2003年2月09日(日)「13階段」

2002・フジテレビジョン/東宝/ポニーキャニオン/イマジカ・2時02分

ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル


http://13kaidan.goo.ne.jp/


ディスコでトラブルとなり、もみ合った末、誤って相手を殺してしまった三上純一(反町隆史)は、3年の刑期を終えて出所した。そこへかつて収監されていた刑務所の刑務官、南郷正二(山崎努)が訪れ、死刑囚のえん罪をはらす調査を手伝ってくれという。

73点

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   タイトルからもっと社会的な問題を前面に出した、頭でっかちなものを想像していたのだが、それは良い意味で覆された。結構なかなか推理小説仕立てになっている。犯人探しのおもしろさ、そしてそのとき一体何が起こったのか。これらの疑問に正面から、正々堂々答えてくれる。これは嬉しい。

 役者たちもがんばっているし、脚本もよく練られている。が、しかし、この暗さはいったい何なんだろう。どうして日本でこの手のものをやると、こんなにウエットになってしまうんだろう。恨み、つらみ、嫉妬、因縁……うう、暗い。思いっきり暗い。

 それでも、この作品には未来に対する明るい希望がある。それがこの作品をテーマの重さや暗い印象とは裏腹にさわやかなものにしている。ちょっと不快さもないわけではないけど、やるせなくて悲しくて、ちょっと涙も……。

 原作は2001年第47回の江戸川乱歩賞を受賞した高野和明の同名小説。まだ未読のためなんとも言えないが、選考委員の絶賛を浴びたということなので、もともとの小説のできが優れていたのだろう。それをうまく2時間のドラマにまとめたわけで、脚本を担当した森下 直の実力のすごさがわかるというもの。この前に、あの(また暗いけど)おもしろかった「誘拐(1995・日)」を書いて、城戸賞を受賞している。

 監督は「ソウル(Seoul・2002・日/韓)」の長澤雅彦。どうりでうまいわけだ。

 山崎努がうまいのは当然として、反町隆史の押さえた演技がいい。無口な感じと誠実そうでいて、どこか胡散臭い感じがするのも良かった。それがあるから、観客も実際にどんな事件があって、主人公はどう絡んでいたのか、疑いを持ってしまうようになっている。あまりにも実直な感じがする役者を選んでいたら、この危うい感じは出なかっただろう。

 特に良かったのが、ちょっとしか出ていないが、処刑される死刑囚を演じた「雨上がり決死隊」の宮迫博之。凶悪な犯罪を起こして収監され、どうやって償えば良いんですかと、泣く。そして処刑シーンで名前を呼ばれて背筋をピンと伸ばすところが泣かせる。

 意外とお笑いの笑福亭鶴瓶がわざとらしくなく、自然な感じなのに驚いた。まあどうにか無理をすれば弁護士に見えないこともないというところで。

 ラストは、事件が解決してからが長すぎる気がした。「ソウル」でもちょっとラストがもたついたから、この監督の特徴なのかも。

 公開2日目の初回、新宿は35分前で劇場前に10人ほどの行列。なんとすべてがおそらくは40代以上という高年齢?。30分前に開場したあと、中学3年生くらいの男子生徒が3人ほどと、母に連れられた高校生くらいの娘2人くらいが入って来たが、それ以外はほとんどオヤジと中年の夫婦という状態。反町なのに……。でもタイトルとテーマからはこういうことになるのだろう。

 最終的には指定席なしの586席に2割弱の入り。若いカップルは1〜2組のみ。


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