2001年11月17日(土)「ムーラン・ルージュ!」

MOULIN ROUGE!・2001・豪/米・2時08分

日本語字幕翻訳:戸田奈津子/シネスコ・サイズ(レンズ)/ドルビー・dts

〈米PG-13指定〉
1899年、パリはモンマルトルの奥にショー・バブで、ダンス・ホールで、娼館という“ムーラン・ルージュ”があった。小説家を目指して田舎からパリへ出てきたクリスチャン(ユアン・マクレガー)は、ボヘミアンな劇団と出会い、自分たちの新しい芝居を売り込むため、“ムーラン・ルージュ”へ乗り込み、そこのトップ娼婦に気に入られようとする。

76点

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 徹底して「愛」を描いたファンタジー、ミュージカル。冒頭から30分くらい、ファンタジーを強調したいがあまり、ちょっと度が過ぎてマンガにまでなってしまっているのは残念だが、後半シリアスになってきてから俄然良くなる。くーっ涙が……。

 ボクが見た銀座の劇場ではそうでもなかったが、別な劇場では前半かなり笑いが起きていたらしい。特に外人の観客にはウケていたらしい。これが監督の狙いなのかどうかは難しいところ。どう考えても、前半笑わせて、後半それを利用して泣かせるというのではないように思える。つまりは苦笑に近いのではないかと。苦笑ならば銀座の劇場でも起こっていた。

 もちろん軽妙さは狙ったと思う。のっけのカーテンが開くところからして、無声映画時代を彷彿とさせる演出で、モノトーン、字幕カード、ラストのスタッフ・ロールなどすべてが雰囲気作りのためなのだ。しかし、本当に笑わせようとしているところで笑えず、ほとんどが空回り。やっぱり「ロミオ+ジュリエット(Romeo + Juliet・1996・米)」の監督バズ・ラーマンだなあと。「ロミオ……」でも時代を現代に置き換えたシェークスピア劇で、どんな今風のアレンジの妙を見せてくれるのかと思ったら、古いセリフ回しそのままで、時代背景だけが現代というとてもチグハグなものだったしなあ。

 冒頭、パリ全域を見渡す遠景から、ぐーっとカメラが寄っていって、町が見えてきて、家が見えてきて、そしてやがて1つの部屋へ入っていくというのは、ヒッチコックの「サイコ(Psycho・・米)」だろう。ほかにも、別な映画からの引用というようなところがいくつかあったようだ。月に顔があるのは「月世界旅行」だろうし。

 いいのは、時代を無視した数々の現代のヒット曲。「ライク・ア・ヴァージン(マドンナ)」とか「ラブ・イズ・メニー・スプレンダー・シング(慕情のテーマ)」とか「オール・ニード・イズ・ラブ(ビートルズ)」とか。そして豪華な、金のかかったセット。映画らしい絵作り。ユアン・マクレガーの笑顔(「トレイン・スポッティング」以降、「スター・ウォーズ:エピソードI」以外いい作品に恵まれなかったような)、美しいニコール・キッドマン(毎回違う衣装で登場)だろうか。そうそう、あの「スポーン」で酷いモンスターを演じ、などで実に憎たらしい敵役を演じているジョン・レグイザモが今回も言われないと気づかないほど別人になって登場する。彼がいい。

 逆に気になったのは、つまらないギャグを別にすれば、合成のシーンになるときまって画質が荒くなることだろう。アレっと思うと合成になる。やれやれ。

 いきなりのご乱心にはついていけないが、後半のシリアス・パートはグイグイ引き込んでくれる。ただし、娼婦と無垢な貧乏青年の恋に大金持ちの伯爵が絡んでくるというのは、ラブ・ストーリーの王道中の王道。結末は見えているもんなあ。それをきっちり感動させるのはスゴイなあと。ほとんどの人はオーラスで泣いていたようだが、ボクはその前の「Show must go on(ショーは続けなければならない)」「この世で最高なのは、愛し愛されることだ(とか何とかそんな内容)」と言っているところのほうが来た。

 公開初日の初回、銀座の劇場は変更されていていた。でもここは、新しい割にはスクリーンが見にくく、混むんだよなあ。せっかくシングルCD付き劇場名入り前売り券にしたのに。

 1時間前に着いたらすでに40人ほどの行列が。男女はほぼ半々で、オヤジ以上は3割といったところか。意外に若い人が多い。まあ場所柄かほとんどカップルだけど。

 40分前に開場。12席×5列の指定席も初回は全席自由。しかし、中央よりの席は前の人がじゃまになる上に逃げの角度が付けられないためパス。ちょっと斜めの方がいいのだ。音響的には中央がいいのだけれど。

 最終的には554席に7割ほどの入り。最近ではいいほうだろう。少し女性が増え6:4ほどに。いずれにしても、歌の多い映画なので音響設備のいい劇場で見たい。できるだけデジタル対応劇場で。

 「スター・ウォーズII」の日本初劇場予告編が上映された。あまり印象に残らないものだったが、2〜3人だけ盛大に拍手していた輩が。どうも映画会社の仕掛け臭い。皆、笑っていたし。この中の1人は、映画が終わった後も盛大に拍手してたしなあ。やれやれ。何者にしても、ひとりだけ舞い上がってるってのはいただけないなあ。雰囲気を読めよ、雰囲気を。


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