2002年9月22日(日)「サイン」

SIGNS・2002・米・1時間46分

日本語字幕:手書き下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ(Panavision)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
(米PG-13指定)

http://www.movies.co.jp/sign/index.html

居眠り運転の犠牲となって妻を失ったグラハム・ヘス(メル・ギブソン)は、信仰を失い牧師をやめた。6ヵ月後、自宅のトウモロコシ畑にミステリー・サークルが出現し、飼い犬が凶暴になり子供に襲いかかるという異変が起きた。それは町中で起こっており、さらに大きな事件の兆候にすぎなかった……。

73点

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 M・ナイト・シャマラン監督はブレイクした「シックス・センス(The Sixth Sense・1999・米)」以後、パッとしない気がする。「アンブレイカブル(Unbreakable・2000・米)」はどうなんだろう。本作は、悪くはないのだけれど、さらに話は広がらなくなり、こぢんまりとしたモノになってきた気がする。

 まあ考えてみれば「シックス……」だって、ほとんど1軒の家で起こっている小さな事件だったのだが、話の広がりという点で違った気がする。本作は全世界的な話になるのだが、主になるのは一家4人の話で……うーん。どうなんだろう。

 しかもミステリー・サークルから連想されるのがストレートでそのまんま。何のひねりもなし。今年、イギリスで作っていたグループがTVに登場し、すっかりバラしてしまったものだから、説得力もなくなってしまった。ひねりなしだから……。

 たぶん、シャマラン監督はこういったミステリーネタが大好きなのだろう。ミステリー・サークルだけではなく、南米で撮影された映像として出てくるモノは、かつてチュパカブラ(ヤギの血をすする想像上のモンスター)を撮影した貴重映像として放送された実際の絵にそっくり。たぶん意識して撮っているはずだ。

 「シックス……」と違って、どんでん返しもなく、そのまま話は進んで、どちらかといえば勝手に終わる。ようするに、これは家族愛の映画であって、信仰を失った牧師が信仰を取り戻すお話なのだ。そのきっかけとなるのが、このミステリアスなというかとんでもない荒唐無稽な事件なのだ。しかも「インデペンデンス・デイ(Independence Day・1996・米)」なみに大きく広げておきながら、展開はすごく狭く小さな範囲でしか起こらない。

 まあ、すべての起こる出来事は偶然などではなく、どんなに小さなことでもちゃんと意味があり、関連しているのだ、という考え方はいまさらという感じもする。ボクもよく感じることなので、否定する気はないが、こうやって描かれると安直な感じがしないか。

 シャマラン監督がヒッチコックを目指しているのはわかる気がする。本作でものっけのタイトルが文字だけの(しかも緑系を白バックに使うというかつてない大胆なデザインで)ソール・バス風だし、音楽もバーナード・ハーマン風。続くイントロが、スチルのような風景がチラッとゆがむといつの間にかカメラが窓から部屋の中に入ってきているというもので、これなどまさにヒッチ・タッチ。「サイコ(Psycho・1960・米)」の冒頭もこんな感じ。本家はズームでくるのだが。ダメ押しに自分自身がほんのちょっと出演までしているのだから、これはヒッチコック以外考えられない。

 といいつつも、ぜんそくの子供が薬なしに閉じこめられて発作が起きるというのはよくあるパターン。最近も「パニック・ルーム(Panic Room・2002・米)」で使ったばかり。うーん。
 サラウンド効果は非常に良好。銀座のデジタル館では、飼い犬がミステリー・サークルで吠える声が後ろに回るし、夜中の虫の声も周囲からわき起こる。それとファスト・フードの注文で「チキン・テリヤキ」と日本語が出るところがおもしろいところか。

 公開2日目の3回目、60分前についたのに銀座の劇場はすでにロビーに30〜40人の人。劇場の人が何も案内しないうちに、自然と列ができはじめた。

 男女比は半々で、場所柄か若いカップルがやたらに多い。時間帯も関係しているのかも。

 55分前に係員が列を作らせたが、長蛇の列。中高年は1/4ほどだろうか。ただ老人は少ない。

 15分前に開場というか入れ替えになって入った。17席×6列といつもより多めが指定席に。ぴあ席も1列ある。驚いたことに、10分前には指定席も含めてほぼ満席に。みんなこれで満足したんだろうか。キリスト教的にはショッキングな内容なのかもしれないが……。


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