日本語字幕:手書き下、太田直子/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル
〈日本先行公開のため米のレイテイングはまだ〉
モーガン・サリバン(ジェレミー・ノーザム)はデジコープ社の入社試験を受け合格した。ところがジャック・サースビーという名前を与えられ、産業スパイになることを強制される。指示されるまま、国内を飛び回って各社のセミナーなどに参加しそれを送信するウチ、謎の女性リタ(ルーシー・リュー)に出会う。そして、彼女は意外な事実を彼に告げるのだった。
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超低予算傑作SF「CUBE(CUBE・1997・加)」を撮ったカナダ人監督ヴィンチェンゾ・ナタリの5年ぶりの劇場用長編新作。なんでも、世界に先駆けて日本が先行公開なのだという。 テイストは「CUBE(CUBE・1997・加)」のそれを受け継いでいるが、今回は脚本を書いていないので、多少感じは変わっている。前半の産業スパイ部分がちょっと退屈で、集中を失いがちだ。ラストは意外な事実が明かされ、一気に007のような、また優れたアクションSFになる。何という展開!!! これぞ映画、といいたいところだが、いかんせん前半が退屈。2時間以上あるかと思った。 それにしても、意識的に入れられるシンメトリーな構図。そしてモノトーンに近い淡いカラー。なのにスコッチだけは琥珀色に輝いていたり。これが主人公の意識状態を象徴しているのだろう。ただ、それがわかるのは、最後の最後のどんでん返しを聞いてから。それまでは、とにかく訳がわからない。いろんなところにアタッシュ・ケースが置いてあったり。おそらく、それらはすべて緻密に計算されているに違いない。もし、もう一度見る気力があるのなら、それらを意識して見ると興味深いことがわかってくるだろう。 ちなみにタイトルのサイファーは 一言で言えば「暗号」のことだが、暗号の中でもある一定のルールに沿って1文字1文字変換していく暗号がサイファー。一方コードという暗号もあって、こちらは「トラトラトラ」が「我、奇襲に成功せり」だったりするやつ。なぜ、コードではなくサイファーなのか。いかにも「CUBE」監督らしい。ひとつひとつか、一括か、その違い。 見方によっては、これはコンピューターに進入したウィルスの行動を、人間で描いたものと言えなくもない。手に入れるのは奥深くに隠された情報だし。まっ、これはヒッチコックのマクガフィンでいいわけだが。 すぐれたビジュアル同様、タイトルもすばらしい。ラインによるグラフィック・アニメーションはとにかくカッコいい。当然ヒッチコック(グラフィック・デザイナーのソウル・バス)は意識しているんだろう。「北北西に進路をとれ(North by Northwest・1959・米)」はやはりラインがアニメーションで動かされるタイトルだったし。わけがわからず、突き進むところもこの話に似ている。謎の女も出てくるし。 公開初日の2回目、渋谷の全席指定の劇場(ただしここは24日まで)に行ったら、45分くらい前でロビーに2〜3人。それでも20分前には20人くらいになったのでビックリ。全席指定なのに、なぜ? 場所柄か、ほとんどは20代の若者で、男女も半々。どこにもいるオヤジはここでは数人。オバサンはみごとなほど見かけなかった。 最終的に245席に7.5割ほどの入り。なかなか上々でしょう。プログラム(パンフレット)は1冊600円。音響はなかなか素晴らしく、サラウンドのまわりもよく聞いていた。セリフもクリア。 ただし、全席指定というのはいかがなものか。スタジアム形式の座席で、どの席からも問題なくスクリーンが見えるのならいいが、ここは床がほぼフラットで、場所によっては(混み具合によっても)スクリーンが一部見にくくなる。初めて行ったとき、ボックス・オフィスで「ここの座席はスタジアム形式ですか」と聞いたら、怪訝な顔をされた。「つまり座席の床が斜めになっていますか」というと「はい」ときた。違うっちゅうに。空いているなら中央付近が音響効果上は良いが、中央付近が集中しているのならやや通路寄りが良い。さらに言えば、全席指定にするなら、電光掲示板のようにして、埋まっている席を表示しろよ。できないなら、せめて定員入れ替え制くらいでやめておいて欲しい。シャンテ・シネ1は全席指定をやめちゃったでしょ。成立しないと思う。満席になる映画ばかりじゃないのだから。 |