日本語字幕:丸ゴシック体、菊池浩司/ビスタ・サイズ(1.85、with Panavision)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
アメリカ国家保安局BNSの二流諜報部員、アレックス・スコット(オーウェン・ウィルソン)は、いつもベテラン人気諜報員カルロス(ゲーリー・コール)にいいところを持っていかれ、装備品もいつもお古の二流品。あこがれの女性諜報員といっしょに仕事をしたこともなかった。そんな時、アメリカから見えない戦闘機“スイッチブレード” が盗み出され、ヨーロッパの武器証人ガンダーズ(マルコム・マクドゥエル)が購入し、近く転売するという。スコットは潜入捜査のため、司令部から民間人でボクシング・チャンプのケリー・ロビンソン(エディ・マーフィ)と協力するよう命令されるが……。 |
アメリカでの評判の通りのでき。なんだコレ。もうエディ・マーフィはヤバイ。こんな映画にばっかり出ていたら、というよりどの映画もこういうテイストにしてしまったら、もうダメになってしまうんじゃないか、そんな心配をしてしまうほど。 エディ・マーフィはここのところずっとサエなくて、せいぜい「ナッティ・プロフェッサー/クランプ教授の場合(The Nutty Professor・1996・米)」(悪ノリしすぎた2は?だが)と「ショウタイム(Showtime・2002・米)」くらいが面白かったと言える作品。異常な設定(超デブが薬でスリムに変身する)でエディ・マーフィの“毒”を生かせるものか、お目付役(ロバート・デ・ニーロ)がいてエディ・マーフィを押さえるか、そのお目付役がエディ・マーフィの毒とバランスをとれなければ、ほとんどの映画は破綻する。あとはエディ・マーフィのやりたい放題。スターになってしまって、誰も意見できないのかも。そんなエディ・マーフィ、見たくないっての。アカデミー賞を取ったスターの多くがそうなるように、ギャラやらプライドやらだんだん使いにくい役者になってしまう。 それに相手役のオーウェン・ウィルソンが良くない。悪くはないけど、決して良くもない。どうしても主役には向かない雰囲気がある。ないのだ、華が。「シャンハイ・ムーン」でも良くなかったし、「エネミーライン」でも良くなかった。ピンではまったくダメ。ジャッキー・チェンとかジーン・ハックマンとか、華があるスターが一緒にいないと光らないタイプなのか。今回はその光が鈍り始めたエディ・マーフィだったから、上記2作ほどヒットしなかったと。 ファムケ・ヤンセンはお色気ムンムンでそれなりの存在感はあるが、敵のボス役の「カリギュラ」のマルコム「ブルー・サンダー」マクダウェルはどうしちゃったんだろうか。ひとクセもふたクセもある役者さんなのに、まったく目立たない。なぜこんなにスゴイ人を使ったんだろうか。この程度の役なら誰でもいいのに。それにしても、さすがに年をとったなあと。しみじみ……。 たぶん一番いけないのは、ちゃんとしたハード・アクションのスパイものにしなかったことなのではないだろうか。どうせコメディ・パートはエディ・マーフィがやるのだから、オーウェン・ウィルソンには007並の正統派スパイを演じさせればよかったのだ。ちょっとオシャレなジョークなどを織り込みながらも、二枚目の線でいくべきだった。それをコミカルな役にしてしまうから、エディ・マーフィと被ってしまって、いくら不調とは言えコメディではエディ・マーフィにかなわないでしょ。二人がコメディ・パートではでこぼこコンビにならないし。まさか、エディ・マーフィがクール・パート? なわけないよね。でも、エディ・マーフィはボクシングのチャンピオンの設定で強いし、金は持っているし、女にもてるし。一方オーウェン・ウィルソンは二流スパイで、ドジで、振られるのに女の尻を追いかけてばかりだし……あれ、やっぱり逆じゃないか。ってことはこれが原因か。 銃器はミニUZサブマシンガン、MP5サブマシンガン、Vz61スコーピオン・サブマシンガン、XM177らしいライフルの75連マガジン付き、ベレッタM92カスタム、S&Wオート(5906?)などなど。夜間、ビルの屋上での撃ち合いがあり、暗闇の中で打ち合うことになるというのに、マズル・フラッシュどころか撃ち空の薬莢までが見えている。つまりは別撮りした絵をCG合成しているってことだろう。今日びの最新技術は本当にスゴイ。 この映画の中で一番良かったのは、エンド・クレジットの見せ方。ある時はレーザーで1行ずつスキャンするように、またある時はレーダーで探すようにキャストやスタッフの名前が出てくるのだ。うまいなあと感心していたら、やはりイマジナリー・フォースだった。でも、イマジナリー・フォースを使うんだったら、オープニングの方にお金をかけてやってもらえば良かったのに。エンド・クレジットは見ないで帰ってしまう人も多いのだ。 公開初日の初回、銀座の劇場には入り口前に配給会社の人々らしき10人くらいがぞろりと並んでいた。これは待つ人よりも多い。入りにくい!! もっと離れたところにいてくれないかなあ。学生の新入生歓迎コンパじゃないんだから、入り口に並ばれても……。 40分前に着いたら、8人が待っていたが、なんと7人がオヤジ。オバサン1人。きっと往年の(っていうか、「ビバヒル1」の)エディ・マーフィを知っている人たちということなんだろう。30分前に開場した時点では10人程度だったが、次第に小学生連れのファミリーが現れ、ついにはなんと10人くらいの小学生の集団(?)が!!! いやはやビックリ。なんでだろう、と思わず歌い出すところ。アメリカではPG-13の指定(13歳未満は父兄の同伴が必要)を受けているが。日本の場合は規制がないらしく、PG-12になっても父兄の同伴が望ましいというだけらしいが。 最終的には小学生20人くらいと、その親以上で完全に観客層は空洞化。20〜30代は1割にも満たない。男女比は6対4で男性が多く、710席に6割ほどの入りと意外に多い。これまた、なんでだろ。しかも2,500円というエグゼクティブな気分が味わえるプレミアムシートに2人も座っていた。 |