2002年12月23日(月)「めぐり逢う大地」

THE CLAIM・2000・英仏加・2時01分

日本語字幕翻訳:手書き下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル

〈英15指定〉〈米R指定〉

http://www.meguri-au.com/

1867年、カリフォルニア州シエラネバダ。山あいに身を寄せあうように建物が密集する人口1,200人ほどの小さな町「キングダム・カム」があった。かつて金鉱で栄えたこの町も、金が出なくなると寂れはじめ、新しい文明の利器「鉄道=パシフィック・セントラル」に人々の希望がかかっていた。やがて鉄道の測量員と母娘が「キングダム・カム」二やってくる。

71点

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   1つの時代が終わり、また新しい時代が始まる。繰り返し演じられてきた人類の歴史。栄枯盛衰。驕れるものも久しからず、ただひとえに風の前の塵に同じ、それにしても暗い映画。あんまり年末には見たくない。西部開拓時代にはこんなことがよくあったはず。いや、現代でもそれは同じ。町は起こり、そして消えていく。

 なんと暗い話なんだろう。監督の名前(マイケル・ウィンターボトム)どおり、ウィンターで、ボトムなお話。時代背景は西部劇の時代なのに、映画の間中ずっと冬。空はどんよりと曇り、見渡す限りモノトーンな世界しか見えない。そしてどん底のドラマ。なにしろ主人公は自分が金鉱で一山当てたいがために、採掘権(Claim)を得る代わりに妻子を売るという考えられない行動に出るのだから。

 買う方の男はつい最近、金鉱を発見したばかりだが「金などあっても、女がいないとダメだ」と狂ったように主張する。娘の名前はホープだし。ところが、展開する話はそれを裏切るようなことばかり。ちょっと狙いすぎなのでは? 2000年の作品なのに、やっと公開されたという理由はここか。

 もちろん文学的な香りはぷんぷんする。それを望んで見に来る人にはいいのかもしれない。原作者のトーマス・ハーディのファンだとか、原作を読んで感動したとか。でも、1本の映画としてみたとき、どうなんだろう。暗く、単調なリズムが眠りを誘う。途中何度か気を失った。

 新しい町と結婚という2つの未来を感じさせる出来事さえも悲観的に見えてくるエンディング。おそらく、何のとりえも産業もないこの町は廃れるだろうし、結婚しても待ちかまえているのは困難だけだろうというような、ある種の諦観。悲しみを超えた、ペシミズム。

 ラスト、廃屋におそらくあるであろう金に群がる人々の姿をカメラは俯瞰でとらえ、上昇していく。神の視点だろうが、おそろしく醒めている。うーん。

 西部劇らしく、ライフル銃はウィンチェスターM66イエローボーイやM73が登場する。リアルなのは、それらと前装銃(おもに拳銃)が混じっていること。実際、みんなが最新式銃を買えたわけではないのだ。特にこんな山深い小さな町では。

 公開8日目の初回、日曜・祝日の朝1は当日券1,000円なのに前売りで並んだ。35分前に新宿の劇場に着いたら、オヤジが2人。30分前になって開場したときで6〜7人というのは、良いほうなのか、悪い方なのか。

 最初は男女比半々で、全員オジサン・オバサン以上。上映が近づくにつれ、20代らしき男女もチラホラと。でもかなり高齢の方もきたので平均年齢は変わらないかも。最終的には指定席無しの細長い224席に5〜5.5割ほどの入り。やや女性が増え、男女比は4対6ほどに。

 来場記念プレゼントは、いい香りのする小さなロウの粒が入った小箱。何に使うんだろう。お香みたいなもの? ま、いいか。


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