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山本弥生(西田尚美)は、ギャンブルにはまり暴力をふるう夫(大森南朋)を思わず絞殺してしまう。思いあまった弥生は、夜の弁当工場のパートでいっしょの香取雅子(原田美枝子)に助けを求める。雅子は同じ弁当工場の“師匠”吾妻ヨシエ(倍賞美津子)に相談し解体して捨てることにするが、これまた同僚の城之内邦子(室井滋)に知られ、仲間に引き込むが……。 |
言わずと知れた桐野夏生の大ヒット作「OUT(講談社)」の映画化。当然映画化に当たっては、かなりの部分が変更されてしまうわけだが、本作の脚色にどれくらいの人が納得できるだろうか。感動というか、感情はすごく動かされたが、ボクはあまり納得できなかった。 弁当工場でのブラジル人の横恋慕がなくなっているのはOK。2時間で描ききれなくなってしまうだろう。しかし原作の「OUT」は、日常からはみ出す「OUT」と、どうにもならない現状からの脱出という意味の「OUT」という部分がいくらかあったと思うが、本作ではセーフの反対の「OUT」、捕まってお終いといったニュアンスを強めてあるような気がする。ピカレスクに近い小説だと思っていたのに、映画は脱出ではなくアウトで、露見して……ああ。 こういう不景気で辛い時期に、こういう行き詰まり煮詰まり、やる気を失わせてしまう話はあまり見たくなかった。正直なところ、原作通りいって欲しかった。 家庭崩壊にある雅子。家庭内暴力をふるうギャンブル狂の夫を殺した弥生。わがままな老人の介護の毎日を送るヨシエ。ブランド物が大好きでカード破産状態の邦子。そして、だれもが欠点を持ち、スーパー・ヒロインではない、いわば等身大のリアルな存在。そこがうまいといえば、うまい。説得力がある。しかし、だからこそファンタジーであってほしかった。 脚色は鄭義信という人で、過去に「月はどっちに出ている(1993)」「愛を乞うひと(1998)」などを手がけている。「五条霊戦記/GOJOE(2000)」には出演もしているのだそうだ。「月は……」はルビー・モレノも大評判になったが、ボクは見ていない。「愛を……」は予告編だけでお腹が一杯になってパスした。 監督はコメディ・ホラー「マリアの胃袋(1990)」で劇場監督デビューし、その後「学校の怪談」シリーズ1、2、4などを手がけた平山秀幸という人。コメディ気を残しながらのホラー系という作風は、本作でも発揮されている。人体解体という吐き気を催すシーンでも、緊張感たっぷりな中にリアル故のかなすな笑いが。計算したものなのだろうが、あまりに自然で、狙わずそうなってしまったかのようだ。うまい。 「殺し屋1(2001)」で泣き虫の殺し屋を演じた大森南朋が、一転して暴力亭主を好演している。ギャンブルへのはまり方がうまくて、ホントにこういうヤツっていると思わせてしまう。解体シーンでは全裸で(ボカシ入り。本当にスッポンポンになったのだろうか)死体を演じている。 同じく良いのは、街金のオーナーを演じる香川照之。ホントこの人は力が抜けいてい自然体、演じているという作為を全く感じさせない。 唯一の疑問は、劇中かなり重要なキー・ロールとなるやくざの佐竹を演じる間寛平。どうしてもギャグが連想されて、怖く思えない。怖くないと佐竹はこの物語でまったくの役立たずになってしまう。何かギャグをやりそうで、どんなに冷酷に暴力を振るっても演技にしか見えなくなってしまうのだ。演技どうこうの前にミス・キャストじゃないかなあ。 公開初日の2回目、予告が始まるころ劇場に着いたら、417席の場内はほぼ6割の埋まり具合。中高年が多い……というより老人が多い印象。オバサンも少し目立つか。男女比はほぼ半々。 なんだが、みんな1つおきに座っている感じ。埋まっているのはスキスキに見える。 それにしても、かつてレイトショー公開された「呪怨」という映画(ビデオ撮りだったらしい)が、フィルムでリメイクされるらしい。もともとの予告も怖かったが、新「呪怨」の予告もめちゃくちゃ怖い。とっても見たいが、こんなに怖くて本編がちゃんと見られるだろうか。夢見そう……コワイ……。 |