2002年5月12日(日)「突入せよ! 『あさま山荘』事件」

THE CHOICE OF HERCULES・2002・東映/アスミックエース/TBS・2時間04分

ビスタ・サイズ(ARRI、松下HDカム)/ドルビーデジタル

http://www.toei.co.jp/asamasansou/
(MacはFlashplayer6が必要)

1972年2月、警察に追いつめられた過激派の残党、連合赤軍数名からなるグループが、軽井沢の「あさま山荘」に管理人の奥さんを人質にとって立てこもった。長野県警は警察庁に協力装備等の協力を要請するが、警察庁は現場を取り仕切る警備局付監察官・佐々淳行(役所広司)を派遣する。縄張り意識、階級意識が交錯し、現場は混乱を来す。

77点

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 もっと暗い、悲惨な話を予想していたら、かなり笑わせてもくれる超一級のエンターテインメント作品だった。もちろん、不真面目な態度で描いているのではなく、当時現場にいた人、ひとりひとりが生きた人間としていきいきと描かれているのだ。多少の誇張や演出はあるのだろうが、これこそが映画の王道という気がした。久々に面白い邦画を見た。

 泣いている人もいた。ボクもちょっと涙が出た。しかし、久しぶりに映画を観て腹の底から笑ったし、警察の縦割り構造が一般の会社や社会にもそのままあてはまり、原田監督の前作に当たる「金融腐食列島 呪縛(A BUSINESS PANIC・1999・東映/角川書店/産経新聞社)」の「2」としての見方もできる映画。

 人間関係も、犯人との応酬も、どちらも手を抜かずリアルに迫ってくる。まさに圧巻。圧倒された。

 突然カメラが天井に行き、今起こっていることを俯瞰で捉えるというカットが何カ所かある。いわば神の視点というやつ。これがドッキリさせる効果があった。一歩引いて、ああこんなことが起きているんだなあと、客観視させてくれる。

 ただ、アクション・シーンはアップ過ぎて何が写っているかわからなかったり、カメラが動いていて認識する時間が足りなかったり、そういうところを狙ったのだろうが、ちょっとわかりづらかった。また、会議の出席者がそれぞれ勝手にセリフを言い出し重奏する場面は、まさに「金融……」を彷彿させるが、内容はわかりづらい。ここは混乱を描きたかったのだとは思うが。

 NHKの「プロジェクトX」でも取り上げられた事件だが、警察内部で起こっていたことは、あんなにきれい事ではなかったと、改めて考えさせられる。主人公である指揮官の佐々さんは、実際にあの長野県警、警視庁、警察庁の縄張り争いの渦中にいたのだそうだ。これは原作が読みたい。『連合赤軍「あさま山荘」事件』文藝春秋刊がそれ。

 もちろん役所広司は良いが、セリフが少なくてもおかしな存在感のあった長野県警本部長を演じた伊武雅刀と、警備部付石川警視正を演じた山路和弘がいい。憎めないしたたかさが滑稽でさえあり、思わず笑ってしまう。

 それにしても、突入してからあんなに激しい銃撃戦があったとは。まあ犯人側は銃砲店を襲い、700発からの弾薬を持っていたというが……。それに防弾チョッキを着けていたとはいえ、ジュラルミンの楯を2枚重ねにした弾よけはライフル弾が易々と貫通するという役立たず。こんなので、よく突入するなあ。

 アレ、武田真司って出てたんだ。最後のエンディング・クレジットを見て初めてわかった。

 公開2日目の2回目、60分前に着いたらすでにロビーに5〜6人の人。35分前くらいから増えだして、係りの人が来る前に自然と列ができた。

 男女比は半々で、下は小学生くらいから、上は定年過ぎの老人まで。割と全年齢平均的にいたが、あえて目立つところを探すと……カップルがやや多いだろうか。

 銀座の劇場は693席全席自由で、1階席が7割強、2階3階席が5割ほどの混み。


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