっていかないこと。もちろん感動はするが、それは物語全体に流れている優しさとか、癒やしのようなもので、ここぞというものではないような。

 絵の美しさは特筆に値する。各所で使われる3D-CGもほとんど違和感がない。自由自在なカメラ・ワークは、それだけで快感だ。今回特に良いのは、水やガラスの表現。まるで写真のようで、とても絵とは思えない。湯婆婆(ゆばあば)の部屋の内装や壺も、美術館の収蔵品のように美しく、リアルだ。

 日本映画の場合、お金になるアニメだけがサウンド・トラックにも贅沢にお金を使うことができる。本作もデジタル・サウンドの中でも最新の「dts EX」を使い、ダイナミック・レンジが広く、忍び足のような小さな音から、爆発音のような大きな音まで、なんなく再現してみせる。しかもクリアだ。

 公開2日目の朝の初回、銀座の劇場はすぐ近くにある2館で30分ほどずらして上映している。「ぴあ」の表記で音響がSRD-EXの方を選んだが、1週間遅い号の表記では別な劇場の方はDLPによるデジタル上映と合った。うーん、なんかだまされた感じ。

 遅く始まる方の劇場を選んだおかげで、初日の初回でもそれほど混んでいなかった。上映45分前に早くも開場になり、その時点で10人ほど。最初は中高年が多かったが、次第に若い人たちも増えて、中学生以下3に対してハイティーンと20代が4、中高年が3というところ。男女比はやや女性の方が多く、3.5:6.5というところか。

 10席×6列の指定席も初回は全席自由。最終的に756席の3.5割ほどしか埋まらなかった。早朝の回にして良かった。


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