日本語字幕翻訳:手書き下、菊地浩司/シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル・dts・SDDS
〈米R指定〉
FBIプロファイラーのテリー・マッケーレブ(クリント・イーストウッド)は、連続殺人犯を追跡中、心臓発作で気を失ってしまう。2年後、引退して心臓移植手術を受けたテリーが退院すると、彼の住居であるボートに女性が訪ねてきて、1枚の写真を見せ、犯人を捜して欲しいと言うが……。 |
久々にほとんど予告も広告もされずにいきなり公開された映画を見た。しかも2週間後には次の上映作品が決まっており、つまりはつなぎ? えーっ、クリント・イーストウッドの作品なのに。なんと、前売り券なし。つまり当日1,800円だけなのだ。これは高い。デジタルDLP上映でデジタルEX6.1サウンドでスタジアム形式のドリンク・ホルダー付き大劇場での上映なら1,800円でもいいが……。ただのデジタル・サウンドというのなら1,500円というところだろう。アナログ館だったらせいぜい1,300円というところではないか。 まあ、とにかくイーストウッドの映画ということで、1,800円の大金を払って見た。なかなかおもしろい。ただ、話がちょっとこぢんまりとしていて、物足りない気がする。ちゃんとラストの銃撃戦はあるけれど、もうひとつ派手さにかける。まあ御歳72歳なのだからここまでできる方が驚きなのであって、これ以上を望んではいけないのだろう。でも、若手の刑事と一緒に協力して犯人を追うとかして、もうちょっと激しいアクション・シーンを見せて欲しかった。 連続殺人犯が使う銃はH&K社のUSPかと思ったのだが、台詞ではP7だと言っていた。通称スクウィズ・コッカー。この台詞に意味があり、あとでちゃんとそれが明かされる。犯人はなぜこの銃を選んだのか。そこから犯人像が明らかになっている。H&KのP7は高価だと。犯罪を犯してお金を得ようとする者がそんなに高価なビストルは買わないだろうと。 イーストウッドが持っている銃は、引退する前はFBI指定のオートマチックだが、引退してからはなぜかリボルバー。やっぱり「ダーティハリー(Dirty Harry・1971・米)」へのオマージュなのか。しかも、そのへんにあるぶら下がりの量産品ではない。S&W社内にあるカスタム・メイド部門「パフォーマンス・センター」が作ったカスタム(特注品)だ。口径は、.38口径(.357マグナム弾も使える)の8連発。その名もS&W M627。たぶん銃身長は2.5インチか3インチ。フルーテッド・シリンダー。ホーグ・タイプのゴム・グリップが付き、バレル側面はフラットに仕上げられている。しかもエジェクター・シュラウドは右面に小窓が開けられているという懲りよう。 防犯ビデオに映る犯人は、殺人を犯した後、はじき出された空薬莢を回収してから逃げている。この辺がちゃんとリアルな設定で、いかにもイーストウッド演出といった感じ。たぶんH&Kの銃を選んだのもイーストウッドだろう。ちなみに空薬莢のことは「ブラス」と呼んでいた。材質が真ちゅうなので、そう呼ぶのだろう。 それから、イーストウッドは船で暮らしていて、しかも引退しているのでインターネットがない。っていうかパソコンもない。そこで調べものは図書館へ行くのだが、本で調べるのかと思いきや、図書館にあるパソコンからインターネットに接続して調べものをするのだ。なるほど、アメリカの図書館ってこうなっているのか。きっと無料なんだろう。便利だなあ。 公開2日目の初回、新宿の劇場は午前中「ハリボタ2」のたぶん吹き替え版を上映していて、午後から本作という、まさにつなぎ的扱い。これはちょっとイーストウッドに対して失礼じゃないの。まったく。 60分前には0だったが、50分前に、20代後半と30代前半の男性とボクの3人。40分前で20人くらいに増え、15分前にようやく開場したときでおよそ35人ほどに。女性は非常に少なく、2割いたかどうか。ほとんどは中高年男性だった。まっ、かつて「ダーティ……」などでイーストウッド・ファンになった人たちなのだろう。 予告なしの上映で、ついでに初回のみ全席自由。でもなぜかこの劇場の場合、11席×3列+11ぴあ席にはあまり多くの人が座ろうとしなかった。 上映途中で、どこかのバカオヤジの携帯が鳴り、普通すぐに廊下へ飛び出していきそうなものだが、どうどうと話し始めたのには驚いたし、シラケた。なんてマナーの悪さ。最低だ。こう悪いことばかり重なると、やっぱりこの作品の評価も無意識のうちに悪くなってくる。やれやれ、さんざんな週末だ。 |