2003年1月26日(日)「ボーン・アイデンティティー」

THE BOURNE IDENTITY・2002・米・1時59分

日本語字幕:写植下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、Panavision)/ドルビーデジタル・dts・SDDS


http://festa.biglobe.ne.jp/bourne/
(全国劇場案内もあり)

CIAの特殊工作員ボーン(マット・デイモン)は、背中に銃弾を撃ち込まれ海上を漂流しているところをイタリアの漁船に助けられる。しかしボーン本人は記憶喪失に陥っていて、何も思い出せない。かろうじて判明したスイスの銀行口座だけを頼りに、スイスへ向かうが、彼の口から極秘任務が漏れることを心配したCIAの処理班が襲いかかる。

76点

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   予告編からもひょっとしたらという期待はあったけれど、なかなか骨太のアクション傑作。約2時間を最後まで一気に見せる。よくできたスパイ映画。もっといえば007のようなよく考え組み立てられたアクション映画。

 先日テレビで、ある若手の人気女優が、私はアクションよりもっと人間を描いているドラマが好きなどとコメントしていた。アクションを下に見たような言い方が気になったわけで、ボクはむしろアクションの方が役者にとって難しいと思う。極限状況が描かれることが多いから、感情の振れ幅も0から100までと幅広い。つまりよりドラマティックなのだ。そして、アクションしながらだと演技できない役者さんもいるという。激しい動きの中で、微妙な感情の揺れを表現するのは並大抵のことではない。しかも一般的なトレンディ・ドラマとか恋愛ものとかよりカットが短い傾向がある。その短いカットで同じことを伝えなければならない。アクションをバカにするな。

 そう思ってみてみると、やはりマット・デイモンがいい。事情が飲み込めず、起きる事態に翻弄されていく姿がいい。とまどうような表情が若い女性たちの心をグイッと掴むのではないだろうか。そしてとにかく体がキレている。動きに説得力がある。本当に鍛えられた特殊工作員だということを、ほんのちょっとした仕草や動きから観客に感じさせなければならない。公式サイトによれば、マット・デイモンはそのためにスタント・コーディネーターとトレーナーについて、撮影前に3か月間みっちりと体を鍛え上げ暗殺訓練を学んだという。どこかのアホな女優に聞かせてやりたい。肉体で演技すると言うことがどれほど大変なことか。ちなみにマット・デイモンが習得したマーシャルアーツはフィリピンのカリというものだそうだ。

 相手役を演じるヒロインは、「ラン・ローラ・ラン(Lola Rennt・1998・独)」で走りまくっていたフランカ・ポテンテ。この突っ張るでもなし、かといって無気力というのでもなし、微妙なけだるさがいい雰囲気を出している。

 アクション映画につきもののカー・アクションもちゃんとある。ミニ・クーパーで狭い階段のある迷路のような道を疾走する。これがなかなかすごい。

 銃器は最初に貸金庫内から出てくるのがSIGプロSP2009(またはSP2340)。たぶんいままでほとんど映画に出たことはないはず。この銃を選ぶところがマニアックだ。米大使館で米兵が装備しているのが、M16のショート・バレル・タイプ。CIAの暗殺者が持っているライフルはスイス軍用のStgw90(SIG SG550)。敵から奪う銃が、かつて007ジェームズ・ボンドもつかったことがあるというワルサーP5

 どれも銃声が鋭く大きくていい。いたそうな感じがするのだ。だからこそサイレンサーの音もリアルに聞こえてくるわけで、なかなか怖い。やっぱり銃はこうでないと。

 この正統派アクションを演出したのはダグ・リーマンという人。どうやらメジャー長編は初めてのようで、これまでにインディーズ作品とタイガー・ウッズの出るナイキのCMなどを手がけてきたらしい。今後、注目したい。

 公開2日目の初回、50分前に新宿の劇場には8人ほどが。若いカップル1組、中年カップル1組、オヤジと若い男性が同数。当日の寒さを考慮してくれたのか、40分前にはもう開場してくれて暖房の効いた場内へ。

 最終的に指定席なしの406席に8〜8.5割という上々の入り。男女比はほぼ半々で、老若比は4対6で若い人の方が若干多かった感じ。

 うーん。音はいまいち。フラットな床なので、前席の人の頭が気になる。最悪のとどめは、またスクリーン中央付近がまるくピンボケ。上映前のビスタ・サイズの予告編ではピンが合っていたから、シネスコ・サイズでレンズを交換したらピンがずれていたということか。やれやれ。


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