2003年1月13日(月)「T.R.Y. トライ」

2002・東映/角川書店/フジテレビ/電通/アイ・エヌ・ピー/SIDUS HQ・1時44分

日本語字幕:写植下/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル


http://www.try-movie.jp/
(全国劇場案内もあり)

1910年頃の中国・上海。清朝政府の転覆を謀る革命グループ「中華黎明会」の関(グァン/邵兵)は武器をそろえるため、日本人詐欺師の伊沢修(織田裕二)を雇い、中国進出を狙う日本陸軍の武器を奪う計画を立てていた。伊沢はしぶしぶ引き受け、仲間とともに調査を開始するが、計画があまりにずさんであることを知り愕然とする。

70点

1つ前へ一覧へ次へ
   まあ、要はのれるかのれないかという問題かもしれない。残念ながらボクはのれなかった。のれればアラは見えなくなるし、のれないと些細なアラも気になるわけで……。

 中盤はなかなか面白い。しかし導入部とラストはどうか。アバン・タイトルはとても同一人物が撮ったとは思えないほどで、同じ監督が撮った「ゴジラ対ビオランテ(1989・東宝)」の冒頭部分に匹敵する。カット割りも古臭く、まるで昔の映画を見ているようだ。中盤はそんなことないのに、どうして?

 そして、革命にかける情熱や真摯さに打たれて日本軍をだます話でありながら、結局、中国人からも韓国人からも頼りにされ信頼される日本人という構図がどうにも鼻につく。もし、これが実話であって、その主人公のダークな面も描かれているのであれば、感動の話として受け入れられるのだけれど。あまりに主人公は良いやつで、あまりに存在感が希薄。ただエンターテインメントのためだけに作り出されたキャラクターという感じ。大人向きにはどうなんだろうか。

 中国で撮影しているので、マキシムらしき水冷マシンガンが出てきたときは本物かと期待したんだけど、連射しても弾薬ベルトは微動だにしない。そう、電着。上海の謎の中国人便利屋(夏八木勲)の倉庫にモーゼル・ミリタリー・ピストルや南部十四年式拳銃が何挺もあるのに、一度も火を噴かない。大量の三八式歩兵銃も出てくるのに火を噴かない。つまり火を噴くのはアバン・タイトルのあの電着1度だけ。わずかに数発、ボルト操作もしない革命少女のアイリーン(ヤン・ローシー)のライフルから発射されるだけ。この彼女、思わせぶりで、ちっとも恋愛に発展しないわけで、なんで登場してきたのか。

 しかも、劇中、西太后が死んだと言っているので1908年以後ということになる。そして新朝政府がまだ倒れていないのだから1911年の辛亥革命以前と言うことになる。十四年式は制式採用されたのが1925年で、しかも出ていたのはダルマ形トリガー・ガードの後期形なので、1939年生産タイプ。この物語の時代には存在しない。ロシアのライフルもモシン・ナガンというよりは、イギリスのリー・エンフィールドっぽかったし……。

 映画はよく省略という手法を使う。ドラマではそれが時間の経過を表すこともあるし、物語をスムーズに進行させるためであったりもする。さらにはそれによって無い部分を観客に想像させて、より深い理解を促すこともある。しかし、これはドラマ部分に使うべき手法であって、アクション部分に使うべきではないだろう。場合にもよるが、アクションは実時間以上をかけて細かく描くことが多い。それは、極限状態では人間の脳がものすごく早く回転して、時間がゆっくりに感じられるという状態を描いていると言われている。だからスローモーションを使う監督が多いのだ。なのにこの映画の監督はアクション・シーンで描くべきところを省略している。そのため実にあっさりそっけないアクションに仕上がっている。うーん。

 物語進行上からか、かなり無理のある設定が多い。詐欺の相手を見送った直後、全員で歓声を上げたら気付かれるだろうし、思わせぶりで出で来た登場人物が途中でいなくなるし……。いいのかなあ。

 ラストにも?が多い。だって、奪った武器を貨車から箱ごと降ろすことをしないで、1挺1挺近くにいた人に手渡すのはおかしいでしょ。こんなことしていたら時間がかかってしようがない。まず箱ごと降ろして、どこかに隠すべきでしょ。

 機関車で逃げ出して最初の機関車と正面衝突しそうになったところをギリギリかわして、次にぶつかるのがまた機関車(それも止まっている)というのもないでしょ。最初のをかわす意味がないじゃん。せめてどこかに違いがあれば許せるけど、同じだもんなあ。工夫なしかよ。それにその程度で爆発するのはおかしいでしょ。実際に機関車通しをぶつけるモノクロの実写フィルムがあるけど(結構有名なやつ)、あれだって水蒸気が吹き出て脱線転覆するするだけ。銃の弾薬は衝突の衝撃で爆発したりしない。もしその程度で爆発していたら、兵士は走るたびに大けがを負うことになる。ああ、もうきりがないのでやめ。

 絵はいい。濃厚の色ののりは最近のビデオっぽい浅い色と違って、映画っぽい。実際はフィルムで撮っているのか、デジタルで撮っているのかわからないが。

 公開3日目の初回、銀座の劇場は50分前に着いたらすでに開場(!)していた。寒い季節の早朝にはありがたい配慮。全席自由で、2階席もOKだったがこちらは椅子はいいのだがスクリーンが遠い。迷った末に1階へ。すでに30人ほどが座っている。

 男女比は4.5対5.5という感じで女性の方が多かった。中高年は全体の4分の1から5分の1ほどで、20代の若い人が目立つ。ほう。幼稚園くらいの女の子を連れたお父さんもいたが、あの女の子にお話がわかっただろうか。

 最終的に510席に8割ほどの入り。これもTV・CMのたまものか。すばらしい。


1つ前へ一覧へ次へ