2002年10月27日(日)「トリプルX」

XXX・2002・米・2時04分

日本語字幕翻訳:手書き下、菊池浩司/シネスコ・サイズ(レンズ、Panavision)/ドルビーデジタル・dts・SDDS

〈米PG-13指定〉
http://xxx-triplex.com/
エクストリーム・スポーツの伝説的ヒーロー、ザンダー・ケイジ(ヴィン・ディーゼル)はアメリカNSA(国家安全保障局)の潜入エイジェントが射殺されたことからあたらしいエイジェント候補として、アウグスト・ギボンズ(サミュエル・L・ジャクソン)によって様々なテストを受けることに。やがてパスしたザンダーは、チェコ共和国のプラハへ派遣された。そこには国際的テロリスト「アナーキー99」の一味がいた。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 これまた一言で言い切ってしまうと、アメリカ人が007映画を作るとこうなる、という映画。比べてみるとアメリカとイギリスの違いが(わかりやすすぎるが)出ていて、おもしろい。

 本家イギリスの007は、だいたいいつもネクタイを締めてスーツでビシッと決めている。敵を殴り倒した後タキシードで上流社交界のパーティに出たりする。一方、本作の主人公ザンダー(XanderとうぜんXから始まる)はTシャツに銀のネックレス、その上にいきなりボア・ライナーのでかコート。体の至るところに刺青を入れている。クビにはエクストリーム・スポーツの象徴らしきXXX(アメリカの本番H映画の記号でもある)も入っている。

 使う銃だって007は小型のワルサーPPKなんてしゃれていて、それでも最近ワルサーP99になったものの、かたやザンダーはS&W.44マグナム(!)のコンバット・カスタム。Cモアのオプティカル・サイトがついて、でっかいマズル・プレーキまでついている。このゴツさ、大迫力。

 007のボンド・カーはロータス・ヨーロッパだったり、BMWだったり、アストン・マーチンだったりしてオシャレだが、ザンダーは1967年型GTOマッスル(プログラムより)というクラシック・カーでシブイ路線。それでも、ちゃんとロケット・ランチャーとか火炎放射とか射出座席とかはちゃんとついている。

 もちろん武器開発の“Q”に相当する人物もいて、トビー・リー・シェーバース(マイケル・ルーフ)がそれ。なかなかオタッキーないい味を出していて、シリーズ化されれば大活躍しそう。“Q”では考えつかないようなとんでもないものを作ってくれそうだ。今回は、強度を調整できるX線カメラ機能を持った双眼鏡を提供してくれる。しかも最初のテストの被写体は女性エイジェントで、近くで射撃訓練をしている。X線を弱くするとヌードが見え、強くすると骸骨が見えてしまう。こんなの1つ欲しいと真剣に思しいなあ。

 物語がうまいのは、主人公が警察に逮捕され刑務所に入れられそうになりそれと引き替えにエージェントになることを強いられるわけだが、本当のワルではなく反骨精神のあるプチ悪だという点。観客はそれが許せるし、彼を見放したりもしない。

 ザンダーを演じるのは、「プライベート・ライアン(Saving Private Ryan・1998・米)」で少女を助けようとして狙撃されるイタリア系の兵士を演じ、「ピッチブラック(Pitch Black・2000・豪米)」では好印象を残し、最新作「ワイルド・スピード(The Fast and The Furious・2001・米)」で、ワルのようでいて実はいいヤツという本作に近いキャラクターを演じて好評だったヴィン・ディーゼル。

 相手役のちょっと危ない女は、あのイタリア・モダン・ホラーの旗手ダリオ・アルジェント監督の娘、アーシア・アルジェント。「デモンズ2、3(Domoni 2・1986・伊/La Chesa・1989・伊)」などに出ているらしいが、日本での知名度は今ひとつ。なんと使っている銃がユニークで、おそらく南アフリカのベクター・モデルCP1。似たスタイルにベレッタの9000Sがあるが、銃身が露出していなかったと思うので、ベクターだろう。しかも2挺拳銃だから恐れ入る。

 監督は、TVの「マイアミ・バイス(1984)」シリーズを手がけ、その後「ドラゴン/ブルース・リー物語(Dragon : The Bruce Lee Story・1993・米)」、CDドラゴンが強烈だった「ドラゴンハート(Dragonheart・1996・米)」、スタローンのトンネル脱出話「デイライト(Daylight・1996・米)」、「ザ・スカルズ/髑髏の誓い(The Skulls・2000・米)」「ワイルド・スピード」といった劇場話題作を撮り続けている職人監督。

 まあ、サミュエル・L・ジャクソンはいうまでもなくいいが、共演者の強烈さにちょっと印象が薄かった感じ。

 公開2日目の初回、9時35分からという早い時間の上映だったにもかかわらず、55分前ですでに1人。しかし、その後が伸びず、35分前になってやっと4人。これはどうしたことだろう。本家007なら100人は並んでいるんじゃなかろうか。

 新宿の劇場は30分前に開場したが、この時たったの8人。うち6人が白髪の初老の方々。なんてこったい。そうなのか、こういう映画なのか。

 どうも朝早すぎたためか、指定席なしの406席に50人くらいはなんとも寂しい。若いカップル少々と、オヤジ、そしてご老人とは。ボクとしては朝早い方が、そのあとの午後を広く使えるから嬉しいんだけどなあ。


1つ前へ一覧へ次へ