日本語字幕:写植、下・風間綾平/シネスコ・サイズ(レンズ、70mm上映?)/ドルビーデジタル
サッカー人生でたった一度の八百長から、自らのサッカー人生をも断ち以後20年も辛酸をなめることになった「黄金右」ファン(ン・マンタ)。彼に八百長を持ちかけ、今は中国一のサッカー・チーム「デビル」のオーナーとなった、ハン(パトリック・ツェー)からクビにされ、街をさまよい歩いている時、奇妙なゴミ集めの青年シン(チャウ・シンチー)に出会う。彼は少林寺拳法を世界に広めるため活動しているという。やがてファンはサッカー・チームを作ることをシンに持ちかけることになる。 |
これはズバリ、のれるか。のれないかという映画。残念ながらボクはあまりのれなかった。もちろん面白いし、笑える。CGも使いまくり。周星馳(チャウ・シンチー)はとてもいい人そうだし、みんなケタはずれにとんでもないストーリーを真剣に演じている。ノリと勢い、それがこの映画のキー・ワードだろう。 この映画から、ギャグとCGを取り去ると、ごくありふれた青春スポ根もののステレオタイプが現れる。つまり、どこにでもある、ありふれたプロットだ。落ちぶれたヒーロー、いじめ、傷心、覚醒、努力、力の結集、夢の実現……というあたかも森田健作とか 中村雅俊の青春もののような王道中の王道。ある意味、NHKの「プロジェクトX」のような、といってもいいかもしれない。 ただ、サッカーを扱っていながら、サッカーに対する思い入れはほとんど感じられない。別にサッカーでなくてもよかったんだが、今はワールド・カップで話題だからサッカーにしておけという程度のこだわりしか感じられない。あまりにやりたい視覚効果とかギャグが優先され、ルールとかチーム・プレイは無視に等しい。 一番いけないと思うのは、CGを多用するあまり、実写をアニメのようにしてしまったこと。アニメがCGを使ってどんどんリアルになってきているのと対照的に、実写でありながら作りすぎ、自然界の法則無視しすぎで、どんどんアニメ化してしまっている。これは、いかがなものか。 ノリは最高に良いが、映画として見た時どうなのか。どうも最近はテレビの映画化作品とか、アイドルが出ているものとか、あまり映画らしくないものがウケる傾向にあるようだが……。 驚くのはヒロインの饅頭屋の娘ムイを演じる中国の国民的美少女アイドル、ヴィッキー・チャオが、ぶさいくメイクで誰だかわからない容姿で出演していること。美女をここまでに扱うとは。それだけではなく、オカマの美容室に行かせて、コテコテ塗りまくりのおばけメイクまでして現れるのだ。よくこんな役を引き受けたなあと。 ゲスト出演も多く、敵チームのひとつ、男か女かわからないチームのトップ2人が、美人女優のカレン・モク(「食神(1996・香)」)とセシリア・チャン(「東京攻略(2000・香)」)。少林チームが覚醒してから対戦する相手の1トップを演じているのが、ジャッキー・チェン主演の「ゴージャス(1999・香)」ビンセント・コク監督。うーん、なんだか香港のジョン・ランディスって感じ? まっいいか。 公開初日の初回、60分前に着いたら新宿の大劇場の前にはすでに150人くらいの長蛇の列。な、なんだ、これは。こんな行列、久しぶりに見た。 年齢層は、全体の7〜8割がハイティーンから大学生くらい。女性は少なく、2割程度だろうか。中高年も2割程度。 40分前に開場しその時点で200人以上の大行列。こんなことは久しくなかった。ビックリ。そこまでの映画か……うーん歳を取ってしまったと言うことか……。初回から指定席があり、10席×4列×左右と、ぴあ10席×左右がカバーが掛けられていた。 そう、ここで気が付いた。6月1日は映画の日で、当日券が1,800円のところ1,000円なのだった。そうか、これかあ。 やがて若い女性も増えだし、父・息子や母・娘というカップルも増え始めた。劇場が変更になっていて、763席から1,288席へグレードアップ。その1,288席に最終的に9割の入りはみごと。劇場を変えて良かったね、と。指定に15人ほど、ぴあに0というのは、やっぱり映画の日だからだろうなあ。 映画が終わった時、自然と拍手が起こった。じわじわとそれは広がり、4分の1くらいの人が拍手したのではないだろうか。ヤラセでなければ、これも珍しい。しかも2回も。のれた人は良かったろうが、のれなかった人にはとまどう終わり方。 ドルビーデジタルのサラウンド感は良好。 |