日本語字幕翻訳:手書き下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(ARRI)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
〈米R指定〉
1864年、ニューヨークのファイブ・ポイント地区の支配権をめぐって、アメリカ生まれの集団「ネイティブス」とアイルランド移民の「デッド・ラビッツ」がその後の運命をかけた戦いを始めようとしていた。そして「デッド・ラビッツ」のリーダー、カトリックの神父ヴァロン(リーアム・ニーソン)は、「ネイティブス」のリーダー、肉屋のビル・ザ・ブッチャー(ダニエル・デイ=ルイス)によって殺される。ヴァロンの幼い息子アムステルダムはそれを目撃し、父を殺したナイフを奪って逃げ、少年院に入れられてしまう。16年後、出所してきたアムステルダム(レオナルド・ディカプリオ)は、復讐のため町のボスとして君臨するビルの組織に入り込む。
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長い。長いが、感覚的には2時間15分くらいの長さか。これまたラブ・ストーリーとしてPRされていたようだが、もちろんそうではなく、史劇に近い。ニューヨークはこうして作られてきたのだと。そして、その中心となっていたところがマンハッタン島の南端から少し北にあるファイブ・ポインツで、マルベリー、ワース、クロス、オレンジ、リトル・ウォーターの通りが交わる五差路、それも“グランド・ゼロ”の近くだったと。 映画が終わって、後ろに座っていた女の子の二人連れが「ラブ・ストーリーじゃないじゃん」。まったくその通り。あまりの暴力表現で、気分が悪くなるほどだ。それも銃と言うよりは、ナイフ。包丁や斧や棍棒や、そんな原始的な武器だ。それゆえに結果はより恐ろしい。人々は血だるまになり、路面は流れた血で一面真っ赤。 それを暗示するかのように、映画は男がひげを剃るアップから始まる。いつ喉を切ってしまうかハラハラするシーン。 ファイブ・ポインツはニューヨークの中でも貧しい人々が住んでいた地区で、1820年ころから大飢饉を逃れてきたアイルランドの移民が非常に多かったという。それで、早くからそこにいた人々と、新しくやってきた人々が対立し、血を血で洗うような戦いの歴史があったと、この映画は教えてくれる。ほとんど無法地帯で、警察さえもが信用できず、南北戦争(1861〜1865)が始まると移民のほとんどが北軍の兵士として徴兵されていったと。しかし300ドル支払える者たちは徴兵を逃れることができたので(後に改正される)、貧しい人々の怒りはさらに高まっていった。それはついに暴動にまで発展する……。 ニューヨークは、なんと血塗られた歴史を持つのだろう。いや、本当は人類の歴史すべてが血塗られたものなのかもしれない。激しい貧富の差、人種差別。五番街で金持ちたちはビリヤードなどして楽しんでいる。その時、貧しい人々はわずかの金を巡って殺しあっている。この映画を見ると、人類の歴史は殺しあいの歴史だと言う気がしてくる。うーん、すごい映画なんだけど、これを年末に見て暗くなるってのはどうだろうか。 1年も完成が遅れて待たされ、「タイタニック(Titanic・1997・米)」から5年、あの感動をしのぐ超大作と宣伝されているが、出来事のすごさに圧倒されるものの、いわゆる「タイタニック」的感動はない。まったく違う種類の映画なのだ。そう、史実に基づいたギャング映画と呼ぶのがふさわしいかも。「ゴッドファーザー(The Godfather・1972・米)」が近いような。警察署長も理髪店で喉をカミソリでかききられて死んだし。 公開初日の初回、60分前についたら新宿の大劇場は11人が並んでいた。オヤジが4人、20〜30代の男性2人、中学生らしき女学生5。50分前に15人ほどになり、30分前開場した時には60〜70人に。寒い日だったので助かったが、もっと早くても良かったんだけど……。 指定席が初回からあり、10席×4列×左右にぴあ席10席×左右がカバーがかかっていた。しかし最終的に埋まったのはぴあ席7のみ。しかも本当に料金を支払った人だけなのか不明。上映が始まってから入ってきた場合、よほどのことがなければチェックにこないので、指定席に座ってもOK。ってことは、すでに指定席のシステムって破たんしいてない? 通常の入場料金1,800円に対して2,200円とか高いのも問題なのだ。プラス200円くらいなら、まだしようがないかくらいで済むかもしれないけど。 最終的には1,288席の3.5割ほどしか埋まらなかった。まあ内容が内容だからしようがないか。それでも、2/3は若い女の子で、ディカブリオ・ファンなんだろう。女性は下は中学生くらいから、上は白髪のおばあさんまで。以外にオヤジは少なかった。あまりにラブ・ストーリーを言い過ぎたんじゃないだろうか。むしろ潔く叙事詩といってしまえばオジサンたちは来たかも。 |