2002年4月14日(日)「光の旅人 K-PAX」

K-PAX・2001・独/米・2時間01分

日本語字幕:手書き、下・戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
(米PG-13指定)

http://www.k-pax.jp

ニューヨークのグランド・セントラル駅に光とともに現れた怪しい男(ケビン・スペイシー)。何もしていないのに、怪しいと言うだけで尋問されることになるが、彼は自分を「K-PAX」という惑星から来た異星人プロートだと名乗る。やがて精神病院をたらい回しにされたあげく、数年後、マンハッタン医学協会の精神科に送られてくる。担当となった精神科医のマーク(ジェフ・ブリッジス)は、本当の宇宙人かもしれないとどこかでは思いつつ、こうなるに至った心理的な要因があるはずだと、調査を開始する。

74点

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 前半、不思議な優しさにあふれる癒しのような映画が展開される。そして後半、優れた推理小説かスリラーを見るようなハラハラする展開を見せる。ちょっと「カッコーの巣の上で(One Flew Over The Cuckoo's Nest・1975・米)」に似ていなくもない。

 結局、精神異常というのは基準が曖昧で、何でも異常にしたがる人と、基準があいまいで何でも受け入れられる人とがいるという話にはなるなあと。同様に、なんでも理屈で説明したい傾向の人(科学者に多いのだろうか)と、あるがままを受け入れようという傾向の人とがいると。そしてそれらを一歩引いた第三者の立場から見ると、つまりはそれは受け取る人の解釈の仕方なのではないかと、そういう気になる。

 きっと2人で見たら、話すことがたくさん出てくると思う。解釈が様々可能で、監督や脚本家の考えを押しつけてくるタイプの映画とは違う。心理クイズのように、あなたならどういう解釈をしますか、というようなもの。ファンタジー好きな人はSF的に「彼」は宇宙人だと捉えるだろうし、現実派の人は精神に異常を来した男だと捉えるだろう。この二つが両極端の考え方で、他にもこの中間にたくさんの解釈が存在する、そういう映画。

 やはり、何といってもスゴイのは脚本だろう。チャールズ・リーヴィットという人で、ジーン・ブリューワーの小説をベースにしている。小説自体の出来も良かったのだろう。シャロン・ストーンが不治の病に冒された息子の母を熱演した「マイ・フレンド・メモリー(The Mighty・1998・米)」でも原作を脚本にしている。つまり脚色がうまいのかも。

 監督はイギリス生まれのイアン・ソフトリーという人。ボクはこれまでの作品を見たことはないが、ケンブリッジからBBCに入社してドキュメンタリーを手がけ、その後ミュージック・ビデオを撮っていたという。確かに前半の独特の雰囲気は、それだけの実績があってこそのものだろう。ドキュメンタリーをたくさん手がけた人だからこそ、こういう結末にしたに違いない。判断は観客それぞれに任せるという。

 光が一つの重要なキーになっていて、全体を通して光がいろいろに捉えられ、表現されている。これも見所の一つだ。タイトルのデザインからして凝っている。うまないなあと思ってクレジットをよく見ていたら、なんだ「イマジナリー・フォース」ではないか。うまいわけだ。

 ラストのラスト、すべてのクレジットが終わった後に、ちょっとした映像がある。映画が終わったからと、あまりにはやく席を立つと見逃すので、くれぐれもご注意を。ただし、これを見なかったからといって、映画の印象が変わるほど重要なことではないが……。

 公開2日目の最終回。10分前ほどに着いたら、406席に30人ほどの入り。さすがに最終回は少ない。20代前半が中心という感じながら、下は小学生から上はかなりお年寄りまで、いたことにはいた。ただほとんどは20代。男女比は6対4でやや男性の方が多い。どちらかといえば女性向きの映画のような気もするが、たぶん女性誌があまり気を入れて紹介していないのだろう、入りはいまひとつ。

 最終的に観客は40人くらいに。指定席のない劇場なので、好きな場所に座ってみることができる。ゆったりしていていいなあ。しかし、これはもっとお客が入っていい映画だと思う。外人さんカップルがやや目立つか。


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