2002年5月18日(土)「パニック・ルーム」

PANIC ROOM・2002・米・1時間53分

日本語字幕:手書き、下・戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビー・dts・SDDS
(米R指定)

http://www.panicroom.jp/


メグ(ジョディ・フォスター)は愛人を作って家を出た夫と別れ、娘を連れてマンハッタンの高級住宅街に、以前、大金持ちの老人が住んでいたという家を借りる。建物は4階建てで、緊急時に避難するためのパニック・ルームが備えられていた。そして、越してきたばかりのある日、3人の賊が侵入してくる。

77点

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 始まるとすぐに家を借り、賊が侵入してくる。つまりほとんどが全編パニック・ルームという密室にいながら、犯人たちから逃れるという1シチュエーションの物語。それを約2時間も保たせるのだから、やはり監督のデビッド・フィンチャーはただ者ではない。しかも、ほとんど緊張が途切れることなく、ハラハラドキドキ。エンド・クレジットになるまで気を緩めることが出来ない。

 ほとんど舞台劇のような限定された場所でことが起き展開していくのに、とにかくいろんなことが起きる。侵入者から身を守るために作られたパニック・ルームなのに、ここに入っても安全ではないという設定がたくさんある。よくもこんなに考えついたと思うほど。そして、わざわざ中に入りながら、そこからでなければならない設定がまたたんまりと出てくる。

 かくして、サスペンスは増強する。出入り口が1つなのに、そこから出なければならなくなるとは、脚本の勝利だろう。侵入してくる強盗たちにもさまざまな事情と思惑があって、仲間割れが始まる。キャラクターも良く立っている。彼らはパニック・ルームの中に隠されているという金庫から金を頂戴したい。当然、守側の母親と娘にも事情がある。完璧に一体の親子ではない。入りたい奴らに、出たい奴ら。面白い設定だ。

 すごく怖い映画ではあるが、ただ、それだけ、という気がしないでもない。親子の情愛も、離婚の悲劇も、最後まで諦めない根性もなく、訴えてくるのはひたすら逃れられない恐怖。それ以外は感じられない。たぶんテーマはこんなふうに追いつめられた時、自立しようとする母はどのように行動するか、というようなものなのだろう。見終わった時、ホッとするが、感動はない。

 監督デビッド・フィンチャーの映像マジックはますます冴え渡っている。カメラはヒッチコック以上の自在な動きをする。手すりや窓などなんの障害もなく、くぐり抜けてしまう。今回はコーヒー・サーバーの取っ手をすり抜けてしまう。が、あまり驚きはない。ヒッチコックの時代はCGなどなかったから、どうやって撮ったのか気になってしようがなかったが、今はリアルなCGがある。現実に不可能ならCGで置き換えればいいと。残念ながら、もはやCGを使っていなくても、不思議な映像はCGだと思われてしまうということはある。

 よく練られた脚本は、デビッド・コープ。最近は「スパイダーマン(SPIDER-MAN・2002・米)」も手がけているし、古くは学生がテロリストと戦う「トイ・ソルジャー(Toy Soldiers・1991・米)」、超話題作の「ジュラシック・パーク1と2(Jurassic Park・1993/Lost World・1997・米)」、ある新聞記者の活躍を描いた秀作「ザ・ペーパー(The Paper・)やTVドラマの映画化「ミッション:インポシブル(Mission: Impossible・1996・米)」「スネーク・アイズ(Snake Eyes・1998・米)」など、蒼々たる作品が並ぶ。

 公開初日の初回、60分前に着いたというのにすでに30人くらいが並んでいた。ハイ。ティーンからオヤジまでいるが、なぜかメインは20代前半。オヤジなど全体の1/5ほどしかいない。男女比は6対4で、やや男性の方が多い感じ。

 50分前に50人くらいになり、40分前開場した時には、劇場の角を列が曲がってしまっていて、どれだけ人が並んだのかわからなくなっていた。

 不思議なことに、初日から指定席があって、新宿のこの劇場は10席×4列×2(左右)+ぴあ10席×2(左右)が指定。差額は400円だという。難しいところだなあ。プログラムが600円だから……。

 その後、女性が増えて、男女比はほぼ半々に。最終的に1,288席の7割ほどが埋まった。指定には中年カップルと若いカップルの2組のみ。

 上映前、劇場のJBLスピーカー・システムのデモとSDDSのデモあり。劇場もSDDSに対応。


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