2002年2月23日(土)「キリング・ミー・ソフトリー」

KILLING ME SOFTLY・2001・英・1時間41分

日本語字幕:手書き、下/古田由紀子/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル・dts・SDDS
(米R指定、日本R-18指定)

http://www.killingmesoftly.jp/
ロンドンで働くウェブ・デザイナーのアリス(ヘザー・グラハム)は同棲中だったが、ある日横断歩道で出会った男アダム(ジョセフ・ファインズ)に一目惚れし、その日の内に関係を持ってしまう。前の男に一方的に別れを告げると、アダムの元に転がり込み、セックスに溺れていく。やがて、差出人のかかれていない手紙が届くようになり、アダムの過去に疑いを持つ。

70点

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 ストーリーはオバカだが、絵はとてつもなくキレイ。これぞ映画だというほど、素晴らしい構図と色遣い。さすがは「始皇帝暗殺(荊軻刺秦王・1998・中/仏/米・日)」や「さらば、わが愛/覇王別姫(覇王別姫・1993・香)」のチェン・カイコー監督。ただ、絵とヘザー・グラハムのヌード以外、見るところはないかも。

 ミステリーとなるべきメインのストーリーはおざなりで、真犯人の予想も容易に付く。本気でミステリーを作る気なら、もっと膨らますことが可能な設定になっているのに、あえてここで止めたとすれば、シンプルにすることによって心情をもっとじっくり描こうとしたのかもしれない。

 が、結果として浮き上がってきたのはセックス・シーンだけだった。得られる教訓は、セックスが先行してできた関係は、すぐに壊れてしまうということ。真の信頼は、お互いに相手を良く知って、十分なコミュニケーションが取れてからだと。

 やるせないラストも自業自得という感じで、あまり切なさや可哀想という感情がわいてこない。これで良かったのか。

 「フロム・ヘル」では娼婦を演じ、本作で疑り深いセックスの奴隷を演じたヘザー・グラハムは、せっかくの「オースティン・パワーズ」での明るいイメージをすっかり失ってしまったが、演技力がありそうな感じは増したと思う。

 相手のアダムの姉を演じるのはナターシャ・マケルホーンという、「Ronin(Ronin・1998・米)」の連絡係の女を演じてた人。ここでも、ちょっと謎めいた役柄を演じている。

 好意的に解釈すれば、たぶん狙ったのはヒッチコックなのではないかと思う。小さな疑惑が生まれ、やがて雪だるま式に大きくなっていって、ついには爆発する。鍵のかかったもの入れの中に隠された何かを探っている時、彼が帰ってくる。ごまかせるのか、ばれるのか。それらの感情が観客と共有できないからただのエロに終わってしまったのだろう。

 銀座は公開最初の1週間だけなぜか「みゆき座」での上映。公開初日の2回目の1時間ほど前に着いたら、ロビーには若い女性とオバサンが6人。やっぱりその線か。

 20分前に整列させられた時点で、50人ほどに。15分前に入替、10席×6列+ぴあ6が指定。老若比は4対6でやや若が多い感じ。男女比は6対4で女性が多い。男性はやや年齢層が高く老寄り、女性の方が若い人が多かった。まあ18禁の映画だし。

 最終的には4割ほどの入り。指定に14人、ぴあに6人。

 多くがチェン・カイコー監督ファンだとすれば、ガッカリさせられたかもしれない。今後、観客が増えることは期待できないだろう。


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