日本語字幕:手書き書体タテ、小野耕二・伊原奈津子(すみませんうろ覚えです)/ビスタ・サイズ(1.66)/ドルビーデジタル
中国の小さな山村の警察官マー(チアン・ウェン)は、ある朝目覚めるとホルスターに収まっているべき五四式拳銃が無くなっていた。3発の実弾も一緒。さっそく昨夜の記憶をたどろうとするが、さっぱり思い出せない。息子のトンから妹の結婚式に出たことを知らされ、出席者のところを回ることにする。 |
アメリカ版はなんと120分、2時間。なのに日本版は1時間29分。しかも2001年の作品なのに、アメリカも日本も2003年に劇場公開。どうなってんの? だいたい予告編から予想したとおりの、いわば期待を裏切らない映画。その意味では意外だったのが、ちゃんと犯人探しのミステリー仕立てになっていること。ボクはてっきり人情もので落とすのだと思っていた。 とにかく主人公のチアン・ウェンがいい味を出している。この人はチャン・イーモー監督の「紅いコーリャン(紅高梁・1987・中)」の主演で注目され、なんといってもあの大傑作「太陽の少年(陽光燦爛的日子・1994・中香)」を監督して大ブレイク。そのつながりで、憧れの美少女をを演じたニン・チンが本作でもゲスト出演している。そしてマイクロ・シアター公開だったが、「鬼が来た!(鬼子來了・1999・中)」の監督・脚本・主演でも注目された。とにかく才能豊かな人なのだ。その才人の、なんともうだつの上がらない感じが良い。 「太陽の少年」が、眩しいほど輝いていた少年時代を感傷的に切り取っていたように、本作でもあまりストーリー展開上は必要ないのだが、幻想的で美しい中国のシーンを感傷的にとらえている。夕ぐれ、ほんのり暮れかかり青さを増していく空に、屋根の向こうから突然橙色の円筒形の提灯のようなものが一斉に浮いてくるシーン。まるで「千と千尋の神隠し(2001・日)」の世界のようで、幻想的。何かの風習なのだろうが、説明はされない。しかし、何か感動する美しさ。他にも田舎にしかない田園風景など美しい風景が切り取られている。 まあ話の構成としては、黒澤明監督の「野良犬(1949・日)」と言えなくもない。しかし、ただ犯人をひたすら追っていくのではなく、謎解きになっているところがミソ。でも、どっちが面白いかと聞かれれば「野良犬」と答えざるを得ないが。 暗闇で、光を浴びて逆光で拳銃を持って仁王立ちになっている姿というのは、「ダーティハリー5(The Dead Pool・1988・米)」からのいただきか。 残念なのは、おそらくシチュエーション・コメディ的に撮ろうとしたんだと思うけれど、随所に見られる感傷的なシーンがあだになって、あまり笑えない。たぶん得意ではない、というか向いていないのだろう。こういうのは三谷幸喜がうまい。 盗まれた銃は、警官の官給品拳銃、たぶん五四式(ソ連のトカレフのライセンス生産品)だろう。実弾は3発。3人が殺されるどころではなく、腕が良ければ1発で3人殺すヤツもいるだろうという話になる。確かにそういうことはあるだろう。最大で9人の村人が殺されるかもしれない。でも一般人は銃の使い方を知らないと、劇中で入っている(基本的には徴兵制)。 ただ結末的に、資本主義的なものが悪役という短絡的な発想はどうなんだろう。監督的には、というか脚本も兼ねたルー・チューアン的には、最近の中国の急速な市場経済導入が気に入らないということかもしれない。 公開2日目の初回、また当日1,000円。35分前に着いたら。17〜18人の人。25分前に開場した。男女はほぼ半々で、8割以上が高年齢。アート系映画が好きな若者が残り。 最終的には224席の7割ほどが埋まった。1,000円が効いているのか朝から混んでいる。 |