2002年11月16日(土)「ラスト・キャッスル」

THE LAST CASTLE・2001・米・2時12分

日本語字幕翻訳:手書き下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(レンズ、Panavision)/ドルビーデジタル・dts・SDDS

〈米R指定〉

http://www.uipjapan.com/lastcastle/

キャッスルとあだ名される米軍刑務所に、一人の男が護送されてくる。名前はユージーン・アーウィン中将(ロバート・レッドフォード)。刑期10年で、一般兵士と同じ房に入れられることになっていた。ウィンター大佐(ジェームズ・ガンドルフィーニ)は伝説のユージーン中将のファンだったが、考え方が全く違いことごとく衝突することになる。

74点

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 泣いた。3回も泣いた。久々に感動した。よくある刑務所ものなのだが、うまい。巧妙なストーリー展開と魅力的な登場キャラクターで、2時間12分を一気に見せてしまう。予告である程度の予想はしていたが、こんなにおもしろい話だったとは。嬉しい誤算。まあ、ロバート・レッドフォードが出るとだいたいおもしろいと、そういうこと。

 刑務所の話は繰り返し映画化されていて、2つのパターンがある。1つは脱獄する話で、もう1つは反乱を起こす話。これらがよくある。だから「グリーンマイル(The Green Mile・1999・米)」には驚かされたわけだが、たいていはスティーブ・マックィーンの「パピヨン(Papillon・1973・仏)」だったり、ポール・ニューマンの「暴力脱獄(Cool Hand Luke・1967・米)」だったり。「ショーシャンクの空に(The Shawshank Redemption・1994・米)」ってパターンもあったか。

 よくあるパターンをおもしろくするのは、演出にもあるがやはり絶妙な配役によるところも大きい。もちろん演技のうまい名優という条件は必要だが。とにかくレッドフォードの持つ人の良さのようなものがまずベースで、対する悪役は徹底的に悪い方がいい。しかもマンガのようなコテコテの悪ではなく、実在感のある身近にいそうな徹底したワル。プラス、身内の憎めないヤツの死。そしてどんでん返し。これらが全部入っている。さすがに2時間では収まらず、2時間12分となったが、ちっとも長いと感じさせない。むしろアッという間。

 その敵役を演じるのが、ジェームズ・ガンドルフィーニ。つい最近「ザ・メキシカン(The Mexican・2001・米)」で気のいい殺し屋を演じていた人。実戦経験がない大佐(レッドフォードの中将に対して2階級下。しかもレッドフォードは常に前線にいた)は、戦争関連のレア・アイテムをコレクションしている。

 身内の憎めないヤツに、訥弁(とつべん)のアギラー伍長(クリフトン・コリンズ・Jr.)。彼が一番最初に禁じられている敬礼をレッドフォードに対して送る男。そのたろに所長の怒りを買い独房に入れられてしまう。実直な感じが何とも言えずいい。しかし、この前に「トラフィック」とか「タイガー・ランド」で出ているのだが、まったく印象に残っていない。本作がブレイクのきっかけとなるか。

 劇中、ロバート・レッドフォードがアギラー伍長に敬礼の意味を教える。中世、騎士たちは甲冑を身につけヘルメットを深くかぶっていたので、道で騎士同士が出会うと、ヘルメットの縁を右手で持ち上げて、顔を見せてあいさつした。その名残りなのだと。

 開巻一番に語られるのは、「城(キャッスル)」の定義。4つの条件があって、1つは周りを見渡せる高台があること。2つ、それを守る大きな壁があること。3つ、城を守る兵士がいること。4つ、旗があること。そして、この城は人が入ってくるのを防ぐのではなく、中の人を外に出さないようにしているのだと。

 さらに知識としてもう1つ、砦の旗を逆さに掲揚するとSOSを意味するというこれがラスト効いてくる。

 これら軍の知識がちりばめられているのは、脚本のグラハム・ヨストに軍隊経験があり、監督のロッド・ルーリーが名門ウエストポイントを卒業していることのおかげだろう。とにかく必見。お勧めです。

 ラスト、話はいきなり大アクション・スペクタクルとなって、激しい戦闘が展開される。こうなると実戦経験がある方が圧倒的に強い。刑務所乗っ取りを企てるレッドフォードは、いったいどうやって監視タワーを奪い、放水車を止め、ヘリを沈黙させるのか。見所満載。

 公開初日の2回目、35分前に着いたらロビーには6〜7人のオヤジのみ。あれれ、ロバート・レッドフォードなのに、女性0? さすがに歳を取ったということか。でもオバサンはいてもいいと思うんだけど。

 15分前に入れ替えになったが案内はなし。いいの適当に入っちゃって。この時点で白髪が目立つ。中年より高年(老)が多いってこと? だいたい30人ほど。20代カップルが1組、中年カップルが1組、女性は全体で5人いただろうか。まあ、男のドラマだけど。

 最終的に若いカップルが2〜3組増えて、360席に3.5割ほどの入り。ちょっと寂しいんじゃない。いい映画なのに。


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