日本語字幕:手書き下、風間綾平/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
窃盗課の刑事ジャック(サミュエル・L・ジャクソン)は、隣人から家出した娘を捜して欲しいと泣きつかれ、しぶしぶ町へ出るが、ある家の前にいたとき老女が玄関で足を滑らせて転倒するのを目撃し、思わず手を貸したことから、ひょんな事件に巻き込まれることになる。
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ダシール・ハメットの1924年のコンチネンタル・オプ・シリーズの短編小説「ターク通りの家」の映画化。IMDbでの評価は4.2とかなり低め。しかし、ボクはおもしろかった。エンディングは確かにハリウッド調ではなく、アメリカ人好みではないだろうけれど。 たぶんミラ・ジョヴォヴィッチの女としての魅力炸裂。色気ムンムンで、明らかに「ジャンヌ・ダルク(The Messenger: The Story of Joan of Arc ・1999・仏米)」や「バイオハザード(Restdent Evil・2001・独英米)」とは違った一面がはじけている。これだけでも見る価値はあると思うが、ハメットだけにストーリーの展開が、まったく先が読めずについついのめり込んで見てしまう。ミラ・ジョヴォヴィッチ自身も、自分では意識しないで男を惑わせてしまう役を、押さえ気味の演技で良く演じていると思う。おそらく男性観客は男性の登場人物と同じ感覚で彼女の言うことをかなえてやりたくなってしまう。だからこそ、ラストに釈然としないものを感じるのではないか。 主人公はもちろんサミュエル・L・ジャクソンで、彼を取り巻く登場人たちが良く言えば実に個性的、悪くいうとクセものばかり。一見穏やかそうだが実は頑固なパイロットのクオレル老夫妻(グレイス「ツイン・ピークス」ザプリスキー)、ややおつむの弱い凶暴な男フープ(ダグ「グリーンマイル」ハッチソン)、理性的だが残忍なリーダーのタイロン(ステラン「RONIN」)スカルスゲールド、その情婦エリンは自分でそうと気づかずに次々と男をたちを翻弄し、彼女の魅力におぼれ仲間に加わった銀行員のデヴィッドらが、実に巧妙なアンサンブルを演じる。 一見、それぞれの道のプロが集まった犯罪のドリーム・チームのようだが、実際はそれぞれが得ることになっているお金という利害関係だけで結ばれており、何かきっかけがあればパチンと弾けてしまう危うさを秘めている。ここがまた面白い。 さらに、主人公はどちらかというと人のいい窃盗課の刑事で、趣味がチェロの演奏というのも変わっている。しかも糖尿病で、ときどきインシュリンを打たなければならないときた。こんな変わった設定もないだろう。 犯罪者グループの中の唯一の若い女性、ミラ・ジョボビッチは誰かに付いていくタイプで強い自己主張などないように思わせて、実は彼女が一番りこうだったのかも。彼女の趣味も音楽で、鮮やかにピアノを弾いてみせる。それでサミュエル・L・ジャクソンとジャムセッションしてしまう。これがちょっとエロティックな展開を見せるのも普通じゃない。 こういった登場人物たちが、アクションもありながら、互いに牽制しつつ微妙な人間関係を露わにしていく。ここも見所。 公開初日の2回目、新宿の272席のアナログ音声館に行った。なんだか悲しい気持ちになる劇場だ。1時間前でボク以外に1人だけ。20分前になってようやくオヤジが4人。15分前になって若いカップルもちらほら。中年カップルも来て、10分前に開場・入れ替えしたとき、約25人。ほとんどは中高年だ。女性はおばあさんも入れて3〜4人。最終的には50人ほどになった。でも、少ない。少なすぎる。劇場も劇場だし……。 |