2001年10月13日(土)「タイガーランド」

TIGERLAND・2000・米・1時41分

日本語字幕翻訳:戸田奈津子/ビスタ・サイズ/ドルビー

〈米R指定〉
http://www.foxjapan.com/movies/tigerland/index.html
1971年、長引き泥沼化するベトナム戦争のさなか、アメリカ陸軍はベトナムに送り込む兵士の基礎訓練を各州の基地で行っていた。ローランド・ボズ(コリン・ファレル)はルイジアナ州ポーク基地で8週間の基礎訓練を受けていたが、人間を人間として扱わない軍の姿勢に疑問を感じ、また戦争自体の意義にも疑問を感じ、問題を起こしては営倉入りの処罰を食らっていた。

72点

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 8mmフィルムかと思わせるほど粗い画質。しかもカメラが揺れ動いて疲れてしようがない。色も浅く、まるでシロート撮影みたい……というのはすべて狙いだったようだ。しかし、本当にこれで良かったのか。客としてみれば、こんな絵で、シロート映画のような印象を受ける作品にお金を払うのはためらわれる。評論家の皆さんはいいだろう。お金を払わず、ご招待で見るだけなんだから。それが狙いなら、アートだと評価するだろう。しかし、お金を取る以上、芸術だけでは済まされない。

 監督はと見れば、ジョエル・シューマカー。デザインから脚本、テレビの演出を経て「ロスト・ボーイ(The Lost Boys・1987・米)」「フラットライナーズ(Flatliners・1990・米)」「フォーリング・ダウン(Falling Down・1994・米)」「バットマン・フォーエヴァー(Batman Forever・1995)」などきわめてハリウッドらしいエンターテインメント系作品から、次第に「評決のとき(A Time to Kill・1996・米)」、「8mm(8MM・1999・米)」など次第に社会派的傾向を強めてきている、本作はその試金石となるのかも。

 全体の感じとしてはスタンリー・キューブリック監督の「フルメタル・ジャケット(Full Metal Jacket・1987・米)」に似ている。普通の人間を殺人マシーンに変えている非人間的機関である軍隊、そしてその訓練施設、教官たち……。違うのは、「フル……」がその先の地獄の戦場があるのに対して、本作はすべてが訓練だということ。そして、その訓練さえもが死人の出る戦場なのだと本作は言う。

 タイガーランドとは、8週間の基礎訓練を終えた新兵たちが、最期の訓練をする特別な場所で、別名アメリカにあるベトナムと呼ばれているところ。ここで、ベトコン役とアメリカ軍役とに分かれて、空砲を使って実戦さながらにシミュレーションを展開する。そして、予想されるべき事件が起こることになる。これがなかなか怖い。起こるぞ、起こるぞと思わせておいて、ついに起こるわけだから。

 使われる銃はM16で、なぜか撃たないシーンはM16A1の前期型、射撃訓練のシーンなど撃つシーンでは後期型になっている。時代的には前期型でなければならない。どうも、撃たないシーンの前期型はかつてのMGCの金属モデルガンのようだ。そして撃つシーンは実銃ベースのプロップ・ガン(分類上は本物とされる)ということらしい。アメリカでも撮影に実銃を使うのはいろいろ規制があって面倒なことだと聞く。通常の小道具に分類されるモデルガンでサクサク撮影を進めていきたかったのだろう。

 演習シーンではちゃんと赤くペイントされた空砲アダプターを銃口に(正確にはフラッシュ・サプレッサーに)取り付けている。そして、撃たないときは、ちゃんと人差し指を引き金から遠ざけるようにピンと伸ばしている。きっといいトレーナーが付いて、メインの俳優たちに軍事訓練を行ったのだろう。

 映画の冒頭から流れる太鼓ベースの曲がなかなか印象的。

 公開2週目の初回、40分前に着いたらO人。35分前になって10人ほどになり、30分前に20人ほどに。なかなか人気があるようだ。

 ほとんどは20代後半以上で、中心はオヤジ。女性はわずかに2人だけ。内容がヘビーでハードだからなあ。20分前に開場してから20代前半の大学生くらいもチラホラ増えだした。最終的には50人ほどの入りで、女性は数人。

 銀座というか有楽町の劇場は、指定席がないのは良いが、前の席の人の頭が気になるので、真ん中に座るより左右どちらかによって座った方がいい。オススメは前から5〜6列目。


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