2003年5月4日(日)「ボイス」

PHONE・2002・韓・1時42分

日本語字幕:手書き書体下、根本理恵/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル



http://www.movies.co.jp/voice/index2.html
(電話の音に注意)

女性ライターのジウォン(ハ・ジウォン)は援助交際の取材により、謎の男の恨みを買い執拗な脅しを受けていた。身の危険を感じたジウォンは友人のホジョン(キム・ユミ)一家がいずれは住むことになっている、今は広すぎるという一軒家を借りることにする。そしていたずら電話が良く掛かってくる携帯も買い換えるが、6644の番号しかないといわれ、仕方なくそれにするが、引っ越したその日から怪奇な現象が続発する。

77点

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 こわ。すごく怖い。そしてすごい絡み合ったドラマ、謎。とてもレベルが高いと思う。日本もホラー・ブームだったが、ドラマ作りのうまさで日本映画を超えている気がする。

 ただ怖いだけの最近の邦画と違って、ドラマがあることで観客は単なるお化け屋敷の観客という第三者の立場から、まるで当事者になったような恐怖を体験する。主人公と一緒に謎を解くことで、感情を共有し、問題を共有する。これって映画の基本だと思うが、まあいろんな映画があって良いわけで、こうでなければ映画じゃないというのも間違っている気はする。ただ、安くないお金を払って見る映画は、それに見合う何かが得られないとなあ。

 そして、ちゃんと解決が用意されているから、とても怖い想いをするのにそれを家まで引きずらない。時間が解決され、謎が解けることでその恨みは解消され、浮かばれなかった魂も浄化されて成仏できたという気になるから、懸案として残らない。ところが「呪怨」のような理由もなく怖いようなものは跡を引く。ちょうど心霊写真を見てしまったように、心の隅に引っかかってしまうのだ。

 やはり驚くべきは、韓国女優さんの美しさだろう。なんでこうも美人が多いのか。主人公のハ・ジウォンをはじめ、友人の人妻役のキム・ユミ、女子高生のチェ・ジヨンとみな美人。同じような顔をした美人ではなくて、それぞれにいい意味で個性的な美人なのだ。そして、美人が恐怖に怯えるというのがまた絵になるわけで、思わず守ってあげたいという気になる。結果、おのずとホラー映画の主人公は若くて美人の女性ということにはなる。美人は得だね。

 もう一つの驚きは、子役のウン・ソウの名演技。大人顔負けの演技力というか表現力。これは半端ではない。ある意味、天才なのかもしれない。1996年生まれというからわずかに7歳だ。初出演でTV局の子供部門の演技賞を獲得したというのだから、本当の天才かも。韓国の俳優層の広さには驚かされる。

 一方、男は情けなくって、頼りにならないキャラクターばかり。パッとしない。これは女性主体の映画なのだ。きっと韓国でも女性の勢いが上なのだろう。

 突拍子もない話をゲテモノにしていないのは、アートをうまく取り込んでいるからだろう。主人公の友人が絵を描くので、モリディアーニやルノワールの絵も登場するし、事件の「カギ」の1つに、ベートーベンの「月光」が゜使われている。悲しげな曲だが、この映画を見た後は恐ろしく感じるようになるかもしれない。もちろん電話の音も怖くなるが。

 監督は脚本も兼ねているアン・ビョンギという人。2000年に「ナイトメア(Gawi・2000・韓(未)」というこれまたホラーでデビューしたらしい。今後注目の監督だ。

 公開9日目の2回目、50分前で銀座の435席の劇場はロビーに誰も待っていなかった。40分前になったらやっと20代のカップルが1組。35分前くらいからポツポツと人が来るようになった。30分前で10人ほど。

 前回終了の10分前くらいに列を作ることに。15分前に前回が終了して入れ替えのはずが、なぜか5分遅れた。

 年齢層はやや高めで、20代後半から40代が中心という感じ。男女は半々で、女の子のほうがやや若い。ホラーとしては当然というところか。老若も半々。

 全席自由で、全シートが他館のプレミアム・シート仕様。しかもスクリーンが高めで千鳥配列だから、どの席からも非常にスクリーンが見やすい。そして音が良い。ここはデジタル・サウンドのありがたみが感じられる。

 最終的には40人ほどの入り。おいおい、いい出来の映画なのに。ちょっと銀座のはずれだが、この劇場は快適に観賞できるし、スクリーンも大きめ。これで内容が良いのだからお得だと思うけどなあ。


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