日本語字幕:手書き下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル・dts
(独16指定)
タクシー運転手のタレク(モーリッツ・デライプトロイ)は、ある大学の心理学部が出した実験の被験者募集記事に応募してみる気になった。2週間で4,000マルクというギャラぱかりでなく、それを記事にするためだった。タレクは眼鏡型のビデオカメラを手に入れ、実験に参加するが……。 |
映画としての完成度は高く、演出も適切でうまいのだと思うが、どうしても不快で仕方がない。最近見た映画の中ではぬきんでて不快だ。この映画を見ていると、性悪説を支持したくなってくる。うーん……。 つまり、これは悪人の話でもないし、そういう悪人に立ち向かう正義の味方の話でもない。どににでもいる普通の人の話なのに、ある心理実験のために、2チームに分けられて役割を与えられたことから、一方は卑屈に、一方は尊大にそしてやがて暴力的になっていくという変化をじっくりと描いている。これは役割が与えられれば、誰にでも起こりえる。つまり、ある意味、自分の本性を暴かれるような居心地悪さがあるのだ。 最近のヨーロッパ映画は、純粋なその国の人と言うより、移民系の人が主役だったりがんばっていることが多い。おそらく、地球はグローバル化しており、やがては全部混じってしまうのかもしれない。日本はまだまだ外国人の受け入れが少ないが、絶対にこれは変わってくるはず。いや、変わらなければならない。 ストーリーはドイツで起こった話として作られているが、実際には1971年にアメリカのスタンフォード大学で行われた実験がベースになっている。集めたアルバイトを2チームに分け、1つを囚人チーム、1つを看守チームに分け2週間、模擬刑務所で生活させたのだ。「フォックス・チャンネル」だったか、「ディスカバリー・チャンネル」だったかでも報道していた。 実験は1週間で打ち切られた。看守役と囚人役の間でトラブルが起きたという。具体的なことは言っていなかったが、暴力沙汰があったのかもしれない。 それに回答を与えてくれるのが、本作だ。映画を見始めたときは、やっぱりナチスの陰が感じられるなあなどと思っていた。日本にも七三一部隊という人体実験の部隊があったわけだが、ドイツだからなあと浅はかな知識で思っていたのだ。ところが途中で気がついた。そういえばテレビで見たのはアメリカの大学の実験だと言っていたと。ということは、ドイツだからこそ撮れたのかもしれない。 主演は、モーリッツ・ブライプトロイという人。「ラン・ローラ・ラン」でプレイクしたらしい。なかなか脂ぎったエネルギッシュな人。攻撃的に豹変してしまう看守のリーダーにはユストゥス・フォン・ドーナニーが案じている。 監督は、オリバー・ヘルシュピーゲルという人で、本作前までずっとテレビで活躍してきた。その実績が認められて本作が撮れたのだろう。この感情を揺さぶる手腕は高く評価されるだろう。ところで。日本語タイトルのesて何? スパイのことを指す隠語のエス? インターナショナル版英語タイトルも、オリジナルのドイツ語タイトルもそれらしい単語は入っていないが……。ある隠語では1950年頃「女学生の間にて、上級生が下級生の美少女を恋情的に愛すること」を言ったらしい。また「芸者」を指すとも言うし、覚醒剤もエスだしなあ。 公開7週目の初回、55分前についたらすでに開場していて、おかしいなと思ったらモーニング・ショーがあって、1回だけ別な作品を上映しているのだった。 ロビーには6人ほどが待っており、20代の女性が3人に、中高年の男性3人。この日も暑く、ロビーに入れたのは嬉しかった。35分ほど前から人が増えだして、30分前には30人くらいに。7対3で若い女性が多い。中高年はあまり増えず数人のみ。前回終了10分前、ロビーはほぼいっぱいになったのに、まだ整列もなければ案内もない。はたしてどうやって入場させるのかと思っていたら、ようやく5分前になって案内があった。こちらのドアからの入場になるとかだけだったが。 それにしても、ロビー全てが喫煙スペースになっているので、どこに行っても煙い。いま分煙は当たり前だと思うんだけど……。 入場した時点で、221席の4.5割ほどが埋まり、最終的には5割ほどに。 |