2003年5月10日(土)「あずみ」

あずみ・2003・日本ヘラルド映画/TBS/電通/小学館/アミューズピクチャーズ/東宝/イマジカ/セディックインターナショナル/トライストーンエンターテイメント・2時20分

ビスタ・サイズ(1.66)/ドルビーデジタル・dts


〈日PG-12指定〉

http://www.azumi-movie.jp/index.html

1600年の関ヶ原の戦いのあと、小幡月斉(原田芳雄)は戦乱によって孤児となった子供を集め、戦乱の世を終わらせるために反乱分子を事前に抹殺する戦士を育てていた。10年後、9人の少年と1人の少女が修行を終え旅立とうとしていた。しかし月斉は最後の仮題として、もっとも親しい友とペアを組み殺し合えと命令する。 5人に減った若き刺客たちは月斉とともに初めて山を下り、徳川家の指令を受けて豊臣方の大名浅野長政(伊武雅刀)の暗殺に向かう。

72点

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 長い。良くも悪くも長い。面白いところもあり、冗長な部分もあるが、とにかく長いし、ラストのキレが悪い。もっと刈り込んだらすごく面白くなったような気もする……。その割に、いくつもある決闘はそれぞれ短めで、物足りない感じ。スゴイ剣豪同士の戦いという印象がなかった。

 しかし、いいところもいっぱいある。ハッキリ言っていわゆる正統派時代劇調に撮っている部分がつまらない。ところがその枠から離れたキャラクターが登場するや、俄然良くなる。これこそが北村監督のテイストなんではないだろうか。だから、原作があるものより北村監督オリジナルの世界を表現した方が、数倍面白いに違いないと思う。

 たとえばおつむの弱い生まれながらの乱暴者、殺戮者のような佐敷三兄弟、佐敷一心(遠藤憲一)、佐敷二斎(清水一哉)、佐敷三蔵(坂口拓)がいい。そして、まるで「羊たちの沈黙」のレクター教授か、「ザ・ロック」のショーン・コネリー演じる元英国諜報部員のように存在自体が凶器という美女丸(オダギリジョー)がいい。あの切れまくった演技とセリフ回し。時代劇の正統からはやってはいけないことなのかもしれないが、彼らがいることによって映画は格段に良くなっていると思う。ただ、ボクは小山ゆう(どうしても熱中した「おれは直角」を思い浮かべる)の原作漫画を読んだことがないので、原作に近いのか、それとも北村監督が味付けした部分が大きいのかはわからない。

 ちょっと気になったのは、殺陣。チャンバラ。原田芳雄らベテランはさすがにうまいが、若い人たち、特にアイドルの上戸彩チャンには難しかったのではないだろうか。きれいに振り回されてはいるが、とてもあれで人が斬れるとは思えない。うまい人たちは、同じく振り回しても、斬る寸前にタメいうか止まる感じがあって、それから一気に力を入れて引く。しかも斬った後にもちょっとだけ見得を切るような仕草があって、1つの方のようになっている。ボクがいままでうまいなあと感心したのは、杉良太郎だ。この人は抜群に立ち回りがうまい。しかもスピード感が抜群。速い。まあ時代劇というかチャンバラ映画は資質というか積み重ねが必要で、一朝一夕にはできないということだろう。

 かつて鞍馬天狗で有名なアラカン(嵐寛寿郎)は、数十メートル疾走して少しも裾が乱れなかったという。そういった裾のさばき方から時代劇的な立ち居振る舞いというのは、一日にしてならずなのだ。

 だから逆に、斬られ役の人たちのうまいこと。主人公を画面の中心において動かさず、自分たちが周りを動き回って、いかにも斬られたようにからんで悶絶して、うまく画面から消えていってくれる。斬られ役は大事ってことですね。

 あと、ボクは変なのかもしれないが、主人公よりも友達となる旅芸人の「やえ」演じる岡本綾が印象に残った。無理した男言葉より、自然でキラキラ輝いている感じがして良かった。

 そして意外だったのが、加藤清正の右腕、井上勘兵衛を演じた北村一輝がいい。は虫類のようないやらしさの感じが素晴らしい。ヤクザものがおおい印象があって、「弱虫 チンピラ」は映画自体が酷いこともあって、北村一輝の印象が悪かったのかが、これで一気に解消。ボクの中では演技派になってしまった。うまい。

 公開初日の初回、銀座の劇場は舞台あいさつがあるというのでパスして、新宿の劇場に行ったら60分前で4人。みんな銀座に行ってしまったか。ほとんど20代の男性という感じ。45分前になって、やや増えて10人。

 30分前に開場した時点でおよそ30人。20代の女性3〜4人。40代以上のオヤジ3人くらい。あとは高校生から20代。30代前半が少し。やっぱのアイドル映画ということか。

 15分前、中高年のオヤジがやや増え、指定席なしの586席に3.5割くらい。最終的には5割が埋まった。感覚的には、上戸彩チャンのファン、原作漫画のファン、時代劇ファン、一般映画ファンというところか。

 ややピンあまだったのが残念。


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