日本語字幕翻訳:手書き下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、Panavision)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
〈米PG-13指定〉
1961年、米ソの冷戦まっただ中、ソ連もアメリカに対抗して原潜を就航させ、核弾頭ミサイルの発射実験を決行した。しかし、届けられる不良部品、無能な整備員、正確に伝わらない連絡網、不満のたまっているベテラン、現場を知らない新人……といった様々な悪条件が重なり、原子炉から冷却水が漏れ出す事態に陥る。 |
ラジオやテレビからひっきりなしに「愛」「愛」「愛」……というものだから、てっきりラブ・ストーリーになっているのかと思ったら、かなり骨太な男だけの世界のお話。だって潜水艦なんだから、普通、男だけでしょ。すごいのは、この話が実話に基づいていると言うこと。1961年にこんなに恐ろしいことが起こっていたんだという恐ろしさ。 本来ならそう宣伝すべき映画なのだ。かつて、こんなに恐ろしい事件があり、関係者は全員、生涯にわたって事件を口止めされ、闇に隠されていたのだと。共産体制が崩壊したことによって、ようやく明るみに出ることになった。そのことをこそ宣伝すべきだし、映画もそれを強く謳っている。 女性監督が作った映画で、女性がほとんど出てこない、男臭い映画なので、あえて裏をかいてラブ・ストーリーとこじつけたのか。人類に対する愛だ、祖国に残してきた愛しい人への愛だというのは、単なる言い訳だろう。こういう宣伝はいけないと思う。観客をたばかることだ。ひいては徐々に観客を失うことになってしまう。 途中まで、なかなか力強い演出で張りつめたシーンが連続する。男のドラマを男っぽく演出するとはさすがキャスリーン・ビグロー監督。ジェームズ・キャメロン監督と結婚していた頃SFの「ストレンジ・デイズ」や「(Point Break・1991・米)」女性警官の活躍を描いた「ブルー・スチール(Blue Steel・1990・米)」など、太い線でグイグイ描いていくような演出で知られる監督。「ハートブルー(Point Break・1991・米)」は今ひとつの感もあったが、「ニア・ダーク/月夜の出来事(Near Dark・1987・米)」などは秀逸。ひょっとしたら男勝りなのかも。 この映画の欠点の1つは、ロシアの話なのに、何の工夫もなくいきなり全員が流暢な英語を話してしまうこと。いくらロシアなまりの英語だとしても。この違和感は、アメリカ人は感じないのかもしれないが、少なくともボクはダメだ。中国人を日本人が演じ、日本語で作った「敦煌(1988・日)」のようなもの。今ひとつ楽しめない。それでも、メラニー・グリフィスとマイケル・ダグラスが出演した第二次大戦もの「嵐の中で輝いて(Shining Through・1992・米)」のようにドイツ語で話していたものが徐々に英語になっていく、というのなら受け入れやすいのだが。 最大の問題点は、人類を核戦争の危機から救おうと、各乗組員がそれぞれにがんばっているのに、ラストのラストでどんでん返しのようにハリソン・フォードがいいところをゴッソリと持っていくこと。これで、みんなの努力と血と汗の結晶があっさりと吹き飛んでしまう。一体なんだったのかと。これじゃ、まるで「ジャスティス(Hart's War・2001・米)」と同じじゃないか。ついにハリソン・フォードも行くとこまで行ったか。 気になったのは、潜水艦の航行シーンなどCGを多用しているらしいのだが、そのカメラ・アングルがどれも今までにない(あざとい)ポジションなので、せっかく実話をベースにしていながらいかにも作り物という感じがして、まるでマンガのようだった。ちょっとやりすぎなんじゃないかなあ。 ちなみに、艦内に用意されている拳銃は、代表的なソビエト時代からのマカロフという自動拳銃(オートマチック・ピストル)。共産圏の民主化でこれらの銃も、かつては厚いベールに包まれていたのだが、どんどん西側に紹介されている。 それにしても、製作費が125億円で、ずっとしかめっ面のハリソン・フォードの出演料が30億円というのはどうなんだろう。確かにハリソン・フォードが出たことで映画に厚みが増したことは事実だが、ほとんど動かないハリソン・フォードが見たくてこの映画を見に来る人がどれだけいるだろうか。日本じゃ彼の出演料だけで普通の映画が30本は作れるんじゃないだろうか。 公開初日の初回。50分くらい前についたら、654席の銀座の劇場はすでに35人ほどの行列が。ハリソン・フォードもはや60歳。そのせいか並んでいるのもほとんど中高年。下は中学生くらいからいたが、中心はオヤジ、オバサン連。男女比はほぼ半々だった。 35分前になってチケット窓口がオープン。この劇場は初回を除いて全席指定で、なおかつ、前売り券でも必ず当日券と交換しなければならないから、この窓口に並ばなければならない。つまり前売り券とは、この劇場では単に安く入手できるというそれだけの意味しかない。 20分前に開場。通常この劇場はもっと早く開くのだが、シネコン形式で併設している小劇場がちょっと前に開場しているため、2館の客が混じらないよう(インチキしないよう)観客を分けるためにこんなことをしているらしい。だったら入り口を別にしろよ、と突っ込みたくなるのはボクだけか。この時点で654席の3.5割ほどが埋まった。 初回のみ全席自由で、17席×1列だけがカバーがかかっていたが、ここもOK。なんでもプレミアム・シート(2,500円)というのがあるらしいが、それはどれなんだ。 最終的に6割の入りはまあまあか。配給会社の人たちか、ちょっと怪しげなグループが6〜7人いて気になったが、取材カメラ(ビデオ)いて撮られるのが嫌だなあと思っていたらすっかり怪しいグループのことを忘れてしまった。 |