日本語字幕:手書き書体下、岡田壮平/ビスタ・サイズ(by Panavision、1.85)/ドルビーデジタル
謎の立方体が無数に連なった迷宮に閉じこめられた数人の男女。何のために入れられたのか、ここがどこなのか、出るにはどうすればいいのか。一切がわからないまま、死のトラップが迫ってくる。 |
2列くらい後ろに座っていた若い男性が見終わって一言。「オチは?」。これがすべてを語っているだろう。ヴィンチェンゾ・ナタリが監督した前作の「CUBE(Cube・1997・加)」とは比べものにならない。これは「2」などではなく、まして「ハイパー」でもない。うーん、何といえばいいのか……亜流というか。酷い言い方をすると「できの悪い真似」かもしれない。 たぶん演出とか以前の、脚本の問題という気がする。「謎を解け」というキャッチ・コピーがつけられているものの、謎は1つだけで(ほかにも前作から引き継いだ謎があるものの、それに通り一遍の平凡な回答らしきものが用意されているだけで、何の答えにもなっていない)、誰かが計算して導き出した「60659」とは何か、というもの。しかもラストに説かれるその答えが、アッと驚くほどくだらない。子供のなぞなぞじゃないんだから。ボクも思わず「オチは?」と聞きたくなってしまった。もと、ヒネリを入れろよ。ヒネレ、ヒネレ。 前作の謎に満ちた感じは影を潜めている。もちろん同じ謎は受け継いでいるので、あるのだけれど、セットからして見た目はきれいになったが謎めいていない。アレン・レンチで締めたようなネジが付いていたり、クロスした梁に四次元(?)キューブのシンボルのような絵が描いてあったり、いかにも人間が手作りしましたというデザインで、うーん。前作は、ひょっとしたら宇宙人が地球人をモルモット化して楽しむための施設か、という感じさえしたのに。 前作の謎を解く鍵は素数で、それを数学で解いていく。しかし本作は何をどう計算して「60659」などという数字をはじき出したのだろうか。なんのヒントも観客には示されていないのだ。ただ4次元じゃないかという想像があって、その立体がハイパーキューブで、テセラクトだとか言うだけ。テセラって、はめ石のtesseraのことか。出入り口がはめ石って言えば言えるけど。でもUFOの動力ってテセラ・コイルとか言わなかった? うーん、ウソくさい。 前作で用意されていた数々の死のトラップも、本作では影を潜めている。アイディアも乏しいが、CGにだけ頼ったそれは、まったく現実感がないし怖くもない。ただかろうじて演出と役者の演技と編集でハラハラドキドキするだけ。 前作のトラップは、CGなのかもしれないが、折りたたまれていた細いワイヤーが何本も出てきて、キーンという音ともにそれが走ると、顔に赤い血の線が走ってそれから顔がバラバラになるなどCGと実写をうまく使った、とにかく予想も付かない恐ろしいものが多かった。 公開5日目の初回、オープンしたての六本木ヒルズという場所も考えて65分前に着いたら、劇場の入り口はロックされていて、その前にスペースに若いカップルが3〜4組ほど。何の案内も書かれていないので、来る人来る人がドアを開けようとしていた。ボクもやってしまったが。「何時会場です」と張り紙でもするだけで、待つ人は大人しく待つのに。夏はどうなるんだろう、相当暑いと思うが。 9時30分にドアが開き、女の子が出てきてあいさつと案内をした。入ると大きなチケット・カウンターがあり、コンピューターの端末が何台も並んでいる。ようするにプレミア・スクリーン(ドリンク付き3000円)以外の8館すべてのチケットをここで管理していて、全席指定で立ち見は無し。前売り券もここで見たい時間の当日の座席指定券と交換する。インターネットでチケットを購入した人は、専用端末で自分でチケットを発行する仕組み。なるほど、これは意味がある。座席の指定もないのに当日券と交換したり、1館しかないのに当日券と交換させるのは混乱の元だが、この方式はいい。時間と座席が確定してしまえば、あとは外出してもOK。10分前までに入場すればいいらしい(始まってから入場したヤツが数人いたが……)。ボクはスタバに行ったが、チケット・カウンターの横には、これまた大きなスナック・カウンターがあり、いい匂いがしていた。コーヒーも本格的なヤツらしい。皆、大きなポップコーンのバケツ(失礼)とドリンクのセットを買っていた。 2番目に大きな劇場はスクリーン2で定員が369席。銀座のプレミアム・シートより大きい。もちろんスタジアム形式であまり前席の人の頭が気にならず(スクリーンがちょっと低いので気にはなるが)、前後も広く人が通りやすい。もちろんカップ・ホルダー付き。プレミアム劇場になると小さなテーブルまでつくらしい。 最終的に最前列から2〜3列開けて8割ほどの入り。なかなか考えている。場所柄かほとんどは20〜30代のカップルで、中年カップがそれに続く。男女比はほぼ半々。 とにかく案内などしっかりしていてグッド。入ってしまえば気持ちよく映画が観られる。音声も、CMはビデオ上映のせいかクォリティも低くかったが、予告からは良くなって安心。THXを自慢するだけのことはある。最大の劇場スクリーン7は650席で、SDDS(8チャンネル、7.1)対応劇場だそう。一度見てみたい。上映時かなり場内が暗くなるのも良い。非常灯などまったく気にならなかった。オススメ。 |