日本語字幕:手書き、下/林 完治/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル・dts
(米PG-13)
ボスニアに展開するNATO軍指揮下の米海軍空母カールビンソンから、停戦を監視するためF/A-18Fスーパーホーネットで偵察に出たクリス・バーネット(オーウェン・ウィルソン)とスタックハウス(ガブリエル・マクト)は、コースを外れて飛行したためセルビア軍によって撃墜されてしまう。司令官のレイガート(ジーン・ハックマン)は、なんとしても救出しようとするが、停戦が破られることを恐れるNATO司令部は救出を許可しなかった。
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うーん、ジーン・ハックマンが出ても、この程度の映画があるとは。米海軍が全面協力したというだけあって、空母やF/A-18Fの映像は素晴らしいが、いまひとつ盛り上がりに欠ける。CG使いまくりの撃墜シーンや、敵陣内を逃げ回る過程、ストーリー展開も、リアルさという点でいかがなものか。 確かに大型化したスーパーホーネットのタンデム型F/A-18Fと地対空ミサイルの戦いは面白い。ハラハラドキドキのゲーム感覚だ。しかし、それゆえにどこか現実感が乏しく、身に迫ってこない。 致命的なのは主人公のキャラクターに魅力がないこと。ちょっと不運な主人公からは遠いイメージの顔立ちと、戦闘がしたくて軍に入ったという動機、そして偵察ばかりで戦闘がないから軍を辞めると言い出すのだ。こんなだから、不時着して否応なしに戦闘状態に陥っても、オマエが望んでいたことだろっ、とツッコミたくなるだけ。こんなヤツ助けなくてもいいしゃんって観客に思われたらおしまいでしょ。 たぶん、そういう好戦的な考え方から、この事件を通じて人間的に成長して考えが変わるというようなことを狙ったのではないかと思うが、目的は正しいのにポイント間違えたというか。政治的な反響を期待してか、好戦的な男と戦わない軍隊という組み合わせ。それより、ルール(命令)を良く無視する男と、ルールの大切さという組み合わせの方がわかりやすかったのに。 武器の考証はしっかりしているようで、旧ソビエトAKアサルト・ライフルの流れをくむチェコのCZ58(たぶん)や、スナイパー・ライフルのCZモデル700らしきボルト・アクション・ライフル、ロシアのBMP2歩兵戦闘車、地対空ミサイル(型不明)、戦闘機に装備のチャフ、フレア、イロコイ、ミニガンなどなど。拳銃も確認はできなかったが、CZ系のガバメント似が使われていたようだ。 ラストがあたかも実話のような終わり方で、彼はその後どうしたとかっていうのは、何なんだろう。 地雷原を走り抜けるというシーンも、とても信じがたいもの。ワイヤーを足で引っかけると安全ピンが抜けて爆発するように仕掛けられているというのに、その地雷原を突っ走ってクリアするんだから、お前はスーパーマンかと突っ込みたくなる。どうも脚本ではなく、監督の希望で変えたらしい。 ジョン・ムーア監督は、これが劇場2作目の31歳。まだまだ若いのだから、がんばってほしい。それにしても、2作目にしてジーン・ハックマンのようなベテラン大俳優に出てもらえたのはなぜなんだろう。前作が特に優れていたわけではないようだし。 ちなみに空母はカールビンソンという設定だったが、出てくるのはCV64とあったから、1961年生まれの「コンステレーション」という艦。ちなみにカールビンソンの型番はCVN70(原子力空母)が正しいらしい。 公開初日の初回、45分前に劇場に着いたら老けたオヤジが1人。30分前に12〜13人の行列が勝手にできた。劇場スタッフは何をやっていたのか。1/4は20代の若者で、女性が3人(うち1人はオバサン)。オヤジの方がずっと多い。20分前になって開場した時はそれでも40人ほどの行列になっていた。 最終的な混み具合は、新宿の指定席なしの406席に6割ほどの入り。 それにしても、画面中央のピントがあまいのは気になった。映写機前のガラスが汚れているのか、ピント調整がいけないのか、映写技師の人はもっとプライドをもって欲しい。 |