2003年4月27日(日)「ムーンチャイルド」

MOON CHILD・2003・TBS/松竹/WOWWOW/MBS/カネチュア・パブリッシャーズ/スポーツニッポン新聞社・1時59分

日本語字幕:手書き書体、下/ビスタ・サイズ/ドルビー



http://www.moonchild-movie.com/
(全国劇場案内もあり、音に注意)

2014年、日本は経済破綻し、移民がアジアのある都市マレッパの南地区に集中していた。そんな中、孤児たちはストリート・チャイルドと化し、盗みなどをはたらいて暮らしていた。ショウ(Gackt)、シンジ(寺島進)、トシ(山本太郎)のグループに謎の男ケイ(HYDE)がやってくる。そして2025年、4人はギャングとなり義心会という地元ギャングの売り上げを襲う計画を立てる。

74点

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 感じはそのまんま香港映画。1時間59分は長いが、感動のピカレスクSFアクションが展開する。少々重苦しい内容だが、30年に渡る年代記のような物語。

 アイドルものとは思えないほど内容はハード。なかなか骨太だし、共演陣が芸達者だから重厚で説得力のある物語に仕上がっている。プロップ・ガンも実銃ベースのものを使っているので、迫力が違う。おいおい、これがアイドル映画?

 問題があるとすれば、芸歴があきらかに主演の2人より長い本物の役者さんたちに比べて、ほとんど芸歴の浅い主演のミュージシャン2人の演技力(ファンの皆さんゴメンナサイ)。まわりがアイドル系の人だけなら目立たないのだが、演技達者に囲まれるとそれが目立つ。

 台湾のアイドルで2000年にスクリーン・デビューした「拳神(THE AVENGING FIST・2001・香)」や「SPY_N(China strike force・2000・香)」のワン・リーホン、1991年にスクリーン・デビューした「バトル・ロワイヤル」や「GO」の山本太郎、冒頭のシーンに登場するヴァンパイヤ、ルカを演じた豊川悦司に至っては、1989年スクリーン・デビューで、日本アカデミー賞を受賞、ハリウッド映画にも出演している。ローリエ捜査官を演じる石橋凌は1978年スクリーン・デビュー、受賞した賞は数知れずという感じ。北野武映画の常連、寺島進も1986年スクリーン・デビューのベテラン。

 叫ぶ芝居や怒る芝居においては、あまりうまいヘタはわからない。普通の何気ないセリフが違うのだ。これが辛い。あらためて、やっぱり俳優といわれている人は、芝居がうまいんだなあと再認識。

 実銃ベースのプロップガンは、定番のベレッタM92、S&WS&Wオート(5906?)、それてちょっとレアなH&K USP(!)、ガバ系のSTI、グロック、デザートイーグル、はては「ロボコップ」のオートナインのような銃まで、とりかく数は多いし、バリエーションも豊富。かなり高額のお金がかけられているようだ。フラッシュも派手で、ガンガン撃ちまくってくれる。

 ただしタランティーノ撃ちはいけない。銃を水平にして撃つ、アレね。1発目はどうにか当てられたとしても、2発目以降あの構え方は狙いを定めるまでにとても時間がかかってしまうのだ。撃った時の反動がほとんどないプロップ・ガンでのみ成立する。ボクはアメリカの射撃場で実弾で試してみた。タランティーノ撃ちはまったく実用にならなかった。これに命をかけるわけにはいかない。拳銃は至近距離でもしっかり狙わないと当たらないし、狙わないで連射しても、ただ弾をばらまくだけ。ハッキリ言って弾のムダ。映画的に乱射は良いとしても、タランティーノ撃ちだけはやめてほしい。

 この映画でもよくわかるのは、よほど変な死に方でない限り、劇中で死んだ方がカッコいいということ。キャストでも最初に出る主役のHYDEが不死の身体であるため生き残り、準主役である生身の身体のGacktは銃撃戦で先に逝ってしまう。だからGacktの方がカッコいい。脚本がGacktだもんなあ。ただ、大ラスでちょっとした工夫はされているけど、それは見てのお楽しみ。

 スタッフ・ロールが英語で、やっぱりハリウッドを意識しているのかという気もする。アクション映画と言えば、リトル・ハリウッドこと香港と、本家ハリウッドなんだから。でも、日本映画でもやろうと思えばここまでやれるといういい手本になると思う。それが人気ミュージシャンからでないと動き出さないところに、問題はあるのだが。

 とにかくHYDEとGacktが香港アクションのヒーローのようにカッコいい。

 公開初日をとにかく避けて9日目の初回、40分前くらいにおそるおそる新宿の劇場に行くと……うわっ、やっぱり。10代後半の女の子が25人ほど並んでいる。男は3人だけで、同じ10代くらいの男の子と、間違って来たのかと思える老人、それにボク。いやあ、恥ずかしかった。女の子はほとんどがファンの子らしく、しかもなぜか9割は白いジャケットに黒いパンツ・スタイル。なぜだ。

 35分前にはもう50人ほどになった。もちろんハイ・ティーンの女子。話を聞くともなしに聞いていると、かなり不満らしい。何がかと思っていたら、ファン的には満席になるくらい人が多くないのが気に入らないらしい。なるほど、ファンとはありがたいものです。

 ただハイティーンの女の子しか見に来ないというのは異常であり、興行的にはOKだろうが、1つの映画として見た時、こんなに限られた観客にしか見てもらえないのはどうなんだろう。そして実際、男が見ても楽しめる内容であり、大人も(ただ粗暴なストリート・チルドレンという面はあるものの)楽しめると思う。Gacktは男臭い映画を作りたかったのではないかなあ。

 最終的に指定席なしの417席に6割ほどの入り。9割はハイティーンの女の子、つまりHYDEとGacktのファンだろう。もっと男も見ろ。ちょっと恥ずかしいけど。


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