2002年10月26日(土)「スズメバチ」

NID DE GUEPES・2002・仏・1時48分

日本語字幕翻訳:手書き下、寺尾次郎/シネスコ・サイズ(Technovision)/ドルビーデジタル・dts

〈仏12指定〉
http://www.suzume8.jp/
フランス、ストラスブール近郊。7月14日のパリ祭の夜、ある窃盗団グループが倉庫襲撃に向かっていた。同じ頃、逮捕されたアルバニア・マフィアのボス、ネクセップ(アンジェロ・インファンティ)を特殊部隊の装甲車両で護送中、マフィアの一団に襲われ待避のため近くの倉庫へ突入していった。マフィアの総攻撃が始まる。

71点

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 誤解をかくごで一言で言えば、SFじゃない人間版「エイリアン2(Aliens・1986・米)」だ。基地に立てこもる人間達に向かって、感情を持たない凶暴な殺戮マシーンが襲ってくる。ほぼ密室となった巨大な倉庫は、そのまま惑星アチェロンの大気工場だろう。特殊部隊が登場するのは、宇宙海兵隊をなぞっていて、隊長のラボリ中尉が女性なのはリプリーだ。密室となった倉庫から助けを呼びにいくのに、地下へ続くパイプを使うが、これはビショップがドロップ・シップを呼びに行くシーンそのまま。

 警察官がギャングに包囲されて襲撃されるというのは、ジョン・カーペンター監督の「要塞警察(Assault on Precinc・1976・米)」の設定でもあり、「要塞警察」は西部劇の名作ハワード・ホークス監督の「リオ・ブラボー(Rio Bravo・1959・米)」をなぞっているのだから、もとをたどればやっぱり西部劇ということか。同じくジョン・ウェインが出た「アラモ(The Alamo・1960・米)」とも言えるし。

 西部劇は非常にたくさんが作られたため、ほとんどアイディアが出尽くしたとまで言われるほどで、たいていのストーリーはもとをたどると西部劇に至る。これはしようがない。あとは同じネタをいかに新鮮におもしろく見せるか、というところで。

 フローラン=エミリオ・シリ監督は、ミュージック・ビデオをたくさん手がけたベテランだそうで、影響を受けた映画としてたくさんのハリウッド映画、なかでも多くの西部劇、アクション映画を上げている。「エイリアン2」はないようだが、「リオ・ブラボー」「アラモ」「要塞警察」もちゃんと入っている。

 なにより、敵の襲撃部隊が赤外線暗視スコープ(?)を着けて現れるのは、どうみても押井 守監督の「紅い眼鏡(1987)」「ケルベロス 地獄の番犬(1991)」のプロテクトギアだろう。もはやパクリに近いと思うのだけれど、どうなんだろ。

 そういえば、冒頭、強盗グループは倉庫へ向かう車の中で、全員で「荒野の七人(The Magnificent Seven・1960・米)」(もとネタは当然、黒澤明の「七人の侍」)のテーマ曲を口笛で合奏(?)する。あまりその意味はわからないのだが、単に監督が好きと言うことか。ミュージック・ビデオの監督だし(劇場映画は本作が2作目、1作目は日本未公開)。

 ドラマを売りにしているようなことを言っている割には、キャッチは「12000発喰らえ」だから内容は想像できるだろう。

 フランス映画ということで、登場する銃器もちょっと珍しいものになっている。定番のイスラエル製ウージー・サブマシンガン、オーストラリア製AUGアサルト・ライフルのほかに、おそらくスイス製の(短時間で確認できなかった)SIG SG551アサルト・カービン、フランスの制式軍用ライフルFA MAS、イタリアのベネリNovaポンプっぽいショットガン、アメリカのM4カービン……などなど。

 ラストは予算が尽きたのか、ちょっとショボかった。警察のヘリはCGのようだし、ラストなのに大爆発もない。その前兆はあるのに、ドカーンといかないとは……。カタルシスが……。しかもスタッフ・ロールが残っているのに音楽がなくなっちゃうし。せめて最後まで音楽は当ててほしかった。ヨーロッパ映画ではときどきあるんだけれど。どうも寂しくていけない。

 公開初日の初回、けっこうTVで宣伝していたので用心して55分前に行ったら、渋谷の劇場には誰もいない。あれれ……。45分前になってやっと3人。オヤジ2人に、30代前半とおぼしき男性が1人。てっきり若い人が見る映画かと思ったが。

 30分前になってそれでも10人くらいになった。20代の男性が2人、20代の女性が1人、30代男性1人、あとオヤジというところ。それとたぶん映画の配給会社の人らしい、列に並ばない怪しげな10人くらいの集団。彼らだけ若い人が多いので異様な感じだ。

 20分前に開場したものの、どうやら案内がないので初回から指定席があるようだ。千鳥配列でやや後方よりに設定された指定席は9席×2列。

 最終的に374席に70人ほどの入り。1/3が割引のある老人で、1/3がオヤジ、フランス映画らしく若い女性がどうにか1割、6〜7人。おばあさんとオバサン、若い男性は少々。

 たぶん都内唯一のデジタル・サウンドでの上映館だと思うが、音は良いものの、空調の設定がおかしいのか、かなり寒かった。

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