日本語字幕:手書き、下/東野 聡/ビスタ・サイズ/ドルビー
(米R指定)
姉のトリッシュ(ジーナ・フィリップス)と弟のダリー(ジャスティン・ロング)は、弟のオンボロ車で春休みの帰省をすることにした。ところが、途中で不審な車がパイプの中に、シーツで包んだ死体のようなものを捨てるのを目撃し、その家に行ってみることにする。はたして、そこには数百の虐殺死体が散乱していた。
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うーん、ホラー映画なのに、怖いというより腹が立った。バカ姉弟物語。酷い脚本だ。脚本を担当しているのは、監督も兼任しているヴィクター・サルヴァという人。いままであまりパッとした仕事をしていないが、コッポラに気に入られているらしい。しかし、こんなのを書いているようでは、彼の期待を大きく裏切っていると思うが。 冒頭、車で通りがかりに見つけた事件に顔を突っ込もうとする弟を、姉が「よくホラー映画でバカなことをするヤツが出てくるでしょう。あなたはそれと同じよ。だからよしなさい」と言って彼の行き過ぎた行動をいさめるのだが、まったく言うことを聞かず、どんどん先に行ってしまう。ここからしてダメだ。この最初のおバカ行動がなければ、そもそも何も起きなかった。バカを重ねて事件になって命を狙われるのなら、まさに自業自得ではないか。同情の余地がない。自分で否定していることを自分から進んでやってしまうという自己矛盾。ウーン、うなるしかない。 この映画を見てよくわかったのは、人間が一番怖いということ。謎の男が正体を現すまでは、事件は異常者による連続殺人事件の様相を呈していて、腹は立つがかなり怖いのだから。 田舎町の郊外に忘れ去られたような廃虚があって、よく見ると屋根に十字架が付いている。そこにサビだらけの車が入ってきて、ゴミ捨て場に赤いシミの付いたシーツに包まれた何かを捨てる。大きさは人間大。これはもうサイコの仕業だろうと、誰もが思う。ここから映画は始まるわけだが、途中で犯人がわかったとたん色あせる。ちっとも怖くなくなってしまう。主人公たちを追いかけ回す理由も不明だし、それを予知夢で見た超能力者の登場も何の意味もない。あとはただのB級以下のスプラッター。好きにやってくださいって感じ。 つまり、理性や知性があるべき人間が軌道を外したときの方が怖いのではないか。幽霊は人間とは言えないが、生きていたときの怨念が強く残っているから怖い。ただ単にボーと出てくる幽霊なら怖くも何ともない。音で脅かすだけじゃ、プロとは言えないだろう。フランシス・フォード・コッポラも焼きが回ったか。 公開2日目の2回目、15分前についたら銀座の劇場のロビーには20人ほどの人。圧倒的に中高年が多い。それも中年が中心。普通ホラーものは若者のオハコなんだが。4〜5人いた女性も中年層。都市伝説なんていう惹句に惹かれたんだろうか。 なぜか嬉しいことに全席自由。ただこの劇場の場合、指定席は音響的にはベスト・ポジションだと思うが、老眼的にはスクリーンがちと遠い。 ちなみにタイトルの『ジーパーズ・クリーパーズ』とは、アメリカ人に親しまれているジョニー・マーサーのスタンダード・ナンバーなのだとか。劇中でもオールディーズとしてレコードやラジオで掛かっている。意味としては「おや、これはこれは」という驚きの言葉。 冒頭、ドルビーデジタルのヘリコプター編のデモあり。 |