2001年10月6日(土)「陰陽師」

2001・東北新社、TBS、電通、角川書店、東宝・1時56分

ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル


人と鬼が共存していた平安時代。帝に仕える源博雅(伊藤英明)は、怨霊にとりつかれた上官のため、当代随一の陰陽師、安倍晴明(野村萬斎)を訪ね意気投合する。同じ頃、世継ぎの権利を奪われた右大臣、藤原元方(柄本明)のもとに、陰陽師頭の道尊(真田広之)が現れ力を貸そうと申し出る。

70点

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 なかなかよくできた時代劇。ほぼ2時間を使い、夢枕獏原作の「陰陽師」シリーズを丹念に描こうとしている。

 それには好感が持てるのだが、何かいまひとつ乗り切れないものも感じられる。それは何なのか。天気の良い屋外が露出オーバー気味に捉えられているように、時代劇的な重厚さの欠如なのかもしれない。室内やセットになると色が豊富にもどってくるのだが、とにかく外は白っぽくて軽い感じがする。

 人前で高度な術を使ってみせる冒頭のエピソードでは、安倍晴明を演じる野村萬斎の目つきがイヤらしくちょっと反感を感じてしまうが、それ以後はノーブルな雰囲気と人柄の良さ(たぶん)が出て、次第に晴明に惹かれていくようになっている。うまい構成だ。

 もちろん安倍晴明役の野村萬斎は悪くないが、印象に残るのは強烈なキャラクターの道尊役、真田広之。悪役の感じを出すため髭を伸ばし、熱演している。

 豪華な出演陣に、豪華なセット、豪華な衣装、贅沢なSFX、2時間というたっぷりの時間、表現力豊かな35mmフィルム、音が飛び交うデジタル音響、たくさんの優秀なスタッフ……。

 それでも、スケールがまるっきり違うが、NHKのミニ・シリーズ、晴明をいま謹慎中のスマップの稲垣吾郎が、博雅役を杉本哲太が、密虫を本上まなみが演じたTV版の方が面白い感じがする。新シリーズは完成しているのに、稲垣の事件でオン・エアできないでいるらしい。見たいなあ。

 伊藤英明の博雅もひたむきな感じが出ていて良いが、NHK版の杉本哲太の方が一本気な感じがしてはまっているように見える。晴明も稲垣吾郎の方が世俗を超越した感じがするのではないだろうか。密虫は圧倒的に本上まなみが美しくて良いし(個人的趣味で恐縮だが)。

 公開初日の2回目、35分前でロビーに35人ほどの人。ほどなく列を作らされて、30分前には50人以上の列になっていた。なかなかの人気のよう。

 下は小学生くらいから、上は白髪の老人まで。中心は大学生くらいで、男女比はほぼ半々。老若比は8:2と中高年以上が圧倒的に多い。指定席なしの座席は、だいたい586席のうちの6割ほどが埋まった。


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