2003年5月24日(土)「神に選ばれし無敵の男」

INVINCIBLE・2001・米/英/独/アイルランド・2時10分

日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/ビスタ・サイズ(日本での上映比率。IMDbではマスクのシネスコ・サイズ)/ドルビーデジタル

(米PG-13指定)

http://www.tfc-movie.net/invincible/
(全国劇場案内もあり)
1932年ポーランド。サーカスの力自慢の男に挑戦して、みごと勝った田舎町の鍛冶屋の長男、ジシェ(ヨウコ・アホラ)は、スカウトの目にとまってナチスが台頭しつつあったベルリンでオカルトの館での仕事を紹介してもらう。座長の千里眼を自称するデンマーク貴族出身のハヌッセン(ティム・ロス)は、ジシェを北欧出身のヘルダー・クリスチャンセンとして売り出すことに決める。

67点

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 タイトルにだまされた。何なんだろう、この映画は。お金はいいから、時間を返してほしい。見どころは、ティム・ロビンスとほんのちょい役のウド・キアー以外ない。主人公の超人ハルクのような男、ヨウコ・アホラは、体つきはいいが芝居が下手で、とても感情移入できない。なんでもフィンランド生まれで、本当に1997年と1999年、世界最強の男に選ばれているらしいが、「世界最強の男」って何? いままで映画などへの出演経験無し。

 物語も、いくら真実に基づいているとはいえ、平板で退屈。それに長すぎる。特に死体が見つかった後が長い。こんなに後の話はいらないだろう。これが本当にヴェルナー・ヘルツォーク監督の作品なのか疑問に感じるほど。ボクは「アギーレ・神の怒り」と「ノスフェラトゥ」しか見ていないが、どれも凄く感情を動かされるものだったし、パッションに満ちていた。それが、なぜ……。

 せっかくポーランドが出てきながら、その美しい風景は少しも収められていない。どこにでもありそうな田舎の荒涼とした景色があるだけ。しかもさびれた感じがして、どこも悲しさに満ちている。1932年という年は確かにそんな年だったのだろう。でも、映画としてどうなんだろう。

 お色気もほとんどなし。たぶん全員の台詞がアフレコで、それに現実感がないため、口はあっているのだが、ちっとも載っていない。流れていかないのだ。まるでコピペで貼ったみたい。だから感情移入できない。

 感情移入できなくて長く、単調な映画ほど見ていて辛いものはない。じゃあ、途中で出てしまえばいいようなものだが、どこかで事件が起きたり、どんでん返しがあるのではないかと思って、出ることもままならない。まさかこのまま終わるはずはないと思うから。しかし、このまま終わってしまうのが、この映画なのだ。主人公の意外な結末だけをのぞいて。でもこれもラストだけ見ればわかることで、どうということもないが。

 とにかくティム・ロスはいい。ちょっとだけだがウド・キアーもいい。

 結局、主人公のしたことは、田舎の人の純朴さで、都会人の仕事をぶちこわし、多くの人を失業させ、結果的に人を殺し、ドイツ人とユダヤ人の反目を深めただけともとれる。これはいったい何なのか。もし、ティム・ロビンスがオームのように、そのトリック技術を使って宗教で教祖として人心を惑わし、人々から金品を巻き上げていたというのならそれもいいだろう。しかし、エンターテインメントの世界で、手品にネタがあってなぜいけないのか。これがいけないとしたら、世界中のマジシャンや映画、あらゆるエンターテインメントは悪魔の技であり、あってはならないことになってしまう。なんという独善。これでは批判しようとしているヒトラーと変わらないではないか。

 公開初日の初回、銀座の劇場には35分前で20人ほどの行列が。男女比はほぼ半々で、ほとんどが中高年以上。やはりヘルツォークという監督の名前からだろうか。30代以下の若い人は1/5いただろうか。

 35分前に開場し、中へ。初日プレゼントで新しい豆乳のようなドリンク「スゴイダイズ」の紙パックが。しかし、これがまずくはないんだけど、ちっともおいしくないんだな。チェッ。それで別の抽選によるプレゼントもあって、入場券の裏に押された番号で、ボクはポスターが当たった。うーん、でもなあ。

 指定席なしの150席に6.5割ほどの入り。この映画でこれは多いくらいだろう。終わったらすぐ出て行く人の多かったこと。みなさん腹が立っていたのではないだろうか。

 非常口のランプが上映中もずっと煌々と照っていて、すごくじゃま。下の方の席に座った方が良かったかもしれない。



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