2003年5月31日(土)「ダブル・ビジョン」

雙瞳・2002・香/台・1時53分

日本語字幕:手書き書体下、佐藤恵子・水野衛子/シネスコ・サイズ(in Panavision)/ドルビーデジタル・SDDS/フジフイルム

(米R指定)

http://www.spe.co.jp/movie/worldcinema/doublevision/index.html

台湾で不可思議な連続殺人事件が発生した。真夏の社内での凍死、火のない室内での焼死……。殺人課のリー警部(レオン・ダイ)が捜査に乗り出すが、手がかりがつかめない。やがて次の殺人、アメリカ人のロレンツォ牧師が腸を抜かれて死んだ。これをきっかけに台湾警察当局はFBIの猟奇殺人のプロファイリングの専門家、ケビン・リクター捜査官を招聘。そして通訳のために国際捜査課の刑事ホアン(レオン・カーファイ)をつけることにする。やがで現場から不審なBB弾が発見されるが……。

72点

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 道教で、人間と魔物の中間である半人間(犯罪者)を見分ける目を持つという「雙瞳」伝説。「氷地獄」「火炎地獄」「腸抜き地獄」「心臓抜き地獄」「舌抜き地獄」という5つの地獄を経た後に不死となることができるという記述通りに進められる連続猟奇殺人。すごいおどろおどろしい話となるはずが、なにか淡々としている。

 主人公のホアンには辛い過去があり、自分を罰するために家庭を顧みず仕事に打ち込むあまり、離婚の危機にある。そして、子供もその過去のために傷害を負っている。この複雑な設定が荒唐無稽とも思える物語に厚みを加えているわけだが、あまりにそこをふくらませすぎたために、物語が流れて行かなくなったのだろう。そこでそれを強引に引っ張っていくものだから、映画は単調というか一本調子となってしまい、せっかくの人間くさいドラマ部分が足を引っ張ってしまっているのだ。物語にメリハリを与えるはずのドラマが、メリハリを奪ってしまった格好だ。

 おそらく「セブン(Seven・1995・米)」にインスピレーションを得ているのだろう。随所に似た雰囲気の設定を見ることができる。同様に、刑事物としてみるか、ホラーものとして見るかで評価は変わってくるかもしれない。

 驚くべきは新興宗教のような怪しげな一団が、中国で発見されたという古い寺院を、そっくりそのまま台湾へ持ってきて、自社ビルの1フロアに再現しているという絵。CGではなく、本当に作られている。もちろんセットだろうが良くできているし、絵としてインパクトがある。そして、いかにも怪しげな宗教団体ならやりそうなことだ。

 そして、香港映画らしく、アクション・シーンは想像を超えるほどエスカレートする。警察対宗教団体の闘いは、蛮刀なども使われて酸鼻を極める。宗教がらみだから彼らに怖いものはない。平気で殉教者になる気でいるのだ。この大人数による戦いがスゴイ。怖い。CGの技術も素晴らしいし、瞳が二つある眼球がくるりと回転するところは、鳥肌が立つほど不気味だ。

 もちろん「愛人/ラマン」や「炎の大捜査線」「月夜の願い」のレオン・カーファイはいいし、ハリウッドから招いたデビッド・モース(「交渉人」のSWAT隊長や「プルーフ・オプ・ライフ」でテロリストに捕らえられる夫を演じた)がいい味を出している。

 ただ、最後はちょっと余計だったかも。ハリウッドのパターンを踏襲しすぎ。一度倒れても、また立ち上がってくるというのは、もう観客みんな慣れっこになっている。あまり使いすぎると、逆にうざったいだけ。

 公開8日目の初回、新宿の劇場は、台風の影響の雨で45分前でたった4人。ほぼお昼近い時間からにもかかわらず、劇場の入り口は電気が消えてシャッターも降りている。なんてノンビリしているんだろ。3人は中年以上の男性で、オバサンが1人。

 25分前やっと入口のシャッターが開いて、その時点で7〜8人。若いカップルが1組。20分前にようやく開場し、徐々に若い人も増えだした。

 最終的には、指定席無しの細長い209席に40〜50人の入り。あまり広告していない映画はこんなものなのか。男女比は6対4で男性が多く、老若比も6対4で中年以上が多かった。


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