2002年2月2日(土)「地獄の黙示録 特別完全版」

APOCALYPSE NOW REDUX・2001・米・3時間23分

日本語字幕:手書き、下/翻訳:戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル・dts
(米R指定)

http://www.apocalypse.jp/
ベトナム戦争真っ盛りの夏、アメリカ陸軍特殊部隊のウイラード大尉(マーティン・シーン)は、ある人物の暗殺を命じられる。その男とは、やはり陸軍の特殊部隊グリーン・ベレーに所属する歴戦の勇士カーツ大佐(マーロン・ブランド)だった。カーツ大佐は、軍の命令に背き、カンボジアの奥地で傭兵や付近の村人を集め、自分の王国を築いているというのだ。

72点

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 22年前(日本公開1980年)に見た時もラストのカーツ大佐の部分がわからなかったが、歳を取ってそこそこ大人になってまた見ても、ラストはさっぱりわからない。カーツは何を言っているのか。いや、わからなくて良いのかもしれない。登場人物たちの説明によれば、狂人ということなのだから。ボクは未見だが、コッポラ監督の妻が残していた記録を基に作られたドキュメンタリー「ハート・オブ・ダークネス(Hearts of Darkness: A Filmmaker's Apocalypse・1991・米)」で、マーロン・ブランドの変人ぶりが描かれているそうだから、コッポラがコントロールできなかったのかもしれない。けれど、それで狂人という感じがよりにじみ出るので、そのまま良しとしたのかもしれない。もちろん、ボクがバカということも大いにあることだ。

 それ以外の部分は非常にいい。前作よりもわかりやすくなっている。つまり川をさかのぼることが、ほとんどカーツの生き様を辿ることになり、彼が現在の心境に至ることになる道のりを追体験することになる。

 前作では、そのさかのぼっていく途中のエピソードが少なかったので、それがわかりにくかった。しかも、必要不可欠なエピソードのみにされていたから、予定調和のように川上のカーツ大佐の元へと無駄なく至ってしまう。

 ところが、完全版ではエピソードが増えたことによってもっと物語としてふくらんで、エンターテインメントとしても優れたものになった。笑いあり、お色気ありで、あたかも川が道で、ロード・ムービーだと言わんばかりのわかりやすさ。つまり、脚本も、演出も、当初狙ったのはこれだったのだ、きっと。それが完成尺が長すぎたため、プロデューサーか配給会社からか、1時間切りつめられるように要求され、一番言いたかったところだけを残したため、味も素っ気もないものになってしまったという感じだったのだろう。

 わかりやすく、おもしろい映画となったが、カーツ大佐が出てくるとダメだ。言っていることがさっぱりわからない。ジョン・ミリアスがこんなわかりにくい脚本を書くかなあ。しかも、このラストのシーンに、本当の牛惨殺の(撮影隊歓迎のための屠殺だったらしいが)シーンが入ってくる。非常にショッキングで不快だ。

 細かなカット割りなどからして違い、けっきょくほとんど全編に渡って作り直したのだ思う。新しく復活したシーンも話題になっているが、それよりもボクはエンディングに言及したい。

 22年前に初めて公開された時、全国拡大ロードショー公開前に、別バージョンによる特別限定公開が実施された。そして、一般公開バージョンは違ったエンディングだった。今回はまた違うエンディングだ。ボクはすべて見ているが、あまり印象として残っていない。あやふやな印象であえて書くと……。

 先行限定公開版はたしか70mmフィルムを使った6チャンネル立体音響で、音が明確に頭上を回り、また前後左右に飛び交う。そしてウイラードがカーツ大佐を殺害した後、ジャングルが大爆発するシーンが入って、スタッフ・ロール等が一切なく終わってしまう。

 一般公開35mmバージョンは、アナログのドルビー・ステレオで、音の移動がやや不明瞭だったが、それ以外たいした違いはなかった。そしてラスト、ウイラードがカーツ大佐を殺害した後、連絡を受けた米軍がジャングルを爆撃し(ここの映像はないが)、大爆発する。ここにスタッフ・ロールが重なる。そのためこのシーンはかなり長い。大予算をかけ、ものすごい量の火薬を使って実現したという、カーツ帝国の崩壊の大爆発。

 さて、今回のエンディングはどうなるのか。22年の月日は爆発で全てを水に流すような結末を許さなくなっていたということか(カンヌに出品されたものはこれに近いらしいが)。ぜひ見て、自分の目で確認して、どのエンディングがこの映画にはふさわしいのか考えて欲しい。

 それにしても、長い。よって眠い。すごい映画だとは思うが、カーツ大佐に至るまで、いろんなエピソードを3時間も追体験して、ヘトヘトとなったところへ訳のわからないろれつ不良の大演説を聞かされるのだから、ここで眠ってしまってもしようがないと思う。

 公開初日の初回、ちょっと用心して60分前に劇場に着いたら、すでに8人ほどの人が並んでいた。1/3が20代前半、2/3が20代後半以上。オヤジが目立つ。45分前になって前売りの列に20人ほど、当日の列に10人ほどが並んだ。これらの内、女性はたったの2人。しかもやや年齢高め。

 25分前、ようやく開場した時点で、前売り30人、当日20人といった感じ。12席×5列の指定席も、12席×1列のぴあ席も、初回のみ全席自由。次第に若い人も増えだした。

 最終的に1,044席の7割が埋まった。なかなかの人気のようだ。年齢層は、下は中学生くらいから上は白髪の老人まで、結構幅広いが、多いのはオヤジ世代。おそらく劇場でリアル・タイムに見た人たちなのではないだろうか。

 プログラムは800円もしていたが、なにやらCD-ROMのようなものがついていた。あれって、劇場限定の前売り券についていたヤツ? ちょっとガッカリかも。

 冒頭、ドルビー・デジタルの洞窟版デモあり。


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