日本語字幕:手書き書体下、岡田壮平/ビスタ・サイズ(Panavision、ARRI)/ドルビーデジタル
1943年イギリス、ロンドンの北、ブレッチレー・パークの暗号解読センターにケンブリッジの数学者トム・ジェリコ(ダグレイ・スコット)が再び呼び戻されてやってきた。ドイツ軍が突然、暗号機「エニグマ」のコード“シャーク”を変更したため通信が解読できなくなったのだ。解読チームが解読に当たる一方、イギリス諜報部のウィグラム(ジェレミー・ノーザム)は情報が暗号解読センターの内部からドイツへ流れたとみて捜査を開始する。 |
ベストセラー、ロバート・ハリス原作「暗号機エニグマへの挑戦」を映画化。でもなぜか2001年というやや古い作品。面白いのに、なぜいままで公開されなかったのだろう。配役だって派手さはないが悪くないし、製作がローリングストーンズのミック・ジャガーで、監督がおもしろいスパイもの「ゴーリキー・パーク(Gorky Park ・1983・米)」や、ゴリラ映画「愛は霧のかなたに(Gorillas in the Mist/The Adventurw of Dian Fossey ・1988・米)」や、ハラハラドキドキのサスペンス「ブリンク瞳が忘れない(Blink・1994・米)」、ヒュー・グラントの医療サスペンス「ボディ・バンク(Extreme Measures ・1996・米)」、007映画「ワールド・イズ・ノット・イナフ(The World is Not Enough・1999・英米)」と傑作がぞろぞろある名匠マイケル・アプテッドだってのに。 暗号機エニグマ という機械もたっぷり描かれ、そういう機械好きにはたまらないシーン満載。スクランブラーの組み合わせや、セッティング、プラグボードの接続法まで見せてくれる。タイプライターのようなキーをゆっくり押すと、上面の文字が光る。こんなになっていたんだ。 しかも、スクランブラーの設定をすべて自動的にチェックし鍵を見つけ出す機械(現在のコンピューターにつながるもの)ボンブまで、動いているところを見せてくれる。これだけでも見る価値がある。すばらしい。 サイモン・シン著の「暗号解読」によれば、実際にこのボンブを開発した中心人物はアラン・チューリングという人だが、本作ではジェリコという人物になっている。 イギリス諜報員を演じたジェレミー・ノーザムは「カンパニー・マン」で、スパイに仕立て上げられる主人公を演じた人。端整な顔立ちは、いかにもイギリス人といった感じだが、どこか若き日のケーリー・グラント(イギリス生まれ!!)を思わせる。今後の出演作品によってはブレイクするかも。 本作では、史実と架空の物語を巧妙に組み合わせ、暗号解読のパズル的な面白さに恋愛の要素を盛り込み、スパイ映画の要素も取り込んで一級品のサスペンス。謎解きや暗号を盗み出すあたりでハラハラドキドキ。軍用車輌としてはケッテンクラートなんかも出ていて、グッド。 暗号解読は国家の最重要事項だったため、彼らの活躍は1990年になるまで明かされなかったという。武器を持たずに戦っていた人たちもいたのだ。それまでに亡くなった人も多かった。何という過酷な扱いであったことか。興味を持たれた方はぜひ「暗号解読」を読んでいただきたい。暗号の歴史から、種類、代表的な暗号とその仕組みまで解説されている。分厚い本だが、絶対にお買い得。 公開初日の初回、銀座の劇場には30分前に着いたら12〜13人の待ち列。ほとんどが中年以上で、女性は1人。25分前に開場した時点で16〜17人。中学生くらいの少年も2人くらい来たが、やっぱりほとんど中年。最終的には360席の3割ほどが埋まった。もっと人が入っても良い映画だと思うけれど、第二次世界大戦ものというネタが今の人にはピンとこないのかも。 |