2001年11月11日(日)「メメント」

MEMENTO・2000・米・1時53分

日本語字幕翻訳:菊地浩司/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル

〈米R指定〉
元保険調査員のレナード(ガイ・ピアース)は、ある事件によって短期記憶を失ってしまう精神障害を負ってしまった。愛する妻が2人の侵入者によって殺害され、自分も殴られて昏倒したのだ。それ以来、彼は犯人のジョニー・Gを探し求め独自の捜査を続けていた。激しい物忘れをカバーするため、メモとポラロイド・カメラが欠かせず、そして大切なことはなくさないよう刺青にして全身に入れながら。

76点

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 全体の物語を10分単位くらいでバラバラにし、すべて逆から描いていくという斬新なスタイルで、物語の真相が次第に絞り込まれわかっていくという仕掛け。特にタイトルが素晴らしい。でもINDbで8.9はあげすぎじゃない? 全映画の中で9位は、どうかなあ。もちろんいい映画だと思うけど。

 1枚のポラロイド写真のアップから始まる。と、その色が徐々に薄れていき、それが逆回転だとわかる。ここでタイトル。スタッフ、キャストの表示が終わると、ちょうどポラロイドが真っ白にもどる。それがカメラに吸い込まれ、ストロボが光ると死んだ男が倒れていて、射殺されたらしく血糊が飛び散り、床に空薬莢と割れた眼鏡も落ちている。その空薬莢が転がり始めて跳ね上がるとS&Wオート(シングル・マガジンのショート・スライドなのでM3904かM909あたりだろう)に吸い込まれ、男の頭を撃つ主人公がいる。もみあって男から眼鏡が落ちる……。

 どうして、こんなことになったのか。物語の始まりだ。うまいなあ。ただし、こういう手法はこの映画が最初というわけではない。全編をこうして描くことはまれだとしても、手法自体はありふれている。普通はこうした回想シーンが2-3あって、それを有効的に使ってみせるわけだ。でも全編はこうしない。そこがユニーク。しかもショッキングなどんでん返し。

 特に素晴らしいのは、主人公を短期記憶の機能障害者として描いたことだろう。アメリカには実際にこういう症状の人がたくさんいて、TVで紹介されたことがある。昔のことなら覚えているのに、10分前に何をしていたのか思い出せない。結局、思いついたときにメモしておくしかなく、(かくして壁はメモだらけになる。映画はつまり10分単位でさかのぼっていくしかないのだ)

 この脚本、撮影は、かなり入念に用意されたことだろう。見終わって、ナタリーはどうしたと気になりはしたが、字幕はすべての言葉を翻訳していないのだから、それで責めることはできない。まあ、とにかくこの奇妙な雰囲気を楽しみましょう。

 主人公を演じる「L.A.コンフィデンシャル」の誠実な捜査官を演じたガイ・ピアースがいい。頬がこけて痩せているので、いかにもこういう神経症のようなものを患っているように見える。

 「マトリックス」から、キャリー=アン・モスと、裏切り者を演じたジョー・パントリアーノが来ているので、そのシリーズの「2」みたいに感じる。しかし、これは全く関係ない。奇妙な感覚のこの映画を楽しみ、謎解きに挑戦しながら、気持ちよくだまされればいいのだ。

 ちなみに「メメント」とは英語で「形見」とか「思い出の種」と言うような意味。ラテン語の「思い出せ」から来ているらしい。なるほど、内容にピッタリだ。タイトルまでが素晴らしい。

 公開2週目の初回、45分前に着いたら、もう開場していてすでに20人くらいの人が座っている。早いなあ。男女比は4:6で少し女性の方が多い。ほとんどが20代の若い人たちで、みんなどこでこの映画のことを知ったんだろうか。TV-CMとかやっていなかったと思うし。

 オヤジが数人。指定席は、会員登録した人が無料でインターネット予約できる席で、およそ10個。これはいいシステムだ。無駄がほとんどない。劇場は予約が入ると、上映会ごとに紙をシートに貼っておく。

 どんどん人が増え始め、20分前にはもう227席が満席に。その後も増えて、座布団の貸し出しが行われ、通路に座ってみた人も20〜30人くらいいたのではないだろうか。スゴイ人気だ。

 終了して8階にある劇場を出たら、次回を待つお客さんの行列が階段にできていて、なんと1階までつながっていた。この多さは「ギャラクシー・クエスト」を超えているかもしれない。そこまで、いいかなあ。ちょっと疑問。

  でも、なんでこんなにいい映画がアート系の単館ロードショーなんだろう? 大手が買わなかった? わかりません。


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