2002年10月6日(日)「宣戦布告」

2001・ウィル・1時間46分

ビスタ・サイズ(ARRI)/ドルビー

http://www.sensenfukoku.jp/
http://www.toei.co.jp/sensenfukoku/index.htm

福井県・敦賀原発近くで北東人民共和国のものと思われる潜水艦が座礁しているところを発見された。乗組員の証言から特殊部隊が上陸したことを知り、政府は第六機動隊のSAT(特殊部隊)を派遣するが、重武装で公然と攻撃してくる相手に全く対処できない。ついに自衛隊の派遣を決定するものの、発砲許可が出せないまま、犠牲者がどんどん増えていく。総理(古谷一行)はついに武器の使用許可を出すが……。

72点

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 意外なことにハリウッド・テイストの政治ドラマ&アクションだった。有事立法、危機管理、政治的駆け引き……そういったいかにも話題になりそうな事柄をテーマに、よくぞここまで正攻法で作ったものと感心する。予算も日本映画にしてはたぶん破格の7億円。それなのにかかる劇場が東映のメイン館ではないが……。

 おもしろい映画だと思うが、7億の予算のほとんどはズラリと並んだ俳優さん達のギャラに消えたのか、この映画では重要な戦闘シーンにはあまりつぎ込まれていない印象。なんだかチャチ。SATもスナイパー・ライフルで山狩りするか?

 原発やAH1攻撃ヘリなどのCG合成がつらい。やっぱりこれが日本のレベルなのか。銃撃戦も、アップ・カットは排莢しているが、ほとんどは電着のまま。昔ながらの撃ち合いごっこが展開する。弾着はいい。かなりリアルで、血糊の飛び方などハリウッド・レベルと言っても良いのではないだろうか。さすがはビッグショット。

 もし、もっと予算をかけていたら……。監督は本当はやりたかったのではないだろうか。そんな気がした。そうでなければ、わざわざアップで89式小銃の排莢シーンを撮ったりしないだろう。排莢しない電着銃との差がかえって目立ってしまうのだから。それでもあえて撮ったのは、撮りたかったからだろう。もっとアクションとCGにお金をかけさせてあげればいいのに。SATや自衛隊員の動きもシロートっぽいし。

 イントロは海からカメラが東京の夜景めがけて接近し、街中に入っていくというもの。よくハリウッドで使う導入方法だ。ハッとした。日本映画らしくない入り方だなと。しかも夜景が生き生きとして、まるでニューヨークのような雰囲気で撮られている。東京の夜ってこんなに美しかったんだ。

 こうなった理由はあとでハッキリした。石侍露堂監督が(日本人だが)1995年から活動の場をアメリカに移しているせいなのだ。7年もいたらあっちのテイストが身に付くだろう。なるほどね。

 原作は麻生 幾の同名小説。私は読んでいないのだが、ほぼ映画と同じ内容であるようだ。北東人民共和国の特殊部隊員11人は何のために命をかけてやってきたのか、最後までわからない。北東人民共和国政府が彼らを派遣したいともさっぱりわからない。ただ、彼らが来たとき日本がどうなるのかをシミュレーションして見せたかったのだろう。決して悪くはないのだが……。

 普通に考えて、銃器を持って敵を追いつめていながら、銃器使用の許可が出ないということがあるのだろうか。つまり許可が出ないのなら、実弾を装填した状態で持っては出撃しないだろう。実弾を装填して出撃した以上は、銃器許可を前提に出るはずで、射殺は許可されなくても自身の身を守るために威嚇射撃くらいはできるのではないか、シロートなりにそんな気がした。敵を撃たなければいいのだ。近くの木とか石を撃つだけで敵の攻撃を阻止したり、和らげることはできるはず。実弾の装填された銃を持って右往左往するだけなんてバカ丸出し。ちっとも説得力がない。自分の命が危ないのに、撃てるようになっている銃を持っていながら撃たれるか。

 公開2日目の初回、銀座の劇場には40分前でも1人も並んでいなかった。オイオイ、いいのかなあ。さすがに35分前には10人ほどになったが。観客は中高年が中心で、若くて30歳というところだろうか。女性は2人しかいなかった。まあ、内容的に当然かもしれないが。

 30分前でおよそ20人ほど。20代が1〜2割程度。15分くらい前にやっと開場したが、早めに開場してドリンクやスナックを売った方がお得だと思うのだが。

 指定席無しの360席の銀座の劇場は、6.5割ほどの入り。これは日本映画としてはなかなかいい方なのではないだろうか。


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