2001年7月28日(土)「猿の惑星」

PLANET OF THE APES・2001・米・1時54分

日本語字幕翻訳:戸田奈津子/シネスコ・サイズ(レンズ)/ドルビー・dts
〈アメリカPG-13指定〉

2029年、惑星探査のため航行中のアメリカ空軍の宇宙船“オベロン”では、遺伝子操作で知能を高めたチンパンジーに探査ポッドの操縦を教え込み、危険な調査に備えていた。そんなある日、異常空間が発見され、あまりにも危険なためチンパンジーのペリクリーズを送り込む。しかし途中で通信不能に陥り、位置もつかめなくなったことから、ペリクリーズの教育を担当していた宇宙飛行士のレオ(マーク・ウォルバーグ)は、周囲の制止を振り切って救出に向かう。

73点

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 カッコいい、超リアルな猿が怖い、独特の世界観がすばらしい。だいたいまとめるとこういうことになるだろうか。物語に感動するとか、意外な展開に驚かされるということはなかった。つまりはビジュアルがスゴイと。

 ティム・バートン監督というとディズニーの人なので、「ビートル・ジュース(Beetlejuice・1988・米)」「マーズ・アタック(Mars Attacks!・1996・米)」系のちょっとコミカルでファンタジーな印象が強い。しかし、「バットマン(Batman・1989・米)」や「スリーピー・ホロウ(Sleepy Hollow・1999・米)」といった大人向きの骨太な作品も作っている。一見方向が違うような気もするが、考えてみればいずれの作品にもちょっとダークな雰囲気が共通してある。それがこの人の個性なのだろう。でも、とにかく絵になっているし、カッコいい。

 脚本にはちょっと難があったのではないかと思う。あまりにオリジナルの「猿の惑星(Planet of the Apes・1968・米)」が偉大すぎて、インパクトがありすぎて、それに負けてしまったのか。

 オリジナルの脚本は、原作小説のピエール・ブールは別にして、クレジット上はマイケル・ウィルソンとロッド・サーリングの2人の作品となっている。マイケルはクレジットなしだが「戦場にかける橋(The Bridge on the River ・1957・英)」(この原作小説もピエール・ブール)や「アラビアのロレンス(Lawrence・1962・英)」も手がけた実力のあるベテラン。

 また、ロッド・サーリングといえば超有名な脚本家で、6年間もロングランしたというTVドラマ「ミスタリー・ゾーン(The Twiright Zone・1959〜)」の大半の脚本を手がけている。オリジナル版「猿の惑星」にしても、実際はピエール・ブールの原作を基にサーリングが書いた3つの脚本がお金がかかりすぎるということで、ベテランのマイケル・ウィルソンが書き直したらしい。しかも、あのショッキングだったラストは原作にはなく、サーリングがオリジナルで考えたものだったという。いかにもサーリングらしいエピソードだ。

 こんな偉大な才能あふれる2人の作品を超えるのは、かなり実力のある脚本家でも難しかったのだろう。

 とにかく良かったのは猿たち。残忍なチンパンジーのセード将軍を演じたティム「レザボア・ドッグス」ロスを筆頭に、将校のゴリラ、アターを演じたマイケル「グリーンマイル」クラーク・ダンカン、オランウータンの奴隷商人リンボーを演じたポール「交渉人」ジャマッティ、人間に同情的なメス・チンバンジー、アリの父サンダーを演じたデビッド「タイタニック」ワーナー、アリの執事のシルバー・バックを演じたケリー「ライジング・サン」ヒロユキ・タガワ、ちょっとしか出てこないが元老院議員の頬ダコが大きくなったオランウータンのグレン「デモリッションマン」シャディックス……みんな素晴らしい。猿らしい動きといい、リアルな猿らしい顔といい、豊かな表情といい、文句なし。

 ただし、女性の美しさを覆ってしまわないように配慮されたらしい、メス猿のメイクはいまいち。ヘレナ「ファイト・クラブ」ボナム=カーターは、演技が悪いわけではないのに、リアルさに劣るメイクであまり印象に残らない。これだけ1968年のオリジナル版「猿の惑星」のメイク・レベルと同じという感じ。

 印象的なセリフ「猿(Monkey)と呼ぶな類人猿(Ape)と呼べ」というのはオリジナル版「猿の惑星」にもあったように思う。オリジナル版への敬意の表われだろう。敬意の表われといえば、オリジナル版で主人公を演じたチャールトン・ヘストンが、セード将軍の父親役で出ているというのには驚いた。特殊メイクでチンパンジーになっているのでわからなかったが、プログラムにそう記載されていた。そうそう、特殊メイクを担当したリック・ベイカー自身も年老いた猿(チンパンジー?)を演じてちょっと出ていたらしいが、これもわからなかった。あのカツラを着けていたコミカルな役の猿のことだろうか。

 銀座の劇場は混雑を予想してか、日劇プラザから広い日本劇場に変更になっていた。おかげでスクリーンも見やすく、音響もリッチになった。低音が響き、セリフがリアルで生々しく、しかもクリアーだ。

 銀座の劇場は混むという予想から、早朝の8時45分からの上映の80分も前に到着したのだが、すでに40人ほどが行列を作っていた。上には上がいるものだ。

 観客層としては20代前半の若い人たちが中心。それ以外、オヤジは2割、中年も含む女性が1割。

 60分前で倍ほどにふくれあがり、45分前に開場したときには200人を超えていただろう。スゴイ人気だ。まあ、そうでなくても銀座の劇場は混むのだが。

 初回のみ全席自由だったが、12席×異例の15列という多数が指定席のカバーを掛けられていた。

 最終的に1,131席の8割ほどが埋まった。男女比は半々。次第にロー・ティーンの子供も増えて、子供・若者・中高の比率は3:3:3。つまり幅広い層に支持されていたようだ。ファミリーも結構いたし。なかなか出足好調。でも「千と千尋」は抜けないだろうなあ。


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